歯医者さんでコロナのクラスターが発生しないのはどうして?

吉村大阪府知事も注目「なぜ歯科医院ではクラスターが発生しないの?」 歯科医に聞いてみた

新型コロナウイルス感染症の流行が続いており、医療機関でも定期的にクラスター(集団感染)が発生しています。

しかし、歯科医院でクラスターが発生したという話はほとんど聞きません。

歯科の治療では患者が口を開け、唾液(だえき)の飛沫も飛ぶはずですが、なぜ?

大阪府の吉村洋文知事も同じ疑問を持ったようで、

「大阪には5500もの歯科医院があるが、クラスター発生はゼロ(中略)、是非分析してもらいたい」と今年1月にツイートしています。

そこで、歯科医院の院長でもある、歯周病専門医の若林健史歯科医師にその理由を分析してもらいました。

コロナ以前から感染対策を徹底

吉村洋文知事のツイートは、歯科医師仲間から聞き、私もリアルタイムで読みました。

確かに全国において歯科医院でクラスターが発生したという報告はありません。

歯科医院のスタッフがコロナに感染した例はいくつかありますが、会食などのイベント、あるいは家族からの感染です。

では、なぜ歯科医院ではクラスターが発生しないのでしょうか?

やはり、コロナ前から徹底した感染対策が講じられているからだと思います。

歯科の治療は患者さんの口の中での操作です。

エアタービンで歯を削ったり、歯を抜いたりと外科的な処置が中心です。

処置をする際に唾液だけでなく、血液が飛ぶことも珍しくありません。

唾液や血液を介して感染する病気はコロナ以外にもたくさんあります。

しっかり対策をしないと歯科医師が病気に感染してしまう上に、治療器具などを介してほかの患者さんに病気がうつってしまいます。

これは非常に怖いことですね。

そのようなことにならないよう、関連学会や厚生労働省から、きびしい感染対策を実施することが求められ、多くの歯科医院はこれを順守しているのです。

わかりやすくいうと、歯科では感染対策をきちんとしなければコロナの患者さんが来たことで、あっという間に感染が広がる可能性大ですが、きちんとしていれば、リスクは限りなくゼロに近いといえます。

「コロナウイルスは口の中、唾液に多く含まれている。なのでマスクが有効だし、飲食の場も指摘される。一方で利用者側がマスクができない環境に歯科医院がある。大阪には5500もの歯科医院があるが、クラスター発生はゼロ。感染対策の賜物と思うが、何かある。何か?専門家には、是非分析してもらいたい。」
(2021年1月19日 吉村洋文知事がツイート)

かつては対策も緩かった

実はかつての歯科医院はもっとゆるい対策でやっていました。

今では信じられないことですが、手袋はせず、素手で患者さんの口の中を処置していました。

処置をするたびに洗浄・消毒はしていましたが、抜歯などでは手が血だらけになることもありました。

それが1983年、エイズ(AIDS)の原因となるヒト免疫不全ウイルス(HIV)が発見されたことで、大きく変わったのです。

当時、エイズは原因不明で死に至る病気と話題になっていましたが、その病気の原因ウイルスの感染ルートの一つが血液と判明し、歯科医師たちも「これはまずい」となりました。

また、同じ頃、血液を介してB型肝炎に感染する歯科医師が増えてきました。

多くはむし歯の治療や抜歯時などの麻酔注射による針刺し事故で、これを機に、感染対策が一挙に強化されたのです。

なお、さらにコロナの問題から昨年、ガイドラインが強化され、歯科医院はこれまで以上に感染防止対策を励行しています。

では、具体的にどのような対策がとられているのでしょうか。

すべてを伝えると膨大になってしまうのでポイントをお話しすると、まずは歯科医師がマスクをし、飛沫を防御していることだと思います。

今は医師も当たり前のようにつけていますが、コロナ前からマスクをしているのは歯科医師くらいのものでしょう。

最近はさらにマスクの上からフェイスシールドをしている人が多いですね。

一方、患者さんには治療前に殺菌剤の入っている水でうがいをしてもらいます。

これにより口の中の細菌の数を一定量、減らすことができるわけです。

なお、うがいによって細菌の数が減ると口の中の環境がよくなり、抜歯後に腫れが起こりにくくなるなど、治療後の回復がスムーズになります。

さらに、歯を削るときに飛沫や削りかすを吸引するために、口の中にバキュームという装置を置きます。

さらに最近はコロナ対策として、口の外に飛んできた飛沫を吸引するための口腔外バキュームを設置している歯科医院も増えています。

除菌も徹底

患者さんの口の中に入れるドリルや鏡、ピンセットなどはほかの患者さんにも使います。

これらは使用するたびに病原菌を無毒化するための処置をしなければなりません。

細菌やウイルスを殺す働きのある薬液につける、消毒液で洗浄するなどいくつかの方法がありますが、現在はオートクレーブ(高圧蒸気滅菌器)で病原菌を完全に死滅させる方法が推奨されています。

オートクレーブを使う歯科医院はコロナ禍の影響もあって、増えてきています。

滅菌中は器具の使用ができないので、ドリルなども多めに準備しておく必要がありますが、昨年はドリルの発注に生産が追い付かない時期があったのです。

感染拡大防止支援金(コロナの感染対策のための器具などの購入に支援金が出る措置)も追い風となったようですが、結果的に患者さんのメリットにつながっているといえます。

今後も感染対策を徹底し、安心してみなさんに歯科医院に通ってもらえるようにしなければなりません。

また、何より、一日も早いコロナの収束を願うばかりです。

ネットの声

「普段から患者の飛沫を浴び続けている歯科医師、衛生士は普段から対策をしているからクラスターは出にくいだけ。危険な状態にはある。」

「私の親戚の歯科医は、コロナに感染しました。クラスターは発生していないようです。患者から患者へうつることはなさそうだけど、患者から歯科医にうつるリスクはそれなりにあるのでしょう。変異株ともなればなおさら。でも、歯の健康管理は大事です。」

「しかし、それは昔の事で、変異株相手にはクラスターも出始めているようです。群馬県高崎の歯科医院では、現在までに10名の従業員の感染が確認されてます。良くも悪くも、感染の最前線にあるのは間違いないでしょう。」



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