これは知りたい!ボクシングのWBA・WBC・IBF・WBOの違いは??

【ボクシング】WBA・WBC・IBF・WBOの違いとは?それぞれの団体を比較

現在のボクシング界には4つの主要世界団体が存在する。6月9日、約2年半ぶりに激突する井上尚弥とノニト・ドネア(フィリピン)の試合は、3団体のバンタム級世界王座統一戦になります。

井上はWBAスーパーおよびIBF、ドネアはWBCの王者です。

そして、4つ目の団体WBOのベルトはジョンリール・カシメロ(フィリピン)が保持していたのですが、3度にわたる王座戦中止トラブルにより剥奪され、暫定王者だったポール・バトラー(英国)が正規王者に昇格しています。

ここではその4つの主要団体の違いをご紹介します。

WBA・WBC・IBF・WBOの各団体について

ボクシング団体は王座認定管理組織であり、各団体は独自のランキングを設定し、それにならって認定タイトル戦やランキングマッチを認可します。

いつまでに防衛戦を行なうなどのルールをチャンピオンに課すほか、場合によっては挑戦者を指名し、強制的にタイトル戦を命じることもあります。

選手は団体に所属するわけではありませんが、ドーピングなど不祥事を起こした場合は、団体がしかるべき処置をくだすことになります。

ベルトに絡まずともランキングから排除という形もあるのです。

団体へのタイトルマッチ申請や対戦相手とのファイトマネーの(分配)交渉、テレビ局や動画配信サービスへの放映権販売などは、選手が契約するプロモーター(トップランク社やマッチルーム社など)が担当します。

練習面は契約するジムやトレーナーが担います。

日本では所属ジムがプロモーターを兼ねるケースもありますが、王座認定管理はあくまでJBC(日本ボクシング連盟)が行なっています。

現在、ボクシング界には4つの主要世界王座認定団体があり、WBA・WBC・IBF・WBOです。

最も歴史が古い団体がWBA(世界ボクシング協会)であり、前身の団体は1921年設立されました。

1963年にWBC(世界ボクシング評議会)、1983年にIBF(国際ボクシング連盟)、1988年にWBO(世界ボクシング機構)が設立されています。

WBAを含む世界の各地域のボクシング統括団体との横のつながりを取り持つ組織(評議会)としてWBCが設立されましたが、WBAが組織として肥大化する一方、WBCも独自の団体としてランキングを持つようになり、さらにWBAから分裂するような形でIBFやWBOが発足されていったのです。

IBFとWBOは、WBAやWBCのしがらみから外れて自由にタイトル戦を組み、大金を生み出したいプロモーター主導で誕生した経緯もあり、以降、さらなるマイナー世界団体も生まれました。

結果として、世界タイトル乱立の呼び水にもなったのです。

WBA・WBC・WBO・IBFの各団体の違いとは?

WBA(World Boxing Association:世界ボクシング協会)
WBAは、1921年に米国で設立されたNBA(ナショナル・ボクシング協会)が母体となった団体ですが、現在はパナマを本拠地におきます。

日本人ファイターも多くチャンピオンになっており、輪島功一や具志堅用高、竹原慎二、亀田興毅、亀田大毅らが知られています。

2022年6月2日現在、井上尚弥がバンタム級、京口紘人がライトフライ級王者に就いています。

また正規王者として優れた戦績を残したファイターは「スーパー王者」として認定される制度もあり、近年では村田諒太、井上尚弥が認められました。

チャンピオンベルトの色は黒。

1ラウンドで3度のダウンがあった場合にKOが成立する「スリーノックダウン制」を採用しています。

WBC(World Boxing Council:世界ボクシング評議会)
WBCは、WBA内の機構として1963年に設立。

その後、1966年に完全分裂します。

初代会長ルイス・ボスタがメキシコ人だったこともあり、本拠地は同国メキシコシティにあり、現会長もメキシコ人のマウリシオ・スライマンが務めています。

加盟国は、主要4団体で最多の160か国を超えており、その意味ではWBAよりも権威が高いとされています。

日本人では、ガッツ石松や辰吉丈一郎、内藤大助、山中慎介らが世界王者になっています。

2022年6月2日現在は、寺地拳四朗がライトフライ級王者です。

チャンピオンベルトの色は緑。

続行不能と判断されない限り試合が継続される「フリーノックダウン制」を採用しています。

4団体では唯一試合中のスコア公開(4回と8回後)があります。

IBF(International Boxing Federation:国際ボクシング連盟)
IBFは、1983年に設立された団体。

当時、中南米主体となっていたWBA、WBCの政治的権力図を変えたかった北米の一派が発足させた経緯があります。

日本(JBC)はタイトル乱立を望まない意向と、「1国1コミッション」の規定を遵守し、長らく加盟していなかったのですが、2009年から段階的に認め、2013年に正式加盟しました。

日本人では、2022年6月2日現在、井上尚弥がバンタム級、尾川堅一がスーパーフェザー(ジュニアライト)級のベルトを持っています。

過去には亀田大毅や田口良一らが世界ベルトを巻いていました。

チャンピオンベルトの色は赤。

ルールは「フリーノックダウン制」を採用しています。

WBO(World Boxing Organization:世界ボクシング機構)

WBOは、1988年に設立された、主要団体ではもっとも新しい団体です。

WBA会長選挙の結果に不服だったカリブ諸国と米国のプロモーター勢力が発足させたものです。

IBF同様、日本では未公認団体の扱いが続いていましたが、2013年に正式加入となりました。

日本人では2022年6月2日現在、4階級制覇王者の井岡一翔がスーパーフライ(バンタムフライ)級、中谷潤人がフライ級、谷口正隆がミニマム(ミニフライ)級を保持しています。

過去には亀田家の三男・和毅や井上尚弥らが王者になったことがあります。

チャンピオンベルトの色は赤茶。ルールは「フリーノックダウン制」を採用しています。

かつては団体ごとに組織幹部の面々によるローカル性があり、タイトル戦開催地や挑戦者選出に特定の国や地域で偏ることがあったのですが、近年では複数団体のランキングに名を連ねる選手も多く、4団体に大きな差はありません。

複数団体タイトルによる統一戦

ボクシングでは「統一戦」という文字を見ることも多いのですが、これは文字通り、複数の団体のベルトを同時に懸けて争う試合です。

6月9日の井上尚弥vsノニト・ドネア戦では、井上のWBAスーパー&IBFと、ドネアのWBCの3つのバンタム級タイトルを争います。

勝者が総取りし、「統一」するものです。

主要4団体の王座を勝ち取って統一した場合は、海外では「Undisupted Champion」(絶対王者、議論の余地のない王者)という異名で呼ばれることになります。

2022年6月2日現在、男子の”絶対王者”は、スーパーミドル級の”カネロ”ことサウル・アルバレス、ライトミドル級のジャーマル・チャーロのみとなっています。

WBC世界ヘビー級王者のタイソン・フューリーは、4月24日のディリアン・ホワイト相手にタイトル防衛を果たして引退を宣言しましたが、かねてから4団体統一を目標としており、WBAスーパー・IBF・WBO王者オレクサンドル・ウシクとアンソニー・ジョシュアの再戦の行方次第で鮮烈復帰する可能性が高くなっています。

井上vsドネア戦の勝者は、4団体統一を狙うことになるでしょう。

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