夫婦で年金「月19万円」…95歳まで生きる「恐ろしいリスク」
「老後2000万円問題」が話題となったことからもうかがえるように、今、多くの日本人が老後生活に不安を抱えています。
しかしその「漠然とした不安」は、制度を正しく理解していればなくなるものです。
そこでここでは、企業年金コンサルタントの細川知宏氏が、「老後と年金」について解説します。
目次
給与収入が平均でも「月に5万5000円不足」という試算
今、わが国では、長生きを「リスク」であるととらえる人が増えています。
その背景には、老後生活の経済面での不安があることはいうまでもありません。
もし長生きを「してしまった」場合に、果たしてお金は足りるのだろうかという不安です。
それを裏付けるデータの一つとして、例えば公益財団法人生命保険文化センターが行った「生活保障に関する調査」(令和元年度)によると、老後生活に「不安感あり」とする人は84.4%と8割を超えています。
また、その不安の内容としては、「公的年金だけでは不十分」と答えた人が82.8%、「退職金や企業年金だけでは不十分」と答えた人が38.8%、「自助努力による準備が不足する」と答えた人が38.5%など、経済的な面での不安を挙げた人が、大半を占めています。
これらの不安感に、根拠がないわけではありません。
それは公的年金制度(国民年金、厚生年金)だけでは到底生活費をまかなえないことは当然だとしても、今後、人口減少と少子高齢化が進んでいけば、現在の給付水準でさえ維持できず、さらなる支給開始年齢の引き上げ、給付金額の減額などがなされるのは間違いない、という心配です。
それが顕在化したのが、2019年の「老後2000万円問題」でした。
老後2000万円問題自体は、誤解を孕(はら)んで伝えられた部分もありましたが、あれだけ話題になったのは、多くの人々が漠然と感じていた不安が前提にあったからだと考えられます。
2019年6月、金融庁・金融審議会の市場ワーキング・グループによる報告書「高齢社会における資産形成・管理」のなかに、老後の経済生活について記載した部分がありました。
同報告書によると、平均的な収入のサラリーマンが65歳で退職したあと、平均的な支出で老後の生活をした場合、年金が現在の水準でもらえたとしても、月に5万5000円が不足するとされています。
95歳まで生きると仮定した場合(65歳の退職時から30年間)では、5万5000円×360ヵ月=1980万円となり、約2000万円が不足することになります。
これがいわゆる「老後2000万円問題」と呼ばれた計算の根拠でした。
では、本当にそんなにお金が足りなくなるものなのか、もう少し詳しく見ていきます。
同居じーさん80歳の年金、月に13500えん…
まあ掛けた額、期間にもよるのでしょうが。息子夫婦同居だから生きてるようなものの。
何よりも保険料額のとられよう!!??
死にそうな人からもとことん取る
?? 自民党クソが?? pic.twitter.com/W9C7AUyKz4— わんぱく (@q7a_h) October 12, 2021
本当に「2000万円足りない」内訳を見ていくと
同報告書では、老後生活に必要となる支出に関しては、総務省「家計調査」2017年版が使われていました。
前提として、夫65歳以上、妻60歳以上で夫婦のみの高齢無職世帯とされています。
その毎月の支出は26万4000円くらいになると示されています。
一方、老後のメインの収入となるのは年金です。
この例では、会社員として20歳から仕事をして定年まで働き、年金が約19万円、そのほかの収入が2万円弱で、約20万9000円が収入となっています。
この差額となる5万5000円が毎月足りないことになります。
ただ、この前提に当てはまらない家庭も多いでしょう。
例えば、この例は、妻は一度も働いたことがなく、結婚後はずっと専業主婦だった前提です。
今の若い世代で、このような夫婦はレアケースでしょう。
また、夫の65歳での退職後、老後は30年間、つまり95歳まで生きるという前提もあります。
現在、実際に95歳まで生きる男性は4人に1人程度です。
さらに、この算出根拠となっている月々の支出を確認すると、酒類と外食が約1万円、教養娯楽費が約2万5000円、交際費が約2万1000円などとなっています。
老後といっても60代、あるいは70代の前半で、まだまだ元気な人も多いので、これらは必要になるかもしれません。
しかし80代にもなれば、外食や交際費にそこまでのお金が必要な人のほうが少ないでしょう。
一方で、住居費は約1万4000円とされています。
これはおそらく持ち家を前提にしているのでしょう。
もし、自宅をもたず、賃貸住宅で暮らしている人であれば、住居費がずっと高額になる可能性はあります。
このように、いくつもの仮説を重ねたうえでの金額なので「2000万円」という数字そのものには、さほど意味があるものではありません。
ここでのポイントは、高齢化・長寿化により、だれでも95歳、あるいはそれ以上の年齢まで存命する可能性はあるという点です。
それにもかかわらず、年金だけでは生活費をまかなえない可能性があるということなので、年金以外にも備えなければなりません。
年金は1人につき1つです。
したがって夫婦の年金額は、夫と妻それぞれの年金を合計したものです。
?夫も妻も会社員なら、それぞれ「厚生年金+国民年金」をもらえるので、妻が専業主婦の場合より年金がずっと多くなります
— 老後なび (@rougo_navigate) October 13, 2021
「よく分からないけど、漠然と不安」…理解すべきは
ここで問題となるのが、多くの人は年金制度に対して漠然とした不安を感じているにもかかわらず、その仕組みを正確に理解していないということです。
逆に、制度の仕組みをきちんと理解していないがゆえに、不安が消えないということがあるのかもしれません。
公的年金だけでは老後資金が不足するとしても、その制度を正しく理解する必要があります。
自分の老後資金がどれくらい不足する可能性があり、それを補うためにはどういった自己準備をすればいいのか…。
また、自己準備をするために用意されている制度にはどのようなものがあるのか…。
こういったことを理解していれば「よく分からないけど、漠然と不安」ということは、大部分なくなるのではないでしょうか。
人は、何も見えない暗闇のなかでは怖くて歩くことができません。
しかし灯りをつけて周りの状況を見えるようにすれば、安心して歩みを進めることができます。
お金の状況も、見える化されていれば、たとえ不足する部分があるとしても、じゃあそれをどうしようかと、前向きに考えを進めることができるようになります。
ネットの声
「真面目に年金かけてきたのに生活保護の金額の方が多くなるなんてことやめて欲しい。」
「国会議員の議員年金を見直してください。与党も野党もいざ自分たちのことになると口を噤んでしまい議論の場にも出そうとはしませんよね。以前聞いた話によれば、国会議員は議員年金を10年間納めれば一般国民の2倍以上(400万円以上)もらえるとのこと。私たちは40数年納めても200万円前後ですよ。納得いきませんよね。国会議員は国民のために仕事しているんでしょ!自分たちのこともシッカリと議論・改定してください!」
「普通の生活ができるなら夫婦で月19万円あれば十分なはず。でも、どっちか一人でも施設に入ったらとたんに破綻するよなあ…と思う。」