
新型車開発なぜ長期化? 「昭和」は4年だったのに「令和」は10年超!!
クルマの新車モデルサイクルが長期化しています。
古いクルマ好きなら「新型車はデビューしてから2年たったらマイナーチェンジ、4年たったらフルモデルチェンジ」と言われていた時代をよく覚えているはず。
たとえばクラウンは6代目が1979年に登場しており、7代目はきっちり4年後の1983年発売、8代目は1987年、9代目91年、10代目95年の発売です。きれいに4年サイクルで発売しています。
しかしここ最近の日本市場における新車のラインアップを見てみると、発売から5年以上経過しているモデルはザラといったところ。
10年以上フルチェンジしていないモデルもちらほら存在します。
なぜこんなに新型車への切り替えは長くなってしまったのでしょうか。
衝突安全? 燃費? グローバル化?
ひょっとすると「4年ごとにフルチェンジしていたかつての日本が変だった」ということでしょうか。
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スマホを替えるノリで新車を乗り換えた
日本車のモデルチェンジサイクルといえば、昭和の時代まで「4年ごと」というケースが大半を占めていました。
カローラ、クラウン、マークII、シビック、セドリック、ファミリア等々。
しかし平成になって徐々にモデルチェンジサイクルは長くなり、直近を見ると早くて6年。
7~8年も珍しくなく、アクアなんか9年間モデルチェンジしていないのです。
なぜモデルチェンジサイクルが長くなってきたのでしょうか。
きっかけは1983年にさかのぼります。
それまで初回も2年間だった車検有効期間を、新車時に限って3年とした年です。
当時、新車の乗り換えサイクルは、そもそもお金持ちしか新車なんか買えなかったため、2年。長くて2回目の車検前で乗り換える傾向にありました。
60歳以上の諸兄ならわかるとおり、カラーTVなんかも3~4年で下取りに出して買い換えたものです。
今で言えばスマートフォンですね。
普通に使えるし、画面が割れたり電池容量が落ちてきたら、まだ修理すれば使えるのに、お金に余裕のある人は新製品に交換してしまうのです。
クルマも全く同じノリといっていいでしょう。
大雑把に言って、新車を買った半分以上の人が最初か2回目の車検で乗り換えていました。
魚心あれば水心。
自動車メーカーも2年に1度マイナーチェンジして商品性をアップ。4年に1度フルモデルチェンジして乗り換える気分をあおっていたのです。
いいお客さんを持っている営業担当は、車検の切れるタイミングで新型車のカタログを持って行くと簡単に売れたようです。
中古車販売でも利幅を稼ぐから良い商売といっていいでしょう。
開発に必要な時間とコストが爆増
最初の車検が3年になると、4年に1度のモデルチェンジじゃタイミングを合わせられなくなってしまいます。
新車を買った人は1回目の車検時期だと、すでにモデルチェンジまで1年。
乗り換える気分にならないでしょう。
2回目の車検タイミングであれば新車が出てから1年以上経過しているので、浮かれ気分で契約のハンコを押す人も少ないといっていいでしょう。
それでもクラウンやマークII、カローラなど、トヨタの中核となるクルマは4年サイクルのフルモデルチェンジをしていくのだけれど、大半が5年を基本とする傾向です。
1990年代に最も売れたクルマとして知られるレガシィは5年ごと。セレナも5年。ステップワゴンやオデッセイのように明確なタイミングを決めない車種だって少なからず出てきたのです。
以上は販売面での流れ。
ただそれだけなら5年というモデルチェンジサイクルで解決できそうです。
されど近年、さらにモデルチェンジサイクルが長くなる理由も出てきました。
それは、ハード面の投資コスト&開発時間です。
昭和の時代、クルマのモデルチェンジは比較的低コストで済んでいたでしょう。
膨大な走り込み試験を必要とする電子装備は"ほぼ"無しだったからです。
自動ブレーキなど影も形もなく、横滑り防止だって1997年の登場です。
最高速度180km/h出るようなクルマが希少だった時代ということもあり、開発や安全性確認、作り込みに必要な期間も短くて済んでいたのです。
衝突安全性能すら1990年代前半に厳しくなるまで、今からすれば驚くほど簡単な基準しか無い時代でした。
そのため、気軽に新型車を作れたことだと思います。
また、4年に1度フルモデルチェンジするといっても、プラットフォームはそのままというケースが大半だったのです。
クラウンを見ると2~6代目まで基本的に同じ。
7~9代目も改良を加えているものの同じ。
モノコックになった10代目と11代目は共通ボディ構造で、外板を変えた程度です。
いわゆる「スキンチェンジ」と言って良いでしょう。
最近のフルモデルチェンジは昔の2~3世代ぶん??
4年でフルモデルチェンジしている時代、エンジンについても大きく変わるのは8年以上使ってからです。
ターボを付けたり出力向上させたりしていますが、シリンダーブロックから変えていないため、開発に掛かるコストや時間だって短くて済みました。
わかりやすく言えば、外観やインテリアをガラリと変えて「新型車です」と言っても売れたワケです。
最近はそう簡単にいきません。
先代レヴォーグが発表されてから6年。
新型はエンジンひとつとっても(先代モデルと)まったく共通性なしです。
プラットフォームだって100%違います。
巨額の開発コストと実走行試験を必要とする自動ブレーキも新しい世代になりました。
昭和の時代のフルモデルチェンジとコストの掛かり方や進化度合いがお話にならないくらい違うのです。
9年フルモデルチェンジしていないアクアも、次のモデルはレヴォーグと同じくらい徹底的な進化になることでしょう。
今年フルモデルチェンジを予定しているモデルの多くが、昭和の時代なら2~3世代程度に相当する変更を受けていると考えていいと思います。
「新しい技術を投入しようとしたら10年近くかかる」と言い換えてもよいでしょう。
「自動車」の進化はこの10年でさらに別次元へ
今後はどうでしょうか。
"自動車"はまたもや新しいフェイズに入っていくのは間違いありません。
自動運転技術の導入と、厳しくなる一方のCAFE(企業平均燃費)を達成するための電動化です。
いずれも既存のプラットフォームやパワーユニット、電子技術では対応できないケースが増えていくでしょう。
しかも現在販売している車種の大半は、2030年のCAFEをクリアできません。
直近の2~3年で、すべてプラットフォームもパワーユニットも電子装備も一新されたモデルに切り替わっていくのは間違いありません。
さらに電気自動車に代表される新しい世代が続々出てくるのです。
こうなると4年に1度のフルモデルチェンジだの車検に合わせたモデルチェンジだの、まったく関係なくなっていくでしょう。
今後10年くらいは新型車ラッシュのお祭り騒ぎになるかもしれません。
ネットの声
「大半の車種が4年でFMCしていた時代、とある自動車評論家が「なんで今フルモデルチェンジする必要があるのか。次から次へと駄グルマばかり出してどうするんだ」みたいなことを言ってた気がする。
今のように長いモデルライフにマイナーチェンジで改良を重ねていくほうがいいだろうね。」「昔は日本車のモデルチェンジサイクルは欧州車より短くて、「なんでそんなにコロコロ変えるんだ」と思っていたけど、最近は、むしろ欧州車の方が「もう変えるの」というくらい短くて、日本車の方がロングライフになっている気がする。」
「入社後2年で新車購入、それから4?5年で乗り換えて40歳までに5台新車購入しました。毎月、車の情報誌を3誌位買ってワクワクしていました。パワーウインドウ、ABS、リトラクタブルヘッド、時間調整式ワイパー、オートロックなど、今では当たり前の装備にも、満足感がありました。中古も含めて10台位乗り継ぎましたが、新車の購入商談は嬉しいものです。年齢的に、最後の愛車は何かと感じるようになってきました。」
クルマも長持ちしますし、すでに熟成していますからね。
これからの伸びしろは自動運転システムくらいしかないのでは。