N-BOXの激烈な大ヒットの裏で…かつてのトップセラー「フィット」が大不振のホンダに打開策はあるのか
ホンダの軽自動車「N-BOX(エヌボックス)」が売れまくっています。
全軽自協(一般社団法人 全国軽自動車協会連合会)と自販連(一般社団法人 日本自動車販売協会連合会)調べによる、2021年度(2021年4月から2022年3月)の新車販売台数で、N-BOXは軽自動車・登録車を含めた全乗用車の総合第1位を獲得しました。
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フィットは苦戦
N-BOXの2021年度における販売台数は19万1534台。軽自動車ジャンルに限れば7年連続の1位記録となっていて、その勢いはコロナ禍の中でも留まることを知りません。
次いで2021年度の販売台数2位はトヨタのコンパクトカー・コンパクトSUV「ヤリス」(ヤリス/ヤリスクロス/GRヤリス合計で19万1414台)、3位にトヨタのコンパクトハイトワゴン「ルーミー」(13万4321台)がランクインしています。
4位以下も軽自動車やコンパクトカーが続いており、小型モデルの人気の根強さが実証されています。
ホンダの他のモデルはどうでしょうか。
小型モデルでは、コンパクトミニバン「フリード」が7万3661台、コンパクトSUV「ヴェゼル」が5万9674台とどちらも堅調な売れ行きを示しています。
一方で、かつては販売台数1位の常連だったコンパクトカー「フィット」が苦戦中です。
2021年度におけるフィットの販売台数は5万5947台。前年度比でみると59.3%まで落ち込んでいます。
現行型フィットは2020年2月にフルモデルチェンジした4代目。
デビューからまだ2年が経過したばかりで、モデル末期という訳ではありません。
首都圏のあるホンダカーズ販売店の販売スタッフは「現在フィットを購入するのは初代や2代目フィットからの代替ユーザーが多く、新規ユーザーはあまりいません」と内情を教えてくれました。
かつてフィットを支持していたファミリー層は、現在N-BOXやフリードなどのスライドドアモデルに興味を示すとのこと。フィットが話題にのぼることは非常に少なくなったといいます。
みんな「いいクルマだ」と高評価するけど……。販売台数がなぜか伸びないフィット。「なんで売れないの?」と急きょ調査団を結成。ご覧の実燃費を軽く出すヤリスも登場。写真のように後席跳ね上げも得意なフィットの魅力も再確認しますよ。ベストカーに掲載中じゃ。(ベストカー編集部 馬場) pic.twitter.com/1FBq6tlxtM
— ベストカー (@bestcarmagazine) November 12, 2021
歴史は繰り返す!?
上位クラスのユーザーを取り込み大ヒットした「フィット」と「N-BOX」
フィットは2001年に初代モデルがデビューしました。
価格を抑えた小型車ながらクラスを超えた広い室内を持ち、スタイリングもこれまでにない新鮮な印象でした。
燃費にも優れ走行性能も十分に確保するなど、これ1台でマルチに使えるクルマとして老若男女から支持を集めたのです。
上位クラスのシビックやアコードのユーザーも取り込み、瞬く間にトップセラーに。
フィットは、当時としてはホンダ最速となる11年9か月で、累計販売台数200万台の快挙を達成しています。
そんなフィットの記録を上回ったのが、2011年12月に初代モデルがデビューしたN-BOXでした。
N-BOXは背高で四角い高効率なスタイリングを持ち、軽最大級の広い室内を確保。
女性ユーザーを強く意識したかわいらしいデザインが多かったライバル車に対し、プレーンなデザインとすることで、男性ユーザーの支持も獲得しました。
十分な走行性能と低燃費性能、さらにクラスを超えた小型車クラス同等の安全性能を有するなど、これ1台で十分にファーストカーとして使える実用性を有したのです。
それはまさに、10年前に初代フィットで大成功した手法そのものといえます。
N-BOXはデビューからわずか9年5か月で累計販売台数200万台を達成。
フィットの最速記録を更新したのでした。
そんなあおりを受け販売台数を減らしたのがフィット自身だったことに、どこか皮肉な運命の流れを感じずにはいられません。
フィットが今年8月にマイナーチェンジ ヤリスやノートに比べ売れない現状 RSも追加して巻き返しなるか (ベストカーWeb)
フィットが売れない原因は、家電のようなデザインにつきる。
ホンダのデザインは、根本的な見直しが必要だと思うが…。— D-555 (@mororon7815) April 11, 2022
フィットの巻き返しに注目
前出のホンダ営業スタッフによると、フィットからフィットへ代替するユーザーは年齢層も比較的高く、このままでは先細りが予想されると危機感を募らせています。
他方で、フィットのライバル車となるコンパクトカーのヤリスや日産「ノート」などは順調に販売台数を伸ばしており、コンパクトカーの需要は十分にあることが証明されています。
しかしホンダの場合、身内のN-BOXやフリードなどに顧客を奪われてしまい苦戦しているのです。
通例で考えると、デビューから2年が経過した現行型フィットはそろそろマイナーチェンジを実施するタイミングを迎えます。
現状を打破する刷新となるか、フィットの巻き返しに注目したいところです。
ホンダの車って全体的に見ると他のメーカーより値段設定が高い印象がある。
NBOXも144万円~だし、フィットも155万からでヤリスよりも高い。ホンダは小さい車しか売れないって言われるけど、小型車の値段を上げた結果、中大型の値段もスライドして上昇。
そして売れなくなったって事かな??— 【日本車】応援TV局長のつぶやき (@japancarTV) April 10, 2022
ネットの声
「エヌワンターボに乗ってましたがフィットの先代の中古にしました。エヌワンはエンジンも俊敏で気には入っていたのですがなにしろ軽なので4人しか乗れません。それが不便で普通車にしたのですが軽の定員の制約はこの記事では問題になってないようですね。もうひとつ、私見ですが現行のフィットはデザインがあまり良くありません。先代のフィットの方が個人的にはずっと良いデザインだと思いますので新車のフィットの選択肢は全くありませんでした。同じ理由で今のフィットを選ばない方も案外多いような気もします。」
「現行フィットも道具としては良く出来た車だと思うのだが、N-BOXもまた非常に良く出来ており、市街地中心なら何の不便もないし乗り心地もいい。本体価格は変わらないので、一見するとフィット(ガソリン車)がお買い得にも思えるのだが、税金や保険など買った後のランニングコスト、それとリセールバリューを考えるとN-BOXがいいね!ということになってしまうんだろうと思う。フィットには更なる磨きをかけてほしい。ガソリン車でお得な装備の特別仕様グレード(なるべく安く!)を投入してはどうだろうか?」
「初代はデザインがシャープでよかった。モデルチェンジの時はおそらくもっと車内を広くとか荷物をたくさん載せられるようにみたいなユーザー意見を反映したのだろう。ただその手のユーザーレビューはコンパクトカーではあまり売り上げの参考にならない。狭いと感じたユーザーは次はもっと大きい車を選んでしまうからだ。車体を規制サイズ目一杯にして膨らませてしまうよりデザインを重視すべきだった。」