電動キックボードは本当に普及するか? 世間に巻き起こる「大反発」のワケとは
電動モビリティと一口に言ってもその種類は多様だが、とりわけ電動アシスト自転車は最もメジャーな乗り物の一つと言えるでしょう。
今や街なかで見かけない日は無いほどの普及率を誇っているのです。
目次
最もメジャーな小型電動モビリティ
電動アシスト自転車の歴史は1993(平成5)年11月、ヤマハ発動機が製造した「PAS」という製品から始まりました。
同社は当時の発売を「世界初」と公式サイトでアピールしています。
電動アシスト自転車を利用する中心層は、子育て世代や日々通学する学生たち。
約30年の歴史から見れば、成人前から親しんだ人が多いという特徴があります。
それもあって電動アシスト自転車は、その名の通り自転車の一種として認知が浸透しており、小型電動モビリティという括りとはなかなか結び付かないかもしれません。
今、最も世間の注目を集めている小型電動モビリティといえば、やはり電動キックボードでしょう。
2022年4月19日(火)、改正道路交通法が可決・成立したことにより規制緩和に対して賛否両論が起きています。
しかしながら電動アシスト自転車にも、近年の電動小型モビリティ同様に規制緩和の歴史があったことをご存じでしょうか。
電動キックボードは全て禁止希望です
・転倒しやすく欧州は死亡事故が発生している
・欧州はルール違反大発生で罰金も効果がない
・歩道を高速で走り去り歩行者に追突して死亡事故が起きている
・車やバイクと激突何回も轢かれかけたり子供が危ない目にあいました。
販売禁止にしてください
— めいろま「世界のニュースを日本人は何も知らない3」発売中 (@May_Roma) April 21, 2022
電動アシスト自転車の条件とは何か
電動アシスト自転車が登場する以前、モーターやエンジンを搭載する乗り物は、基本的に人力ではなくその動力によって走行するものでした。
従ってその多くは長きにわたりナンバー付きかつヘルメットや免許が必要な乗り物として分類されてきたのです。
しかし電動アシスト自転車の存在感が強くなるとともに、モーターやエンジンが「アシストするためのもの」という定義が登場します。
・24km/hでアシストが無くなる
・人間のペダルをこぐ力に対してアシスト力が10km/hを境に徐々に弱まり、最大2倍以下に抑える
以上2点がアシストの条件であり、このルールができるまで電動アシスト自転車は「原付」として取り扱われ、免許・ヘルメットなどが必要な乗り物だったのです。
電動キックボードの開発者です。
使い方によってはとても便利な道具ですが、小径タイヤ故に自転車やバイクよりも路面の影響を受け易く、現状の日本道路行政のままで免許不要(安全教育なし)で運用するのは非常に危険です。いろんな意味で危うい試みだと感じています。 pic.twitter.com/O08jlaqwsi— 藤井 充 (@mitsurufujii) April 20, 2022
なぜ、原付扱いだったのか
なぜ電動アシスト自転車が原付だったか。その理由は仕組みを考えると分かりやすい。
1940年代の日本では、自転車にチェーンソーのエンジンやホンダ「カブ」というエンジンを取り付けたモペット(モーターサイクルとペダルのついた自転車を指す造語)という乗り物が走っていました。
このモペットが、現在の原付の源流となる乗り物だと言われています。
その後1984(昭和59)年に登場したホンダ「ピープル」という、24ccエンジンを搭載し自転車をこぐサポートをする車両も原付として扱われました。
いわば人力とエンジンのハイブリッドであるその仕組みを電動化した電動アシスト自転車は、エンジンがモーターに置き換わった原付(人間とモーターのハイブリッド車)と解釈されたものと考えられます。
電動キックボードの「免許不要、ヘルメットは努力義務」という道交法改定。その是非や事故の可能性はさておき、これまで頑なにセグウェイやウイングレットやUNI-CUBなどの認可を渋っていた国交省が、誰の、どのようなロビイ活動で、こうも一気に話が進んだ(ように見える)のか、大変気になる。
— ソノヤマ・タカスケ (@T_SONOYAMA) April 19, 2022
電動アシスト自転車から考える規制緩和
今回の道交法改正によって行われる小型電動モビリティの規制緩和は、電動アシスト自転車がたどった変遷(へんせん)と非常によく似ています。
かつてヤマハをはじめとした企業の働きかけにより電動アシスト自転車を免許不要の自転車として位置付けさせたのと同じように、電動キックボードのレンタル事業を展開するLUUPや電動モビリティを製造・販売するglafitなどが、規制緩和に向けた取り組みを積極的に推進してきたからです。
電動キックボードに取り付けるスマホホルダーって意味わかんないわ?? pic.twitter.com/hAIoJgXoDL
— chimi? (@chimi123123) April 21, 2022
規制緩和によるメリットは何か
規制緩和で賛否両論を呼んでいる小型電動モビリティですが、普及によるメリットは大きいと考えられます。
例えば、通学距離が長い地方の学生だ。首都圏のように公共インフラが整わない地域では、電車やバスの減便・廃線などが増え、保護者による送迎などに頼る地域も少なくありません。
移動手段の選択肢が増えれば、こうした問題の解決にもつながるでしょう。
このように、電動モビリティの普及について首都圏・繁華街・都心部だけ、電動キックボードだけの話と考えるのは、いささか限定的な捉え方といえるのです。
もちろん都市部でもメリットはある。駐車場が少なく路地が入り組む都内の移動で、小回りの利く小型電動モビリティは活躍するはず。
免許を取得しない若年層にも新しい選択肢として受け入れられるでしょう。
電動キックボードが 法改正で
・速度が時速15kmまで → 時速20kmに
・ヘルメット着用が任意に
・免許証が不要に
ってんだけどさ、、
自転車でも 逆走だの 並走だの
基本的ルール知らないバカばっかりなんだから
まずは そっちも しっかりしてからにしてくれないかな— クレーンの丈? ? (@crane_joe) April 19, 2022
新たなモビリティが“嫌われる”理由
電動キックボードに対して賛否があるように、新しい乗り物が登場すると、しばしば混乱が生じます。
これまでには無かった事故が発生するのではないか、といった懸念が大きな理由の一つとしてあるのです。
電動キックボードの場合、車道を走行している最中に転倒して自動車との接触を起こすのでは、といった懸念です。
しかし考えてみれば、速度の速い・遅いにかかわらず、また動力のガソリンエンジン・人力・電動の違いによらず、ほぼ全ての二輪車はその構造上、転倒しやすいという側面を持ちます。
従って、公道走行において危険を伴うのは何も最新の小型電動モビリティに限った話ではありません。
ユーザーはおのおの車両の特性を十分に理解し、細心の注意を払って使用すべきであることは言うまでもないのです。
電動キックボードは犯罪に使いやすいです
狭い道や歩道を高速で爆走できますから、歩行者のカバンやスマホを奪い逃亡します。歩行者に追突もさせやすい。倒れたら物を奪う。
近くにいたら気をつけてください
イギリスで実際に起きています
— めいろま「世界のニュースを日本人は何も知らない3」発売中 (@May_Roma) April 22, 2022
新たなモビリティの定着のために
同時に、一部マナーの悪いユーザーが新しい乗り物の印象を悪化させることは十分に起こりうるでしょう。
便利に利用されるべきモビリティだからこそ、ルールとマナーの順守が必須であることはあらためて強調しておきたいところです。
かつて電動アシスト自転車が人口に膾炙(かいしゃ)していったように、新たな小型電動モビリティも世間に定着していくのでしょうか。
その行方を引き続き見守っていきたいところです。
電動キックボードの話が警視庁の電光掲示板に出てるんだけど、マジで電動キックボードの会社は警視庁のお偉いさんの何を握ってんの?
— rionaoki (@rionaoki) April 21, 2022
ネットの声
「電動キックボードの規制緩和で確実に言えるのは事故が増えるという事。相当な事故件数の増加に繋がると思うが、それによって失われる命の数が利便性に見合うかも問題でしょうね。自転車よりも更に不安定で身を守る術のない電動キックボードは、自動車が少しでも接触すれば吹き飛んで重大事故に繋がるし、また歩道の走行や道交法違反の走行をきちんと取り締まらないと、歩行者を巻き込む重大事故に繋がるが、現在の自転車に対する指導の甘さを考えると、電動キックボードに対する監視は行き届かないだろう。規制緩和で事故が激増した場合には、それを認めた国会議員や関係官庁の責任の取り方を明確にした方が良いと思います。それと保険の加入は絶対条件にする必要がある。」
「免許不要で乗っていいということは 交通ルールを知らなくても乗っていいということになる。オートバイとかは一応、免許取得時に交通ルールを学びます。自転車も同じだが、免許制にしてちゃんと交通ルールを教えて、ルールに従わせるのが、いいと思うのだが。」
「動力のない自転車は今でこそマナーやルール違反が厳しく批難されるが、電動アシスト自転車の黎明期には自転車に対する批難はそんなに強くなかった。だから寛容でもあった。ところが動力のないキックボードに対する世間の目は自転車よりも厳しいものという印象を受ける。それに動力が付くなどと言ったら良い印象など抱きようがない。」