
新型コロナウイルス・パンデミックで都市封鎖が日常の光景となった欧州。
その中で独自路線を進み、「4月末には国民の半数に当たる500万人が感染するぞ」と数学者から警告されている国があります。
スウェーデンです。
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すでに100万人が感染…
「感染者数が少ないのは十分なPCR(遺伝子)検査を実施しないからだ」と批判される日本とスウェーデン。
スウェーデンのPCR検査の実施件数は人口100万人当たりで日本の約12倍もああります。
新型コロナウイルスの感染症数理モデルを各国に提供する英インペリアル・カレッジ・ロンドンのニール・ファーガソン教授らの報告書によると、スウェーデンは自己隔離・社会的距離の推奨・イベント禁止・休校措置はとっているものの、都市封鎖はしていません。

A sign assures people that the bar is open during the coronavirus outbreak, outside a pub in Stockholm, Sweden March 26, 2020. Picture taken March 26, 2020. REUTERS/Colm Fulton - RC2GSF99MZOK
このため実効再生産数(感染者1人からうつる二次感染者数の平均値、とられた対策によって変化する)は2.64と高いものがあります。
コロナの流行を収束させるにはこの数値を1未満に抑えなければならないのです。
日本の実効再生産数は専門家会議の分析では3月上旬以降、連続して1を下回っています。
スウェーデン政府は感染爆発で医療崩壊が起きたイタリアやスペインなど他の欧州諸国と異なり、市民に「大人の対応」を求めているのです。
国家による規制より、市民の自主性、個人の自由を重んじようというわけですね。
ウイルスとの戦いは短期決戦ではなく長期戦になるのは不可避だからです。
感染を防ぐため気分の優れない人、70歳以上の高齢者には自己隔離が勧告されていますが、50人以上の集会が禁止されたのは3月29日だけ。
可能な範囲で在宅勤務と在宅学習が促され、バーやレストランは濃厚接触を避けるため座席があれば接客が認められています。
スウェーデンの社会契約は歴史的に市民の国家への信頼、国家の市民への信頼、市民間の信頼に基づくとされています。
単身世帯の割合はスウェーデン50%超、日本はちなみに35%。
イタリアやスペインは大家族の世帯も少なくなく人間関係の距離が近いのです。
スウェーデンはその対極にあるといっていいでしょう。
同国のステファン・ロベーン首相は
「私たちは皆、個人として責任を負わなければならない。全て立法化して禁止することはできない。常識の問題だ。大人である私たちはまさに大人として行動する必要がある。一人ひとりが大きな責任を負っている」
と訴えています。
しかし現在の実効再生産数を見ると
「もうスウェーデンでは最大100万人が感染している恐れがある。4月末には最大500万人が感染しているだろう」(トム・ブリトン・ストックホルム大学教授)
という警告も決して絵空事とは思えません。
重症化例が少ない日本の謎
スウェーデン公衆衛生局も当初の英国と同じくワクチンができるまではゆっくり感染を広げ、抗体を持っている人が壁となって感染を抑制する集団免疫を獲得しようと考えているそうです。
これに対してノーベル財団会長のカール=ヘンリック・ヘルディン・ウプサラ大学教授をはじめ2000人以上の医師、科学者らがより厳しい措置を講じるよう求める請願書を政府に提出しました。
集団免疫を獲得するまでに何人の人が犠牲になるか分からないからです。
人の接触回数を減らせば感染は制御されるものの、経済は深刻な打撃を受けます。
感染制御と個人の自由意思に基づく経済は完全なトレード・オフの関係にあるのです。
各国のパンデミック対策
このため国によって採用されるパンデミック対策には大きな違いが出てくるといっていいでしょう。
(1)中国の国家統制型フル・ロックダウン
中国共産党の威信を守るためなら情報操作や経済的な損失も厭わないものです。
(2)欧州の段階的ロックダウン
欧州各国とも当初は自己隔離・社会的距離の推奨・イベント禁止・休校措置・都市封鎖を段階的に導入していく方針でした。
しかし、新型コロナウイルスの猛威の前に瞬く間に都市封鎖に追い込まれています。
(3)日本やスウェーデンの「大人の対応」
自由民主主義国家の最後の砦として市民に「大人の対応」をお願いして感染をコントロールするというもの。
(4)韓国やドイツのPCR検査のローラー作戦
PCR検査のローラー作戦を実施して見えない感染者をあぶり出し、隔離して感染を封じ込める手法。
PCR検査のキャパシティーのない国には迅速検査キットができるまではとても真似できません。
韓国は欧州諸国とは違って個人のプライバシーを犠牲にして感染経路を虱(しらみ)潰しにしているのです。
BCG効果なのか?
日本の感染者数が少ないのはPCR検査の実施件数が少ないからなのは間違いありません。
しかし、他の欧米諸国に比べてどうして重症化する人が少ないのか説明がつかないのです。
結核ワクチンのBCG接種によって自然免疫が鍛えられたという説もあります。
それも、臨床研究の結果を待たないとはっきりしたことは言えないのです。
日本の感染者の大半は無症状か軽症です。
重症化する患者を早期発見して治療できる態勢を構築するのは、戦略として間違ってはいません。
ただ「大人の対応」を有効にするためには損失補償が欠かせないのです。
自粛要請を繰り返す東京都の小池百合子知事は4月3日の記者会見で緊急融資の申請が当初見込みの248億円から1200億円に膨れ上がったことを明らかにしました。
為政者にも「大人の対応」が求められるのは当然ですね。
ネットの反応
「日本にも実数を隠してるとかの批判があり、スウェーデンに対しても同様の批判だろう。それぞれの国にはそれぞれの対応方法があり、各国必死の思いでその検討・実施をしている。」
「何だろう、この封鎖圧力。感染者のコントロールに失敗してるから、封鎖しか手がなくなったわけでしょ。日本なんか、中国から入り放題、いまだ満員電車稼働中、ゆるゆる14日間の自己隔離のお願い、感染者による沖縄逃亡、そんな状態で、いまだに死者は2桁という不思議な状態の理由を調べてみたほうがいい。クラスター対策班が優秀なのか、抗体があるのか、世界一手洗いしてるとか。」
「国民性だろうな。すぐにヒステリックになる国が大半。スウェーデンと日本人は正常性バイアスが強めで、容易にパニックは起こさない。それが功を奏するのか裏目に出るのか、結果は来年あたりに判明するだろう。少し違うのはマスコミだけが常にパニックなのが日本w」
日本人は抑制的でパニックになりにくい…もちろんそうでない人もいますが。
総じて抑制的でなんとか頑張ってる状況ですよね。
それでも大人の対応だけで耐えきれるのか…今が山場ですね。