セルシオの登場に誰もがこれが世界一のクルマだと感じた

こんな静かで快適なクルマ……存在するのか!

世界が腰を抜かした「初代セルシオ」があまりにも凄いクルマだった

日本の高級車を世界に知らしめた初のクルマといえば、トヨタ・セルシオだろう。

そのお披露目は、1989年のデトロイト自動車ショー。そこで発表されたのが、トヨタの海外向け高級車ブランドのレクサスが放ったLS400だ。

そしてバブル期の勢いにも押され、同年10月にトヨタからオーナーカーの最上級車種としてセルシオの名前が与えられ、国内デビューを果たしたというわけだ。

時代をリードしたトヨタ渾身の高級サルーン

初代セルシオのスペックを振り返ると、シャシー、エンジンなどすべてが新設計であり、そのサイズは全長4995×全幅1820×全高1400mm。

ホイールベース2815mm。

室内長2010×室内幅1515×室内高1160mm、というもの。

駆動方式はもちろん高級車の証でもあるFRであり、パワーユニットには260馬力、353Nmを発揮するオールアルミ製の1UZ-FE型4リッターV8ハイメカツインカムエンジンが採用された。

なおトランスミッションは、全車で電子制御式2ウェイOD付4速ATを組み合わせる。

グレードはA・B・C仕様があり、B仕様は路面状況によってダンパーの減衰力を可変する電子制御サスペンション「ピエゾTEMS」が、

C仕様には電子制御エアサスペンションをはじめ、Fパッケージでは後席パワーシート、デュアルエアコンなども装備されていた。

セルシオは塗装にも大きなこだわりがあり、トーニングと呼ばれるツートーンカラーを豊富に用意。

塗装内部の結合力などを強め、高い耐久性を備えた新開発の塗料も採用していたのである。

当時の新車価格は455~620万円であった。

セルシオはトヨタのクルマづくりを変えたともいわれる車種であり、

センチュリーとクラウンの間に位置する、オーナーカーとしてはトヨタの最上級サルーンとなる。

ライバルは世界の高級車たるメルセデス・ベンツ Sクラス、BMW 7シリーズなどだが、

そうした仮想ライバルを驚愕させたのが乗り心地と圧巻の静粛性だった。

その完成度の高さは「輸入車オタク」でも感動しかないできばえだったのだ。

北米では同時期に日産のインフィニティQ45もデビューしていたのだが、レクサスLSの人気が圧倒していたと記憶する。

輸入車に見劣りしないどころか凌駕するクオリティ

そんな初代トヨタ・セルシオは、冒頭で述べたように平成元年の1989年10月に国内デビュー。

デジタルメーターに代わる自発光式メーターや、オーディオ再生用のDATデッキなどを日本車として初採用していた。

1992年のマイナーチェンジでは、タイヤ&ホイールを15インチから16インチにアップグレードし、助手席エアバッグやGPSナビゲーションもこのタイミングで加わっている。

この時代の日本は、まさにバブル景気終焉の一歩手前。クラウンをはじめとする国産高級車だけでなく、

輸入セダンからの乗り換えも多く、街にはセルシオが溢れかえっていたといっても過言ではないほどの人気を獲得していた。

高級輸入車を乗り継いできた社長族も、「これなら堂々と乗っていられ、むしろ快適で疲れない」とセルシオに乗り換え、大満足していたようだ。

なかにはレクサス、LS400のエンブレムを付けて、右ハンドルながらレクサスを気取っていたユーザーも少なくなかった。

その走りはこれまでの日本車にない圧巻の高級感、

つまりV8エンジンと前後ダブルウイッシュボーン式サスペンションによる素晴らしすぎるスムースさと、

世界の高級車を驚かせた静かさが特徴だ。

さらに、内外装の日本車屈指の高級感もまた、国内外のセルシオ人気を決定づけたといっていい。

乗るならeRバージョンがベター

初代セルシオはバブル終焉後の1994年まで販売され、2代目へと引き継がれた。

その2代目セルシオについてはここでは言及しないが、初代セルシオはいまでも中古車市場にそれなりの数が流通している。

中古車価格は後期型でも100万円前後からと、特段のプレミア価格になってはいない。

中古車のなかには「eRバージョン」と呼ばれたヨーロッパ仕様のサスペンションと大径タイヤを履くモデルも見受けられ、

標準サスペンションの夢のようにソフトな乗り心地とは違う、欧州風味なやや硬めのサスペンションセッティングが人気のようだ。

エアサスのC仕様はさすがに修理代に覚悟が必要……という情報もあり、

ネオクラシックな「高旧車」として乗るならB仕様、eRバージョンがベターかもしれない。

ネットの声

「静粛性は本当にそれまでの車とは次元が違うものだったと思います。海外では初代LSとして販売されていましたが(当初は国内販売をしない予定でしたが、シーマに対抗するためにセルシオとして販売することになりました)、レクサスというブランドはこの車によって確立されたと言っていいでしょう。それから35年が経ち、レクサスはすっかりSUV屋さんになってLSも存続が危ぶまれている状況ですが、初代が世界に通用する日本の高級車として、日本の自動車史において大きな存在であることに変わりはありません。」

「今から思えば高級車、高品質車と言うより実験車のようだった。
ドアを閉めると、無響室のような異質な静けさに包まれる。
シートがファブリックなら、より静かだっただろう。

国産では味わった事のない強力なスターターを回すとフゥーン!とマルチシリンダー特有の回転感と共に目覚めるが、4リッターもあるのに滑り出しにパンチはなく、スィーッと走り出す。本領発揮は3000rpm以上からで、6000rpmまで淀みなく吹け上がる。圧巻はパーシャルからの追い越し加速で、一気に60kmから120kmまで巨大な手で押し出されるように到達し、静寂の中、そのままリミッターが効くまで加速を続けた。
ステアリングから脚の動きまで、全てがスムーズで、スピードが乗るほど滑空感が出る。50km走っても15kmくらいにしか感じない。あんなクルマは初めてだった。ただあまりに無機質と言えば無機質だった。」

「この車はクランクシャフトからリヤタイヤの中心まで角度が付かないように設計され、さらには各外板パネルの内側に発泡ウレタン充填をするなど徹底した音と振動対策が取られた車です。それを知って運転すると荒っぽい運転をしなくなります。」

おすすめの記事