日本人はビッグマック410円の貧しさを知らない
iPhoneや外国オーケストラ公演が、日本人には高嶺の花になってしまいました。
これまでも日本は円安によって貧しくなっていたのですが、今年3月からの急激な円安で、それがはっきりとわかるようになったのです。
目次
iPhoneはもはや高嶺の花
アップルは9月7日、新機種iPhone14シリーズを発表しました。
日本での価格は、最も安いタイプで11万9800円。 Pro Maxは約20万円。
昨年9月にリリースされたiPhone13シリーズでは、最も安いタイプが9万9800円だったので、20%の値上げになります。
9月1日、円が急落して、1ドル=140円台となったことの影響です。
これに先立つ7月1日、アップルは、日本での販売価格を引き上げていました。
iPhone13を11万7800円から1万9000円値上げ。
iPhone13 Proは14万4800円から2万2000円引き上げました。
これも円安の影響です。
一方、厚生労働省が発表した令和2年「賃金構造基本統計調査」によると、大学新卒者の賃金は、男女計で22.6万円。
上で述べた価格のiPhone13を、なんとか買うことはできます。
しかし、Pro Maxを買ってしまえば、食費も残りません。
iPhoneは、普通の日本人にとっては、もはや高嶺の花となっているのです。
高嶺の花となったものは、他にもあります。
日本経済新聞(2022年9月12日)は、オーケストラの来日コストが上昇していると報じたのです。
大編成のオーケストラの場合、100人以上の人と楽器が移動します。
航空運賃などが高騰しているため、経費が1億円以上増えているというのです。
このため、あるコンサートでは、入場料を、当初1万2000~2万8000円と発表していましたが、チケット発売日の直前に、1万5000~3万2000円に値上げしました。
記事は、「一流オケの来日ツアーが、今後、激減するのではないか」としています。
日本人の文化環境は著しく低下するのは間違いないでしょう。
これまでも、外国のオーケストラやバレエの日本公演のチケット代は高額でした。
ただ、「贅沢」とは思っても、チケットの価格よりは、座席を取れるかどうか、どの位置に取れるかのほうが重要事項だったのです。
しかし、1人3万円以上となれば、考え込んでしまいます。
新型コロナの感染で、外国オーケストラやバレエの公演からは、この数年、足が遠のいていました。
コロナが終わればもとのように行けると思っていたのですが、そうしたことはもうできないでしょう。
そう考えると、なんとも情けない気持ちになります。
私たちの世代の学生時代は、外国のオーケストラやバレエを実際に見たり、聞いたりするなど、夢のまた夢でした。
いま、再びその時代に舞い戻ってしまったのです。
円の購買力が固定為替時代の水準に戻ってしまったから当然のことなのですが、それにしても、なんと憎っくき円安でしょうか。
アメリカのビッグマックの値段は、日本の2倍
イギリスの『エコノミスト』が「ビッグマック指数」を発表しています。
これは、「ビッグマック価格がアメリカと等しくなる為替レート」に比べて、現実の為替レートがどれだけ安くなっているかを示すものです(数字が低いほど、購買力が低い)。
しかし、これはわかりにくい概念です。
この指数よりも、「ある国のビッグマック価格を日本円に直すといくらか」を見るほうが、直感的にわかりやすいのです。
2022年7月時点での各国のビッグマックの価格を日本円に換算してみると、図表1のようになる(換算レートは、9月末の市場為替レート)。9月30日に改定されたばかりの日本のビッグマックは410円で計算しました(7月末時点では390円だった)。
(外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)
日本では410円ですが、1位のスイスは949円であり、「法外な値段だ」と感じます。
アメリカは669.3円で、日本の1.6倍になります。
イギリスやドイツも、日本より大分高くなっています。
中国が483円で、日本より2割弱高いです。
2021年6月には日本より安かったのですが、ついに中国のほうが日本より高くなってしまいました。
韓国の463円も、日本より高いと感じます。
世界の中でも安い日本のビッグマック価格
日本人が気付かぬ「貧しさ」
要は日本人の購買力が落ち込んでいて,410円でも「高い」と感じてしまうという
企業は給与を上げもせず,政府は所得税減税など考えもせず
それなのに「さあカネを使って経済を回せ」などと空疎な掛け声ばかりが喧しいという
末期状態— 大沢愛 (@ai_oosawa) October 2, 2022
窓を開けないと、世界の状況がわからない
以上で述べたのは、これまでも静かに進行していた現象です。
2022年の円安で改めて気づきました。
この状況は、下降するエレベーターに乗っているようなものです。
自分のいる高さは、本当は下がっているのですが、エレベーターに同乗している人たちとの相対的な位置関係は変わりません。
だから、下がっているのがわからないのです。
エレベーターには窓がないから、こうしたことになります。
自分の位置を正しく知るには、エレベーターの「窓を開ける」必要があります。
日本にはいま、外の世界が見える窓を開けることが必要なのです。
ビッグマック指数で日本の購買力が低くなったことは、多くの人が知っていました。
しかし、これまでは、それが私たちの生活に直接影響する問題だとは考えていなかったのです。
なぜなら、ビッグマックは、アメリカと同じものを日本で作れるからです。
日本の安い労働力を使って、価格が安い(しかし同じ品質の)ビッグマックを作れるのです。
だから、わざわざアメリカまで(あるいは他の国まで)高いビッグマックを買いにいく必要はありません。
日本で安いビッグマックを買えばよいだけのことで、さして大きな問題だとは感じていなかったのです。
しかし、iPhoneでは事情が違います。
残念ながら、日本企業ではiPhoneと同じ品質のスマートフォンを作ることができません。
だから、アメリカで高い労働力を使って作ったiPhoneを買わざるをえないのです。
日本の賃金が低いことは、iPhoneの価格を引き下げるのに、何も寄与しません(正確にいうと、アメリカの高い労働力を使っているのは、iPhoneの設計に関してである。製造は中国の工場で行っている)。
こうした問題は、以前から存在していたものです。
このところの急激な円安のために、多くの人が気づくような形でそれが表れたのです。
結局のところ、「安い日本」が問題なのでなく、「賃金が安い日本」が問題なのです。
日本で賃金があがらないこと、円安が続くこと、それらが問題です。
私が子どものころは日本の物価が高くて庶民に物が買えないことが日本の貧しさの証明のように言われていたけれども、最近は日本の物価の安さが貧しさの証明のようになっているようなので、なるほど長生きはしてみるものだなと??
— Okapia Johnstoni Reads (@okapiajohnston2) October 2, 2022
このまま続けば、どうなる?
実は、「安い賃金で作れるから大丈夫」と言ったビッグマックも、いつまでも日本の価格が安いままに留まっているとはかぎりません。
なぜなら、ビッグマックを作るためには、牛肉や小麦粉など、輸入に頼らざるをえない原料が必要だからです。
それらの価格は、いま高騰しています。
だから、価格高騰が続けば、いくら日本の賃金が安いからといって、ビッグマックの価格を維持し続けるのは難しくなるでしょう。
日本マクドナルドは、ちょうど9月30日からビッグマックの価格を従来の390円から410円に引き上げました。
輸入価格高騰の半分程度はウクライナ問題などの海外要因によるのですが、半分程度は円安によります。
ウクライナ問題がおさまっても、構造的な円安が続けば、日本は貧しさのスパイラルから脱却することはできません。
このままの事態が続けば、日本人には高くて手が届かないものが続出するでしょう。
「舶来品」という言葉は、長らく死語となっていましたが、それがよみがえるかもしれません。
そして、20年後の日本は、信じられないほど貧しい国になってしまいかねないのです。
日本に来ても賃金は安いので、外国の有能な人材は日本に来なくなります。
日本の有能な人材は外国に流出するでしょう。
要介護人口は増えるが、介護してくれる人は外国にいってしまうのです。
うした事態を、どうすれば食い止めることができるのでしょうか。
コロナももう日本だけ騒いでて、世界から置いてけぼりにされている。その代償が今後じわじわ返ってくるのが恐ろしいね。
でも、日本人自身がそれを望んでるんだから仕方ないか。
海外は海外と言って、先進国に住む人間の思考とは思えないのだが、これが今の日本。ビッグマック410円の貧しさ
— とみろみけ (@mayoneze879866) October 2, 2022
ネットの声
「国民が政府を甘やかし続ける事の背景には利権やら宗教団体との癒着やら様々要因があるのだろう。しかし、緊急対応としての措置がそのまま安易に継続される事は、言って見れば体調悪化した高齢者が点滴を受けてそのままずっと点滴に繋がれ続けているようなものだ。
財政ファイナンス長期化のツケとして金融政策が縛られ、それが見透かされている結果円安に歯止めがかからない。その結果としての輸入物価高騰を緩和するための補助金を更なる財政ファイナンスの拡大に頼る。これではいずれ通貨の信認に疑義を生ぜしめざるを得ない。」「単純な話で賃金カーブを上向きにし、年率数4%の人件費増を成し遂げれば20年で給与は2.1倍となる。そのためには企業が内部留保を吐き出し、消費税を完全廃止し市場サイクルを回し続けることが経済増大につなげ、製品価格も原材料だけじゃなく上昇させ企業収益を確保すれば流れを作り出すのが良い。また新規産業に対するいまより二桁大きい金額の支援。そしてそのための企業の選別。
またスパイ防止法、外国内通罪などの整備も併せて行うこと。
外国人の公務員雇用を含め採用時の国家忠誠の宣言と義理と義務と代償についてはっきりさせた方が良い。」「側から見ると、日本の円安もまぁ確かに問題ではあるが、それよりアメリカやEUのインフレの方が異常だと思うけどね。金が溢れすぎてて通貨の価値が下がり続けているし、ドルですらその価値がなくなっていることを示すわけだから。
そこで日本はどう動くべきか、安い労働力と革新的な技術革新で着実に世界に商品を輸出し続ければいい。もちろん原材料高騰の問題もあるが、そこを差し引いても今の世界の情勢では日本産が格安で買えるくらいだろう。
そして食料なども輸入を止め、国産優遇にシフトすればそんなに少量価格も気にする必要はなくなるし、食料自給率の向上にもなるので有事が起こった時のメリットにもなる。」