テレワークが浸透している中でホンダが原則出社に舵を切った理由とは

ホンダがテレワークやめ原則出社に踏み切る真意

「Hondaとして本来目指していた働き方を通じて変革期を勝ち抜くために、『三現主義で物事の本質を考え、更なる進化をうみ出すための出社/対面(リアル)を基本にした働き方』にシフトしていきます」。

ホンダは2022年4月、国内営業部門の従業員向けに以上のようなメールを送付しました。

テレワークから三現主義に回帰

出社を前提とした働き方へと転換する意義を強調する内容です。

ホンダの三現主義とは「現場、現実、現物」からなり、創業者の本田宗一郎氏の時代から受け継がれてきた、いわば企業理念。

対面でのコミュニケーションを重視した働き方で、社員にホンダらしさを発揮してほしいというわけです。

ホンダや関係者への取材などによると、一部の経営陣の提案をきっかけに2021年末の時点ですでに出社を基本とする業務ルールを設計していました。

しかし、2022年初めから新型コロナウイルスの感染状況が悪化し日本では蔓延防止措置が取られたため、導入を延期。同措置が解除されたことに合わせて、改めて今回の制度導入に乗り出したのです。

全社が制度の対象で、3回目のワクチン接種が完了する時期を見定めて5月から段階的に始めるということです。

ホンダ広報は「部門ごとに対応は異なる」としていますが、「対面のコミュニケーションを活性化するとともに、イノベーションの創出を促すことが狙いだ」と理由を説明しました。

たとえば、日本本部などの営業部門が集まり、数千人単位が働く埼玉県和光市の和光ビルや白子ビルは5月下旬にも段階的にこの制度を導入します。

介護や病気、育児などの事情があり、所属長が承認した場合を除き、原則週5日間すべてで出社を求めます。

「経営陣は現場を理解していない」

新型コロナの流行が長引く中で、テレワークを基本とする働き方を徐々に変える企業は増えています。

ただ、従来の出社を前提とした働き方へ戻すことについて、社内では不安の声が上がっています。

あるホンダ社員は「働き方改革が進みテレワークの定着も進む中、ホンダは真逆に動くのか」と疑問を投げかけます。

別のホンダの中堅社員は「在宅による日々の効率化と対面の合わせ技なら理解できるが、経営陣は現場を理解していない。優秀な学生の中からホンダを希望リストから外す人が増えてしまう」と嘆きます。

ホンダの対応は異質?

同じ業界の日産自動車は「在宅勤務や時差出勤などを活用して感染対策をとっている」と回答。

トヨタ自動車も「コロナ禍では在宅勤務が可能な職場でのより一層の在宅勤務を推進している」といい、東京や名古屋での4月末時点での出社率は4割以下にとどまるそう。

こうして見ても、ライバルたちと比べてホンダの選択は異質ともいえます。

ホンダは現在、三部敏宏社長の指揮の下、2040年に世界で売る新車をすべて電気自動車(EV)か燃料電池車(FCV)にする「脱エンジン」目標を掲げます。

カーボンニュートラルや自動車の知能化などへの対応を迫られているのです。

「100年に一度の大変革期」と言われる自動車業界での生き残りを図る中、目標達成に向けて社内の意思統一が求められるところです。

ネットの声

「ホンダの経営陣の考え方も理解できるし、こういう動きが出ることは予想できた。問題は、会社側の都合を働く側がどう捉えるか。テレワークに馴染んだ労働者の思考は今後の人材確保にも影響は大きい。今回のテレワーク普及は自然発生というよりはコロナウィルス対策という必要性に基づく突発的な発生原因だった。「感染防止」は十分に説得力のある普及理由だったといえる。どちらの勤務方法が経営に対しより効果的・効率的かを考えるには各社で独自の検証が必要だと思う。ホンダと同じ動きは他社でも発生するのではないか。」

「海外では大手IT企業でも、テレワークをやめようか、という動きになっているが、日本では盲目的にテレワークが新しい、テレワークをしない企業は時代に逆行している、という論調が多い。その論調は評論家や学者など、あまり組織的に働いていない、ソロワーカーな専門家が言っている気がする。自分もテレワークをしたことあるが、すごくやりづらかった。技術的にもまだテレワークをスムーズにできる環境にないと思う。職種や仕事の内容などで、テレワークのほうがやりやすくメリットがあるところはそうすればいいし、デメリットがあるところは、出社するなり、他の手段を考えればいい。野外の現場や営業などそもそも出来ない職種もあるのだし。テレワークの是非ではなく、画一的な思考が問題なのでは。」

「各社のコメントを読む限りでは、テレワークを継続するかどうかの判断基準は「感染防止を続ける必要があるかどうか」となっている。そうなると、ホンダの方針は異質とは言えない。もしホンダの方針が異質だと言いたいのであれば、各社のテレワークを継続する判断基準が「感染防止」から「多様な働き方、働き方の見直し」に移っている、という一文をどこかに入れるべきだろう。この記事をそのまま読み解くと、コロナ禍が終われば他社もテレワークを縮小する可能性があるように見えてしまう。」



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