【教皇選挙】見ないと損する映画ってこういうことだね!

映画「教皇選挙」はコンクラーベの行方をスリリングに描く

システィーナ礼拝堂が世界の縮図のように

映画「教皇選挙」(3月20日公開、エドワード・ベルガー監督)は観客の目をくぎ付けにする作品だ。

新ローマ教皇を選出するコンクラーベ(教皇選挙)

描かれるのは、新ローマ教皇を選出するコンクラーベ(教皇選挙)をめぐる聖職者たちのドラマ。

普段は見ることのできないバチカンの内側、とりわけ「秘密厳守」の教皇選挙という題材は、それ自体興味深いのだが、その行方をスリリングに描くストーリーの引力も尋常ではない。

荘厳にして審美的な映像、名優レイフ・ファインズらによる強度の高い演技とともに、観客を引き付けて、引き付けて、本当に信じるべきもの、守るべきものを心に刻み付けていく。

驚きの展開を幾重にも重ねながら。

アカデミー賞脚色賞受賞作。原作小説「CONCLAVE」の作者は、ロマン・ポランスキー監督が映画化した「ゴーストライター」などでも知られるジャーナリストで作家のロバート・ハリス。

脚色は、「裏切りのサーカス」(ジョン・ル・カレ原作、トーマス・アルフレッドソン監督)を手がけたピーター・ストローハン。

そして、監督は、アカデミー賞で国際長編映画賞、撮影賞、美術賞、作曲賞の四冠に輝いたNetflix映画「西部戦線異状なし」(2022年)のベルガー。

その布陣に、おのずと期待が膨らむ。そして、それは裏切られない。

物語は、ローマ教皇の急逝を受けて始まる。

コンクラーベを執り行う責務を担うのは、英国人の主席枢機卿トマス・ローレンス(ファインズ)だ。

新教皇を選出するのは、世界各地から集まった100人余りの枢機卿たち。

教皇に次ぐ高位聖職者である彼らは、ローレンスも含めて投票者であり候補者だ。選挙期間中は外部から遮断され、バチカン内の宿泊施設・聖マルタの家と選挙会場のシスティーナ礼拝堂を往復する毎日を送る。

有力候補と目される人物は4人いる。

そのうち、アメリカ人のベリーニ(スタンリー・トゥッチ)は、ローレンスともども亡き教皇と親しくしていたリベラル派。

対極をなすのは強硬な伝統主義者のイタリア人テデスコ(セルジオ・カステリット)だ。

選出されれば初のアフリカ系教皇となるナイジェリア人アデイエミ(ルシアン・ムサマティ)もかなりの保守派のようだ。

カナダ人トランブレ(ジョン・リスゴー)は穏健な保守派だが、ローレンスは彼に疑念を抱いていた。

前教皇が死の直前、トランブレに解任を宣告していたという情報があるのだ。

特別ではない現実社会の縮図

選挙戦は混戦模様となり、すんなりと結果は出ない。

その間にスキャンダルや政治的工作が発覚し、有力候補が脱落していく。

求道的なローレンスは、生臭い現実に直面し、苦悩を深めながらも、厳格に責務を全うしようとする。

さて、どうなるか。

選挙戦のパワーゲーム、渦巻く秘密と疑惑、リベラルと保守強硬派の対立、男たちが表舞台に立ち、女たちは裏方に追いやられている構図……。

特別な世界の特別な選挙をのぞきこんだつもりが、スクリーンに広がるのは現実社会の縮図。

その渦中に置かれたローレンスの葛藤が、見るほどにひとごととは思えなくなっていく。

ローレンスは揺れ続ける。

揺れ続けることをあえて選んでもいるようでもある。

映画の前半のスピーチで、彼は「確信という罪」に言及。もし確信だけで疑念を抱かねば、不可解なことは消え、「信仰」は必要なくなると説く。

その言葉、現実世界の状況と重ねずにはいられない。

誰かにとっての「正義」を一方的に突きつけることが、各地の紛争、戦争につながっている現状に。

アフガニスタンのカブール教区からの新任枢機卿、メキシコ人のベニテス(カルロス・ディエス)が、あるとき発する言葉がそれを裏打ちする。

信仰とは関係なく誰にでもお勧めできる

信仰があろうとなかろうと、人間という存在の力を過信してしまわないために必要なこと、見失ってはならないこと。

密室でのコンクラーベは、そうしたことを浮かび上がらせていくための壮大な仕掛けとなっている。

ローマ郊外のチネチッタ撮影所に構えられたという大がかりなセットや、この映画のために作られた衣装は眼福だが、目を楽しませるためだけにあるのではない。

閉ざされた密室の中でのパワーゲームの中に、ローレンスまでもが沈もうとした時、眼前に現れる光景を見れば、誰もがそう思うだろう。

閉ざされた窓が破られ、光が差し込む。

礼拝堂の中にいる者たちの小ささが浮かび上がる。

この、動く絵画のごときシーンは、ある種の啓示のように心に焼き付いて、観客の感覚をひらく。その後も映画は続き、さらなる驚きが待っているのだが。

その顔、そのからだから、ローレンスの苦悩を静かに鮮烈ににじませるファインズ、女が「見えない存在」として扱われる世界で生きてきたシスター・アグネス役のイザベラ・ロッセリーニ、そして……。

作り込まれた映像と拮抗(きっこう)する俳優たちの演技、存在感も見ものだ。

それぞれが演じる人物が置かれた状況について考えることは、世界のありようを考えることでもある。

ネットの声

「映画好きでも何でもありませんが、たまたま機内で見てしまいました。予告編では心を動かされなかったのですが、最終的には見て本当に良かったと思いました。迷っておられる方がいらっしゃったら、ぜひ映画館へ!絶対に後悔しないと思いますよ。私ももう一度、今度は映画館で見るつもりです。」

「日本映画が太刀打ち出来ないタイプの映画だ…」

「観るの迷っていたが、ジョン・リスゴーが出てるのなら行こうかな。この方出演なら外れないかと( ゚д゚)」

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