故人のトラブルで多いのがデジタル遺品…

「デジタル遺品」に潜むワナ 圧倒的に多いトラブルは?

「故人の暗号資産が負債となり、遺族に襲いかかることはあるのか」、「自分が死んだ後、見られたくないデジタル遺品はどうすればよいのか」。

パソコン・スマートフォンなどのデジタルデバイスには、多くの個人情報が記録されています。

この情報の持ち主が死亡し、遺品となった情報を「デジタル遺品」といいます。

そして、デジタル遺品に対する死後の取り扱いについて考える活動を「デジタル終活」というのです。

圧倒的に多いトラブル「スマホのロックが開けない」

「デジタル遺品に関する相談で圧倒的に多いのが、故人の『スマホのロックが開けない』という問題です」

スマホのロックが開けないと、「アプリで管理している暗号資産の情報を確認したい」、「スマホ決済サービスの残高を確認したい」など、スマホに付随するその他すべての問題が解決できなくなってしまうからです。

加えて、スマホの「鍵」であるパスワードをユーザー自身がなくした場合、他にスマホのロックを解除する術がほとんど残されていないことも理由だそう。

スマホのパスワードは、持ち主しか知らないケースが多い。パスワードを知らない他者がロック解除を試みた場合、アイフォンでは、10回連続でパスワードを間違えると初期化されたり、厳重なロックがかかってそれ以上手出しができなくなるのです。

それでは、アップルやグーグルなどのスマホメーカー、またはドコモやソフトバンクなどの通信キャリアに問い合わせればなんとかしてくれるかというとこれも難しい。

端末の中身のサポートは受け付けていないし、マスターキーのようなものも原則提供していないからです。

では、パスワードを入力する他に、無理やりこじ開ける方法があるかというと、これもほぼありません。

一番の解決策は?

デジタル遺品をサポートする企業は増えているが、スマホのロック解除は非対応のケースがほとんど。

ウェブシステムの開発やデータ復旧を手掛ける「デジタルデータソリューション」のように検討してくれる企業もあるが、それでも100%開けるわけではないし、解除まで半年以上かかることもザラだというのです。

この対策法として、古田氏は、スマホのスペアキーを紙などに書いて自作することを推奨しています。

非常にシンプルではあるが、この方法が「スマホのロックが開けない」問題への一番の解決策であり、デジタル終活において最低限やっておくべきこと。

「スマホの財布化」で数十万円の遺産を失う可能性も

これまで「故人のスマホのロックを開きたい」理由は、「思い出の写真が欲しい」や「知り合いの連絡先が知りたい」などが多かったそう。

しかし、最近はこれらに加えて、「〇〇ペイ」関連の相談が増えているというのです。

「ここ5年くらいの間に、PayPayやメルペイ、LINEペイなどといったスマホ決済サービスの需要が急速に増え、デジタル遺品に関する相談も〇〇ペイ関連のものが多くなってきました。『スマホの財布化』が進んだことに加え、金融資産をスマホのアプリで管理する人なども増えており、スマホの重要度がどんどん高くなってきています。それに付随して、『故人のスマホを開きたい』という需要も高まると予想しています」

スマホの重要度は、確かに年々上がり続けています。

政府は、給与支払いのデジタル化を解禁する方針を示しており、「PayPay」などスマホ決済事業者の多くがこの準備を進めています。

早ければ今春にも規制が緩和される方針です(「給与デジタル払い 今年春にも」2月27日、日本経済新聞より)。

しかし、〇〇ペイの相続方法は見つかりづらいのが現状。

各社のサポート窓口に遺族側がアプローチして相続方法を確認する必要があります。

「こういった現状を知らないと、『スマホの中に数十万入っていたのに、確認せずに初期化してしまった』などということが起こりかねません。ただ今後は、遺族からの問い合わせも増えて、専用窓口ができたり、マニュアル化されてシステマチックに対応してくれるようになることが予想されます。それまでの間に当事者になってしまったら、こうした正しい知識を知って焦らず行動することが重要です」

暗号資産の最悪のケースとは

多くの人にとって気になるトピックのひとつ、「暗号資産」についてはどうでしょうか。

国内の暗号資産取引所に保管している場合は、遺族がその取引所に相談すれば所定の手続きを経たうえで残高を日本円に換金して戻してくれます。

厄介なのは、個人で管理している場合。

遺族にパスワード(秘密鍵)が伝わっていないと、残された暗号資産には二度と触れられなくなるのです。

無用の長物になるが、何らかの取り引き履歴から所有していることだけは判明した場合、相続対象として計上される可能性が高いというのです。

額によっては相続税もかかってしまいます。

見られたくないデジタルデータをどう「隠す」か

現代では多くの人が、他人に知られたくないものの1つや2つは、デジタル環境においても抱えているのではないでしょうか。

そこで、故人となった家族の遺産を「復旧する」のとは逆に、生きているうちに、自分のデジタルな資産や情報を「隠す」方法についてはどうでしょうか。

「自分の死後、残された人たちが探し求めるであろうものは、なるべくわかりやすいところに置いておくことです。たとえばパソコンであれば、デスクトップにショートカットアイコンを作成するなど。
アナログ環境では、たとえば思い出のアルバムは、表紙にきちんと名前を書いてわかりやすい場所に置き、反対にあまり発見されたくないものは見つかりづらい場所にしまう。こうしたことを多くの人がごく自然に行っていると思います。しかし、デジタル環境になると、なぜかこうした棲み分けを怠る人が多い。アナログ・デジタル関係なく、気付いてほしいものとそうでないものの棲み分けをすることは、非常に重要です」

残された人たちに、「あなたが欲しているものはこれです」とわかりやすい場所に提示する。非常にシンプルではあるが、そうすることで余計な詮索をされずに済み、結果的に最大の防御になるのです。

「デジタル遺品」は消滅する?

備えが間に合わなかったときの対処法

デジタル終活において、多くの人が最低限やっておくべきことは「スマホのスペアキーを作っておく」ことだと上述したが、こうした備えをする前に、家族に万が一のことがあった場合には、どう対処すれば良いのでしょうか。

「備えをする前にご家族に何かあって、パスワードが分からなくなってしまった場合には、『周辺の情報から割り出す』というアナログ的な方法が、結局のところ解決策として一番有効だと思います」

パスワードは、「すべて個別にするのが理想的だ」とはよく言うが、実際、これを実践するのは難しい。

多くの場合、パスワードには何かしらの共通項があるそう。

たとえば、車の解除キーやマンションの電子ロックの番号など、6桁であるケースが多いパスワードは、スマホのパスワードと同じ数字に設定している可能性が高いというのです。

また、スマホに切り替えた際に、2代目、3代目以降も同じパスワードを使用している人がほとんど。

そのため、1代目を購入した際の通信契約の書類などに、走り書きでパスワードのメモが残っていた、というケースも少なくないのです。

デジタル遺品は消滅する?

ますますデジタル化が進んでいく社会において、デジタル遺品は今後、どうなっていくのでしょうか。

「今後、預金通帳の存在はなくなり、銀行口座はデジタルなのが当たり前になるでしょうし、上場企業の株は、今すでにすべて電子化されています。そうなると、10年後にはとりわけ遺品を『デジタル/アナログ』に分ける必要はなくなり、デジタル遺品という言葉は死語になると予想しています」

デジタル遺品も、大切なことはメモしたり、わかりやすい場所に置いておくなど、一般的な遺品と同じように整理整頓していくことで、トラブルを防ぐことができるのです。

デジタル遺品周りの環境はいま、変革の時にあります。

だからこそ、各業界のマニュアルが蓄積されていく過程で苦労する遺族とならないために、ここ数年間のうちに自分たちでしっかりと備えておくことが重要です。

ネットの声

「通帳がなくなることの一番の懸念材料はこれ。事故で突然亡くなった場合に家族にどうやって知らせるか。ネット預金の口座やパスワードなど、保険証券と一緒に一覧を保管して毎年更新しているけど、これは泥棒にも教えるということだし。クラウドに保管するのも不安だしどうしたら良いものやら。」

「若い人でも毎年の誕生日にエンディングノートを更新するって習慣が必要かもしれないですね。スマホや登録したサイトのパスワードも記載しておいて。定期購入系のものだと解約するまで料金の請求が来てしまうし、預貯金も通帳が無いとそもそも口座を持ってるのかすらわからないだろうし。日本人って死んだ後のことを話そうとすると不謹慎って怒る人も多いけど、残された人へ苦労を掛けないという意味では思いやりだと思います。」

「見られてもいいものと、見られたらまずいもの。もし私が死んだ時には、スマホとPCは風呂の残り湯に突っ込んでくださいって遺書でも残しといた方がいいかな…。」

年齢に関係なく誰もがエンディングノートを書いておくといいかもしれません。



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