円の価値が下がる円安…暮らしに与える影響は?

円安が暮らしに与える影響とは?「円安リスク」について解説

外国為替相場に詳しくない人でも、「円高」「円安」という言葉を一度は聞いたことがあるでしょう。

「円高」「円安」は、二国間の貨幣交換レートを表す外国為替相場の上昇、下落といった推移を表す用語です。

ここでは、「円高」「円安」が私たちの生活にどのような影響を及ぼすのかについて解説していきます。

「外国為替相場」の基本的な考え方

外国為替相場と「円安」「円高」
「外国為替相場」と聞くと、何やら難しい経済指標であるという印象をうけるかもしれません。

海外旅行に行ったことのある人であれば、国内や現地の換金所で日本円を現地の通貨に換金してもらった経験があるはずです。

1,000円札を出して現地の通貨いくらと交換してもらえるか?このときの、交換レートを決定するのが「外国為替相場」です。

例えば、換金時点の日本円とアメリカドルの「外国為替相場」が「1ドル=100円」だとします。

換金にかかる手数料がないとした場合、1,000円を換金に出した場合、1,000円÷100円=10ドルを受け取ることができます。

逆に、アメリカからきた人がドルを日本円に換金したい場合、1ドル札を出せば100円と換金してもうらうことができるのです。

「円安」「円高」とはどのような状態を示すのか?
「円安」「円高」を解説するにあたって日本円とアメリカドルを例に挙げてみます。

円ドルの為替レートは1949年(昭和24年)に「1ドル=360円」に固定されていました。

終戦直後におこった日本国内のインフレーション(物価上昇)に対応するための措置でしたが、このように為替レートを固定することを「固定相場制」と呼びます。

その後、固定相場制により国内経済が回復したところで、1973年(昭和48年)に為替相場を両国通貨の需要と供給にあわせて変動させる「変動相場制」に移行します。

変動相場制に移行したことで「円安」「円高」というキーワードが注目されるようになります。

為替相場の「安い」「高い」という言葉は、その通貨の「価値の増減」を表しています。

「円安」の状態とは、ドルに対して日本円の価値が相対的に下落している状態を指します。

つまり、日本円が弱くなっていることを意味します。

「円高」の状態とは、ドルに対して日本円の価値が相対的に上昇している状態を指します。

つまり、日本円が強くなっていることを意味します。

「円が強くなるのは良いことではないか」と思う人もいるでしょう。

しかし、資源を海外からの輸入に依存し、海外輸出を経済的な強みとしている日本にとって、円高が必ずしもプラスになるわけではありません。

次項では「1ドル=100円」を基準にして、「円安」「円高」から生じるそれぞれのメリット・デメリットについて解説していきます。

「円安」「円高」のメリット・デメリット

「円安」のメリット・デメリット
「1ドル=100円」が「1ドル=120円」になることを「円安」と呼びます。

100円から120円になるので一見すると円高のように感じます。

しかし「120円ないと1ドルが手に入らなくなった」と考えれば、日本円の価値がドルに対して下落、すなわち安くなっていることが理解できます。

「円安」のメリットとして挙げられるのが、海外輸出が有利になる点です。

「1ドル=100円」と「1ドル=120円」を比較してみましょう。

アメリカ国内で同じ商品を1ドルで販売する場合、為替相場が円安になるだけで貰える日本円が100円から120円に増加します。つまり、同じ商品を販売しても儲かることになります。

資源を仕入れ付加価値をつけて海外輸出する経済スタイルの日本にとって、海外輸出が儲かることは大きなメリットになります。

「円安」のデメリットは、逆に輸入する際の仕入価格が高騰することです。

同じ1ドルの商品でも、100円で輸入していたものが120円出さないと買えなくなります。

特に日本は資源輸入国ですから、円安による影響は大きなものとなります。

これは製造業だけの問題ではなく、石油等の資源の調達コストも高くなるため、私たちの生活にも少なからず影響が出ます。

ただし付加価値をつけて販売していますから、販売価額の方が仕入価額より高いのが通常です。

以上を比較すると、円安により海外輸出で儲かるメリットのほうが大きくなるので、海外輸出に依存している日本にとっては「円安」のほうが有利にみえます。

「円高」のメリット・デメリット
前項の円安に対して「1ドル=100円」が「1ドル=80円」になることを「円高」と呼びます。

100円から80円になるので一見すると円安のように感じますが「80円で1ドルが手に入る」と考えれば、日本円の価値がドルに対して上昇、すなわち高くなっていることが理解できます。

「円高」のメリットとして挙げられるのが、海外輸入が有利になる点です。

「1ドル=100円」と「1ドル=80円」を比較してみましょう。

アメリカ国内から同じ1ドルの商品を輸入する場合、為替相場が円高になるだけで支払う日本円が100円から80円に減少します。つまり、同じ商品を安く買えることになります。

海外輸入が活発になるので、国内経済が活性化されるというメリットもあります。

「円高」のデメリットは、輸出する製品の販売価格が上昇することです。

今まで1ドル(100円)で輸出していた製品を同じ100円で販売しようとすると価格を1.25ドルに上げなければなりません。

価格が上昇すれば競争力が低下し、購入する側の購買意欲が下がりますので商品は売れなくなります。

輸出に依存している日本経済にとって輸出の国際競争力の低下は大きな打撃を受けますので最大のデメリットであるといえます。

円安から生じる「円安リスク」について解説

「円安」が抱えるリスクとは?
ここまでの解説で「円高」より「円安」のほうがメリットが大きいように感じるかもしれません。

輸出大国の日本にとっては、円安のほうが輸出に有利であることが理由です。

しかし「円安」傾向になることで、日本の経済構造自体に大きな変化が生まれています。

円安により資源輸入のコストが増加した企業が、生産拠点を海外に移すケースが増加したのです。

結果として国内で生産する企業が減少する、いわゆる「経済の空洞化」が進んでしまうこととなりました。

国内の空洞化が進めば労働者の雇用環境が失われますが、国内で商品を購入する消費者はイコール労働者でもあります。

雇用がなくなれば労働者の所得が減少しますので消費が冷え込むことに繋がり、最終的には国内企業の収益が大きな打撃を受けることになります。

「円安リスク」が経済活動に与える影響とは
円安が抱えるリスクは「経済の空洞化」だけではありません。

円安によって輸入コストが増加すれば、国内生産物の製造コストも増加します。

同じ商品を高い材料で製造しますので、販売価額を上げなければ採算が合いません。

結果として、国内はインフレとなります。経済全体が拡大傾向にあるときに起こるインフレと異なり、単純な製造コストの増加に起因するインフレは賃金が上昇しないまま物価だけが上昇しますので、暮らしや企業活動に悪影響を与えることになります。

また、輸出とは関係ない国内電力やガスの輸入コストが増加しますので、水道光熱費の上昇が家計を直撃することにもなるでしょう。

輸出大国である日本では、かつて「円安」が歓迎されるムードがありました。

しかし、企業活動のグローバル化が進んだ現在、安易な円安誘導は経済構造自体に悪影響を与える結果となります。

暮らしに影響を与える「円安リスク」について私たちも考える必要があるのではないでしょうか。



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