
4つの罪で起訴されていた日産元会長のカルロス・ゴーン被告(65)が、初公判を前にレバノンへと不法出国したのは、2019年12月30日のことでした。
自身の安全保障を暴力に頼るしかなくなる
多くの人が問題としているのは、会社法違反(特別背任)。
犯行を一言にすれば商取引に見せかけて、資金を迂回させて自己に還流していたということになります。
現金を移動させていれば誰でも理解できるのですが、資金移動に「SBL/C」という、日本人には理解できない証券を使い悪質性まで覆い隠したのです。
注目すべきはゴーン被告のその後でしょう。
20年1月9日にはレバノン政府が当面の渡航禁止を決定しましたが、豪腕経営者の復活はあるのでしょうか。
不法出国後、日本側の要請によって、ICPO(国際刑事警察機構)からゴーン被告に対する赤手配書(国際逮捕手配書)がレバノンに送られました。
「赤色手配書」が出されると、まともな国への入国は格段に難しくなります。
日本の司法制度を痛烈に批判するゴーン被告を「反日」のアイコンとして、中国や韓国の自動車メーカーが雇用するという観測報道もありました。
しかし、自動車メーカーのある国など論外といっていいでしょう。
賄賂の効く(金でものを言わす)貧困国に入国できるのが関の山というのが現実です。
ゴーン被告の前に立ちはだかる巨大な壁
ゴーン被告の前に立ちはだかる巨大な壁が「アメリカ」です。
保釈金から解説しましょう。
保釈金は被告の全財産から考えて逃亡を躊躇せざるをえない金額を決定します。
ゴーン被告の保釈金は15億円でした。
19年間も日産に勤め、年収19億円とも報じられた人物に対してあまりにも少額と言えるでしょう。
これは、ゴーン被告の日本国内のおける資産だけをカウントしたということです。
日本の司法機関に本人名義以外の海外資産を調査する能力はありません。
つまりゴーン被告は国外に資産の大部分を逃がしているということになるのです。
自己資本還流にSBL/Cという証券を使うほど、ゴーン被告は黒い国際金融に精通しています。
そうした人物は、どこの国に逃げても通じる通貨「ドル」で資産を隠すのが暗黒街の常識なのです。
基軸通貨「ドル」が健全であることが、アメリカが世界の覇権を維持できる大きな要素です。
したがってアメリカは、悪事にドルを利用することを許しません。
ゴーン被告が全財産を没収されるリスクは、考えているよりはるかに高いのです。
レバノンで大丈夫?
最後のポイントは逃亡先の国状です。
1997年、国際手配中に潜伏していた日本赤軍メンバー5人がレバノン当局に検挙されました。
服役後4人が日本に強制送還されています。
唯一政治亡命を認められたのが反イスラエルの政治犯と認められた岡本公三被告です。
背景にはレバノン-イスラエルの敵対関係があるのは言うまでもありません。
イスラエルとアラブ社会の亀裂はマリアナ海溝よりも深いといっていいでしょう。
パスポートにイスラエルの入国スタンプがあると、他のイスラム圏の国に入国できないことが多いのです。
イスラエルに入国するときには別紙に入国印を押してもらい、再びイスラム圏の国に入国するときにはそれを一回剥がして審査を受けるほどなのです。
レバノンはイスラエルへの渡航を禁止していますが、2008年にゴーン被告はレバノン国籍を保有したまま、イスラエルに入国しています。
そして、政府要人と会談しているのです。
ゴーン被告とイスラエルの関係の濃淡次第では、レバノン当局が別の罪で拘束する可能性は十分にあります。
株式によって資金調達を行う一流企業が手配犯に経営を任せることもありえません。
一方で「多面楚歌」状態にあるゴーン被告は、自身の安全保障を暴力に頼るほかないといっていでしょう。
それらを同時に満たすことができる就職先こそ「テロリスト専門の黒い銀行家」なのです。
武器はドルでしか売買されないということで、テロリストはドルを喉から手が出るほど求めています。
そのドルをいつでも供給してくれるスポンサーの安全を、非合法的な暴力で保障してくれることでしょう。
それともうひとつ。
レバノンの国情が不安定なことです。
政情不安からいつクーデターが起きてもおかしくありません。
ゴーン被告がそのときもお金にものを言わせて懐柔することも考えられますが、手っ取り早くしさんを凍結して、根こそぎ巻上げて牢獄にぶちこむということもなきにしもあらずなのです。
日本にいたほうが良かった…とならなければいいのですが…。
ネットの反応
「ゴーンにはバチが当たってほしいものだ。この件で日本の弁護士の実態が分かった。残念だが思っていたような高尚な人達は少なく、圧倒的に思考が偏見した人達のようだ。弁護士調査では、ゴーンの逃亡と主張を70%以上が「理解できる」そうだ。ちなみに同じ質問の世論は90%が「許せない」だった。」
「こいつの阿呆なところは、もし裁判で負けたとしても潔白を主張し日本の検察や司法の異常性をその時に露わにさせて批判することで、ヒーローになった可能性が高かった事だ。そう言う国際世論だった。しかも執行猶予が付くことも予測されてた。なのに脱走して全てがおじゃん。釈明の記者会見でも逮捕された案件は、答弁を拒否。真っ黒やん。」
「テロリスト専門のブラック銀行親分になるってことだな。カネがあるうちはテロ坊やはちやほやしてくれるけどカネがなくなると使い捨てカイロってことかな。なんか悲惨だなあ。」
本人が心配しているのはレバノンの治安のが悪化でしょう。
レバノンから出国できないのなら常に危険と隣り合わせ、将来にわたって安寧はないでしょうね。