
中国でテスラ超えの大ヒット! 激安EV「宏光ミニ」をなぜ日本メーカーは作れない?
東京都が2030年までに都内で販売される新車について脱ガソリン車とすることを発表。
政府も2035年までに純ガソリン車の新車販売を禁止する方針を明らかにしています。
現在販売されているEVはまだガソリン車と比較すると高額です。
2020年12月25日にトヨタが発売を開始した2人乗り超小型EVの『C+pod(シーポッド)』でも、法人向け販売価格は165万~171.6万円とけっこうな価格になるのです。
そのような高額なイメージがあるEVだが、お隣中国では日本円で約60万円という低価格EV『宏光ミニEV』が発売され、販売台数でテスラを抜くほどだというのです。
この中国で大人気の『宏光ミニEV』とはどのようなクルマなのでしょうか。
また日本で生み出すことは可能なのでしょうか。
GMのノウハウも生かして開発された新世代の中華EV
新世代の中華電気自動車、通用五菱の『宏光MINI』の売れ行きが絶好調です。
現時点で最も新しい2020年11月における「世界規模での電気自動車販売台数」を見ると、1位はテスラ『モデル3』の3万9335台。
何と2位には『宏光MINI』がラインクイン。
3位のテスラ『モデルY』の1万1481台に大差を付け3万394台も売ったのです。
今も大量のバックオーダーを抱えていると言うことから、作れば作るほど売れる状況にあるようです。
なぜ売れているのか?
安価で品質的にも不満のないレベルだからなのは間違いないでしょう。
宏光MINIが発売された2020年7月以降、中国に渡航出来ないため日本人の自動車メディアは誰も試乗していません。
それでも、自動車メーカー関係者に聞くと「驚異です」。
インテリアの樹脂などの質感イマイチだし、サスペンションもストローク感がないなど実力不足な部分もあります。
しかし、105km/hという最高速を考えたら街中で十分流れに乗って走れるし、ブレーキも普通に効きます。
実用航続距離100km程度の上級グレードを選ぶと(約60万円)エアコンまで付くのです。
日本の軽自動車のような感覚で乗れるそうです。
ちなみに、ボディサイズは全幅が軽自動車と同じ。
全長で40cmほど短くなっています。
狭いながらもリアシートが付くため4人乗れるのも人気の秘密です。
写真を見るとわかるとおり、これまでの安いけれど直感的に「こらダメでしょう!」と思える中華電気自動車と一線を画しています。
というのも「通用五菱」の「通用」はGMの中国語。
GMのノウハウが入っているのです。
品質も向上
iPhoneやDJIのドローン、ジンバルを見ると、中華工場製ながら品質管理を先進国クオリティで行っています。
宏光MINIもギリギリ合格できる先進国基準になっているということなのでしょう。
中国の平均的な人にとって60万円は決して安くない買い物です。
過去の日本で考えるとスバル360やホンダN360のような存在だということです。
もし日本でも60万円で買える軽自動車の代替になるような電気自動車が出てきたら、おそらく相当のニーズがあると思います。
今や人口密度の低い農村部ではガソリンスタンドも急激に減っています。
スタンドまで20分走るような地域さえあるほど。
電気なら日本全国津々浦々あり、今後なくなることは考えられません。
日本のメーカーは低価格EVを作ることができる?
当然ながら日本の自動車メーカーだって考えています。
先日トヨタが『C+pod(シーポッド)』という超小型モビリティを発表しました。
全長2490×全幅1290mmと宏光MINIよりさらに小さく、実用航続距離は100km程度。
最高速60km/hで171万6000円です。
すべてのスペックで宏光MINIに勝てず、決定的に高価。
理由は簡単で、生産台数が少なく電池も高いためです。
宏光MINIはすでに年産40万台規模。
これからさらに増えていくことでしょう。
100万台規模になるかもしれません。
かたやシーポッドと言えば、171万円だと誰も買わないかも。
地方自治体に押しつけ、少なからぬ補助金を出したとしたって年間1万台のラインに乗せることだって難しいでしょう。
その台数では安くなるわけがないのです。
バッテリーだって高価。
シーポッドは日本製のリチイムイオン電池を9kWh分使います。
宏光MINIの電池をみると正極に鉄系(Fe)を使うタイプ。
安くて安全で耐久性が高い反面、今まで性能的に低いと言われてきたものの、最近中華技術で電気自動車に使えるレベルになってきました。
宏光MINIも安価な新世代のリチウムFe電池を使っているのです。
日本では発想の転換が必要かも
日本の自動車メーカーがこの2つのハードルを超えるのは難しいでしょう。
発想を変え、宏光MINIを日本で売ったらどうでしょうか。
日本人が納得するクオリティにするため100万円になったとしても競争力があります。
登録は軽自動車でなく国交省の定める『超小型モビリティ(認定車)』になるのです。
これだと宏光MINIのサイズで問題ありません。
超小型モビリティの上限定格出力は8kW(11馬力)となっていますが、最高出力218馬力の日産『リーフe+』の場合、定格出力表示で116馬力。
宏光MINIは最高出力27馬力のため、少しパワーダウンすることで定格8kW程度になります。
最高速60km適合は、ほかのジャンルと同じく70km/h程度でリミッターを稼働させればいいのです。
もちろん超小型モビリティなら、税金がさらに安価になるためランニングコストは軽自動車より低くなります。
70km/hしか出ないため高速道路こそ走れないものの、そこまでの加速は軽自動車に匹敵すると考えてよいでしょう。
宏光MINIが日本に入ってきたら売れる予感しかありません。
日本政府は、中国から「日本で認可して欲しい」と言われたら断れないかもしれませんね。
ネットの声
「電池を作るにしても買うにしても日本は足元を見られる、宏光ミニが売れているのは「免許が必要ないから」だと思う。中国企業と同等の扱いで同等の材料を同じような値段で調達できるなら宏光ミニのような車も作れるかもしれない。
正し筆者がご自身のブログで、口を酸っぱくして仰っている安全性を担保しなければの話だが。日本の軽自動車だって安全や様々な基準を担保しなくて良いならもっと安く作れる。自動車はその国々の法規に沿った形でないと販売できない、なので法体系や基準が大幅に違う国と比べてもあまり意味は無い。」「日本で軽自動車が100万を軽く超えた価格で販売されているのを考えると、「60万でEV車」ってのは無理でしょう。「宏光ミニ」を製造しているのは中国の「上汽通用五菱汽車」と言う会社です。「五菱宏光」という中国で一番売れているミニバン=世界で一番販売台数が多いミニバンも製造していますが、安全性評価で「5段階中星ゼロ」という惨憺たる結果の車も作っています。宏光ミニも安価に作るため色々な部分のコストを省かれていると思います。安全性を優先に考えるなら60万なんかでは無理ですよね」
「この手の話は、その販売地域のEV補助金制度や安全性基準も一緒に考えないと同列で比べることはできないと思います。たとえば近々北米販売予定の低速EVで、康迪汽車のKandi K27の中国価格は日本円換算100万円。北米での予定価格も同じく1万ドルを発表していますが、これは7500ドルの税額控除とカリフォルニア州の2000ドルの補助金を含んだ価格。つまり200万円の車に100万円の政府補助金がついての価格です(中国政府の援助は計算に入れず)。それも低速EV基準、100kmの航続距離でこれです。
この宏光ミニEVにしても中国のEV補助金制度をうまく使って150万円くらいの車に100万円の補助金をあてての価格。かつエアバッグなどはないし、国外の衝突安全性基準なども考慮していないもの。44万円の価格だけが一人歩きしているのは危険です。」
価格に安全性が含まれていないように思えるので日本では無理でしょう。
一時期、インドのタタが激安価格で驚きましたがそれだけでした。
安全性を含めたトータルの品質で勝負するのが日本車なので、価格勝負は避けたいところです。