
QRコード決済が注目される日本のキャッシュレス事情。いっぽうで、非現金化が浸透した欧米の主流はデビットカードです。クレジットカード同様に使え、利用代金を「借金」にしないで済む点が好まれる決済方法。しかし、日本ではほとんど浸透していません。
米国ではクレジットの2倍の普及
デビットは金融機関のサービスです。利用者の購入代金を銀行の預金口座の残高から即時に引き落とす仕組み。その場で決済できるので、欧米では日常の少額決済に浸透しています。
そのため、高額品の分割払いのクレジットと使い分ける傾向があります。サービス提供側にとっても、金融機関間の決済インフラを利用できるので、コストが安いというメリットもあります。
米連邦準備制度理事会(FRB)によると、2015年に米国で最も利用されたキャッシュレスサービスは、デビットカードの695億件で、クレジット338億件の倍以上となっています。
日本クレジット協会によると、17年の個人消費に占めるデビットカードの利用比率はイギリス44%、フランス37%などで高く、欧州では決済の主役となっているのです。
ショッピングモールで氷河のマグネット購入。子供が乗るおもちゃもカード決済だった。てかVisa PayWave系のタッチ決済が普及しすぎて、普通のクレジットカードだと少し面倒くさがられる始末。
楽天カードも早く対応してくれ。
三井住友銀行のタッチ対応デビットカード使ってる。 pic.twitter.com/3qcWduEzHd— sigeharucom(9/14-23 ノルウェー) (@sigeharucom) September 18, 2019
日本でのデビットカードの利用率はわずか同0.4%とほとんど利用されていない状況です。その一方で、国際決済銀行(BIS)の統計では、日本のデビットカード発行枚数は4.4億枚となっていて、米国3.2億枚も上回っているのです。
日本のデビットカード事情
日本はでは、デビットカードを「持っているのに使わない」といった状況が続いています。
そして、日本のデビットカードには、日本独自の「Jデビット」と、VISAやJCBなどの「国際ブランド」の2種類があるのです。
Jデビットは、金融機関のキャッシュカードをそのままデビットカードとして利用できる仕組みです。
1999年に国(旧郵政省)主導で始まったサービスです。
「キャッシュカード=デビットカード」とみなされるので、発行枚数は4億枚以上に及んでいます。
BIS統計のカラクリはこれで解けるといってもいいでしょう。
国内56万カ所で使えるのですが、利用は低迷しています。
近年は年約4000億円の利用にとどまっているのです。
海外やネットでは利用できず、金融機関によっては深夜早朝に使えないといったわかりにくさや使い勝手の悪さがネック。
キャッシュカードと一体であることが逆に災いしているといった事情もあります。
利用者がデビットカード機能に気づきにくく、利用に際しキャッシュカードと同じ暗証番号を入力するのに不安を感じる人も少なくありません。
国際ブランドデビットカードは06年にVISAが日本での展開を始めました。
14年にはJCBも加わっています。
この頃から発行金融機関が増え、現在約50の金融機関が扱っています。
利用枠が預金残高に限られる以外は、ほぼクレジットカード同様に使えます。
国内外の加盟店で広く利用できるのもメリットで、ポイント還元や不正利用補償もあります。
クレジットカードと違って、審査不要で、原則16歳以上なら持つことができる点にも注目です。
さらに、1日あたりの利用限度額を決めることができ、計画的に買い物ができることや、利用時にメール通知があり、不正利用に気づきやすいのもメリットとなっているのです。
このような利便性から利用は伸びてはいるものの、日銀によると16年で約5000億円程度にとどまるという調査結果が出ています。
少額支払いでは電子マネーと競合していることや、日本は海外に比べてクレジットの審査が緩いことがデビットカードの普及を妨げているといっていいでしょう。
さらに、手数料不要の「翌月1回払い」が主流で、クレジットカードよりもデビットカードを使いたいというニーズが高まりにくいなどの要因も指摘されています。
デビットは浮上できるか
キャッシュレスのサービスが増え、乱戦模様の日本。
今後デビットカードはどうなるのでしょうか。
カギは加盟店手数料の動きかもしれません。
国際ブランドデビットカードの加盟店手数料はクレジットカードと同水準とみられます。
https://t.co/NEd6aRNItc
デビットカードって対応してる店が少ないと思ってる人が店も利用者多すぎる。
対応してないのはJ-デビットだ。
VISAデビットとMASTERデビットは、クレカ対応店なら全店利用可能。そしてキャッシュレスキャンペーン対応なんだぜ。— Toshi (@silverfox52888) September 23, 2019
金融機関にとっては、利用が増えれば加盟店からの手数料収入が見込めるうえ、非現金化が進むことで現金自動受払機(ATM)の運用コストを抑えられるといったメリットが期待できます。
最近、発行する金融機関が増えたのはこうした要因によるものです。
しかし、近年の欧米のデビットカード事情は、店舗の専用端末にタッチするだけの非接触型が主流となってきました。
日本でも浸透するには、対応端末などの加盟店が負担するコストが課題になりそうです。
そのいっぽうで、Jデビットは、全国の金融機関ネットワークを利用できるので、決済コストが安く、加盟店手数料は中小店でも利用代金の2.5%と、クレジットカードと比べて大幅に抑えています。
銀行業界が10月スタートを予定するQRコード決済「バンクペイ」はこのJデビットのシステムを利用しています。
乱戦のQR決済では後発組ですが、加盟店開拓に低コストをアピールしています。
長年低迷するJデビットの復権を狙えるか、成り行きが注目されているのです。
ネットの声
「何度か使いましたが、そう言えば最近は使っていませんでした。店頭で表示している所も少ないですね」
「単純に使うメリットがほとんどないからだろう。現金派の人には他のカードと同じに見えて使いすぎへの不安もあるし、ポイント等で少しでもお得なクレジットカードや他の決済手段を持っている人はそちらを使う。実質的なメリットは「小銭を持たなくていい」ことぐらいだが、それだけなら他の手段でもカバーできるし、それにそもそも日本では現金決済を苦にする人は少ない。必要とする人もいるんだろうが圧倒的に少数でしかなくて、キャッシュレスにするにしてもデビットカードはスルーする人が大半だと思う。」
「決済手段側が提供するポイントシステムなどやめ、淘汰を進めて利便性を高めないと、乱立ばかりして使いづらい仕組みだけ残ることになる。」
支払い方法の乱立がデビットカードの普及を妨げているのは間違いないでしょう。銀行としては、デビットカードを推して経営状況の改善を図るのは今後の流れとも言えますし、これからのデビットカードの動向に注目ですね。