「政府がポンコツなら俺たちで」

新型コロナウイルスの感染者が確認されて以来、この「神の街」を仕切るギャングのリーダーらは、住民たちにこう呼びかけている。

「8時半以降、夜は家から出るな」
「門限時間をすぎてから、もし街でみつけたら容赦しない」

スラム街で感染者が…

シティ・オブ・ゴッドで最初に感染者が報告されたのは、3月21~22日の週末。

しかし、政府が感染対策を「何もしない」ため、地元のギャングが対策に介入することとなったのです。

「ブラジル版トランプ」とも言われる、ブラジルのジャイール・ボルソナロ大統領。

当初から

「対応が遅れている」
「経済停滞を懸念し、感染対策の強化に後ろ向きの姿勢を示している」

と、各紙が報じてきました。

何もしない政府を見兼ねた各自治体が、商業施設閉鎖などの予防措置を先行。

しかし、大統領はこれを「犯罪だ」と発言、国民から非難の声が上がっています。

リオの新聞「エクストラ」によると、ギャングたちはリオ市内のファベーラを徘徊、上述のような内容のメッセージを録音し、拡声器で流しているとのことです。

「門限を課しているのは、誰も感染対策を本気でやろうとしていないからだ。いいか、家で静かに過ごすのが一番だ」

シティ・オブ・ゴッドは、大都市リオ市内に約1000ヵ所もあるファベーラの一つにすぎず、ファベーラ全体の人口はリオの総人口のおよそ20~25%。

約150万人もが生活していると言われています。

実際、新型コロナがニュースになる以前からずっと、ファベーラは政府から救済されずにきました。

中には、麻薬組織の一掃などで治安を回復させたところもありますが、多くは公共政策が間に合っていないのです。

ブラジルのメディア「ヘジ・グローボ」によると、リオ市内のファベーラでは23日の時点ですで61人が感染の疑いがあるとのことでした。

しかし、のちの報道では300人以上と報じられています。

サンパウロ市の貧困街パライソポリスでは、コミュニティのリーダーが、サッカー場に住民を集め、寄付された石鹸やサニタイザー、食料など配布。

リーダーは、英紙「フィナンシャル・タイムズ」にこう語っています。

「この地域は行政から見捨てられている。大統領は、ファベーラ(スラム街)について語りすらしません」
「コミュニティ内でなんとかしないと、多くの人が死んでしまう」

住宅環境が劣悪で「自主隔離にならない」

マレというファベーラでは、ギャングが店や教会に対し「開店時間を縮小するように」と要請。

教会の中には、礼拝を野外で行うようになったところもあると、英紙「ガーディアン」は報じています。

また、サンタマルタというファベーラでは、ギャングが住民たちへ石鹸を配りました。

また、「外出から地元(ファベーラ)に戻ってくるときは、必ずコミュニティの入り口にある公共の水の供給場所で手を洗うこと」と指導したと、同紙は報じているのです。

なぜなら、ファベーラの住民は、非常に高い人口密度の中で暮らしているからです。

ファベーラの家の多くは、コンクリートのブロックやレンガで壁を作りトタン屋根を付けたもの。

ワンベットルームの小さな家に4~6人が暮らしていることもしばしば…。

もし家族の誰かがウイルスを持ち帰れば、瞬く間に家族内で感染が広がる可能性が高いのです。

つまり、これでは「自主隔離にならない」のです。

また、家一軒ごとの間も、道も狭い状況です。

ファベーラでは、他人と1.8mの距離を保つソーシャル・ディスタンス(註:疾病に感染するリスクを低減する方策)の実践が非常に難しいと、各紙が報じています。

住民のひとりは、住民に限らず「外部者がウイルスを運んで来る可能性もある」と、同紙に語っています。

たとえば「ファベーラによく薬物を買いに来る中毒者とか」。

ギャングのお触れに対しては「正直、機能しないと思う。だって、ここでは蛇口を捻っても水が出ないことも少なくないんだから。長いときは2週間くらい出ない。日々の飲み食いにすら困っている人たちが、衛生面にまで気を配っていられると思う?」

ブラジル国立水道局によると、国内の4000万人が、このように水へのアクセスに不便を感じていて、1億人という実に国の人口の半分が下水処理なしの生活をしているとのことです。

シティ・オブ・ゴッドの27歳の住民は、

「きちんと手を洗えるほどの水が出ないことなんてざら」
「ここでは基本的な衛生環境すら整っていない」

と、米誌「USニューズ&ワールド・レポート」に語っている。

それならば、そういったときこそハンドサニタイザーではないかと思われるのですが、

リオ在住の医師は「薬局では売り切れていますし、仮にあったとしても貧困層には高くて買えません」。と言っています。

新型コロナは「富裕層がヨーロッパ旅行から持って帰ってきた病気」

米紙「ワシントン・ポスト」によると、ブラジルで最初に確認された新型コロナ感染者は富裕層。

ヨーロッパ旅行からの帰国者でした。

しかし、新型コロナの蔓延は富裕層だけに止まらなかったのです。

なぜなら、貧困層には、富裕層の家で掃除や洗濯などをするメイドとして雇われている人が少なくないからです。

同紙によると、新型コロナによるブラジルの最初の死亡者は63歳のメイドの女性。

のちに、彼女の感染経路が、イタリアから帰国した雇い主からだったことがわかっています。

ブラジルで「富裕層が持ってきた病気だ」との声がしばしば挙がるのは、このことが大きいのです。

「新型コロナを運んできたのはヨーロッパでの休暇から帰国した富裕層。だが、感染で命を落とすなどの、より深刻な問題を背負うのは貧困層だ」

と、ブラジルの公衆衛生士パウロ・バスは同紙に対し、絶望的な貧富の差の歪について語っています。

ネットの反応

「昔のヤクザの任侠道に似てるな。こうなると、政府とマフィア!どちらが正しいか?」

「スラムの住民の多くは夜間外出禁止令などの意味を理解できないと思うが、ギャングの脅しに従うと思う。そしてそれは感染拡大抑制につながると思う。ある一定以下の教育しか受けられていないものには新型コロナウイルスの恐ろしさは理解できない可能性がある。そしてそのような人間は日本にも居る。言葉で理解できない輩には強権も必要なのかもしれない。」

「これは一見美談に見えるけど、コロナウィルスが収まった時にこのファベーラ一帯を自分たちの縄張り意識が強まってより凶悪になる可能性を秘めている。危ない兆候に思う」

仮にこれが功を奏してしまうと悪の巣窟になりかねませんね…

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