77歳、朝寝て昼起きる。「なんの変哲もない日々」が愛おしい

文明が進み私たちの暮らしは便利になっているはずなのに、なぜか昔に比べて生きにくくなってきていませんか?

ロングセラー『定年後のリアル』シリーズの著者・勢古浩爾さんが綴る「なんの変哲もない日々」は、地味だけどなんだか自由。

「あの頃はよかった」と徹底的に懐かしむエッセイ『77歳、喜寿のリアル:やっぱり昔は良かった!?』より一部を抜粋して紹介します。

77歳のじいさんの日常

ここに書いたことが77歳のじいさんの日常…というより、わたしひとりの日常である。

こんな不健康な生活をしている77歳のじいさんが、そんなに多くいるとは思えない。

わたしはほぼ毎日、朝5時、6時まで徹夜し、それから寝る。

6年前、脳梗塞をおこしたあと、さすがにこんな不健康な生活は改善しなければ、と思ったのも束の間、いまでは元の木阿弥である。

起きるのはだいたい昼の12時前である。

時々、このルーティンが崩れることがある。

といっても朝の3時、4時に寝ることがある、というだけだが。

その場合、4時間ぐらい寝ただけで、目覚めることがある。

7時、8時である。

若い頃には、歳をとると目が覚めるのが早くて、眠れないようになる、と聞いていた。

どうしても起きちゃうんだよな、と。

いざ還暦になり、60代後半になっても全然そんなことがなかった。

みんな適当なことをいっていたんだな、と思った。

それがここ最近の睡眠4時間だ。

このことだったのかな、と思うが、わからない。

もうあと2、3時間は眠りたいのだが、だめである。

若いときのように、いやあ、寝たなあ、と思うことがない。

起きたあと、なにをするか

起きたあと、なにをするか。

まずコーヒーを淹れる。

ブラックのままだ。

朝食は以前は食パン1枚にハムエッグとヨーグルトだった。

最近はアマニ油を入れたヨーグルトだけにした。

降圧剤と血液サラサラの薬を3錠飲む。

大谷翔平のライブ中継があるときは、ちょっとだけ見る。

それまでの試合経過と大谷の成績がわかればいいのだ。

もう丸々、1試合見るということはない。

「大谷、1本打てよ」と願いを入れて、自転車で出かける。

試合がないシーズンオフは、この時間が省略される。

行く先はもう10年1日のごとく、図書館か、数少なくなった喫茶店か、ショッピングモールか、本屋(まだ市内に2店ある)である。

TSUTAYAが無くなったのが残念である。

昼食を摂る。

最近はもっぱら、「ゆで太郎」のもりそば(430円)一本槍だ。

以前は丸亀製麺の釜揚げうどん(340円)が好きで、それにかしわ天とれんこん天を入れたのを食べていたのだが、うどんは意外と塩分が多いのでそばにした。

なんの変哲もない日々である

夕方、帰宅する。

それから朝5時、6時まで、テレビや本や音楽やビデオ配信などで時間をつぶして徹夜をする。

一番落ち着く時間なのだ。

さあ、そろそろ寝るか。

わたしは埼玉に住んでいるが、東京に出ていくことはほとんどない。

出ていくときは、やはり馴染みのある神田が多い。

昨年1年間で2回ほどだったか。

人に会うためだった。

行けばかならずキッチン南海のカツカレーか、いもやの天ぷら定食を食べる。

上京の目的の半分はこれなのだ。

2、3か月に1回は、大泉学園の弟のとこへ行き、1泊する。

大体こんなところか。

書くこともなかったな。

基本、こういうおもしろくも悲しくもない1日が、365日つづくのだ。

識者(和田秀樹、池田清彦)たちは、歳をとったら、好きなことをして楽しく生きていくのが一番だ、というが、別段、楽しいことなどない。

好きなことといえば、好きなことをしているわけだが、そんな日々に格別の不満はない。

掛け値なし、なんの変哲もない日々、である。

ありがたいことにまだすることがある

徹夜して、さぞかし原稿書きにいそしんでいるだろうと思われるかもしれない。

そうであればいいのだが、そうではない。

ありがたいことに、こんな歳になってまで、まだいくつか仕事をもらうことがあるのだが、よおし、といった意気込みがないのである。

いや、ないわけではないのだが、それが日々に生きてこないのだ。

生来が怠け者だから、つい映画とか本とかYouTubeとか、録画した番組を見たりと、楽なほうに流れてしまうのである。

気負いはないが、もちろん、書くときはまじめに、真剣に書く。わたしにできることは、まじめに、真剣に書くしかない。

仕事を頂けるということは、日々の見えない張りになっていることは間違いない。

こんな歳の老人にまだ仕事をくれることに対して、報いなければならないという気持ちは当然ある。それがわたしが持てる唯一の意思である。

仲間たちとカラオケに行かない。ゲートボール(パターゴルフ)もしない。せっせと食べ歩きをしない。

飲み会とやらもしない。そもそも、仲間がいない。

だめだこりゃ、でしょ。

話にならん、とお思いでしょ。

しかたないのである。

こういうふうに生まれついてしまったのだから。

もちろん、はやりのソロキャンプもしないし、サウナにも行かない。

いったい、サウナが好きな老人って、いるのか。

基本、無趣味である。

それでもミステリー小説を読むのが好きである。

その他、歴史全般にも興味がある。

デジカメで写真を撮る。

映画を見る。

かようにわたしの生活は簡単・簡素である。

ネットの声

「経済的な心配で頭の中が一杯にならない状況が前提でしょう。
その上で趣味に生きようと力むでもなく、何等かの達成感を求めるでもなく、さりとて自棄、捨て鉢になるでもなく、本当に淡々と日々噛み締めながら生きることは案外難しいのかもしれない。
人間関係も徐々に断捨離して本当に心を許せる人だけと付き合うのが理想的なのかもしれない。」

「何気に読んでみて面白かった。そのまんまな感じが。こういう生活したいなぁ。本を読み老けたり、たまに町で好きなもの食べたり、映画を片っ端から見るとか。でもお仕事少々でこれができるって結構裕福な方なのでは?現実的にはもっと擦り切れた感じの生活になっちゃいそう。”したくないことはしない”からいい感じに見えるのかも。”できないからしない”になったら辛いかもね。」

「この勢古浩爾さんは、ご自身の生活に充実感を感じていないようですね。でももし不満があるなら、自分が良かれと思う生活スタイルに変えりゃ良いのに、とも思います。自虐的な愚痴を言うぐらいだったら改善すればいいのにね。ただ私は、ここに書かれたような生活はすごく楽しそうな生活に思えるし、今の仕事を引退したらそういう生活を満喫してみたいです。定年退職したら、毎日夜更かしして漫然と怠惰に過ごすなんて、考えるとワクワクが止まりません。」


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