
2020年5月に年金制度改正法が成立しました。
その改正には、公的年金の受給開始年齢の75歳までの繰り下げなど、既に話題になっている点がいくつかありますが、
その中にはiDeCoや企業年金などの確定拠出年金に関する法改正も含まれています。
これは、勤労年齢の高齢化を踏まえた企業型確定拠出年金(企業型DC)やiDeCoの加入者の拡大を狙ったものといえます。
いずれも今すぐではなく、2022年からの実施となりますが、これについてご紹介します。
Contents
確定拠出年金の加入可能年齢の引き上げと受給開始時期の上限の拡大
まず第一のポイントは、企業型DCおよびiDeCoの加入可能年齢の引き上げと、それらの老齢給付金の受給開始時期の上限の拡大です。
以下の図を見れば、勤労年齢の高齢化のための布石だということは分かるでしょう。
企業型DCの加入可能年齢の拡大
企業型DCへ加入できるのは現在65歳未満の人ですが、2022年5月からは70歳未満まで拡大されます。
これは将来の70歳までの企業における勤労年齢の延長を狙ったものといえます。
iDeCo加入可能年齢の拡大
iDeCoに加入できる年齢の上限は現在60歳未満ですが、2022年5月から65歳未満に拡大されます。
企業における定年が60歳から65歳まで延長されつつある状況を踏まえたものといえるでしょう。
なお、iDeCoに加入するには国民年金の被保険者である必要があります。
現在、国民年金には第2号被保険者は65歳未満まで加入可能ですが、第1号・第3号被保険者の場合は60歳未満までとなっています。
そのため、それらの方々がiDeCoに加入するためには、65歳まで国民年金に任意加入する必要があります。
老齢給付金の受給開始時期の上限の拡大
現在、企業型DCとiDeCoの老齢給付金の受給開始年齢は60歳から70歳までの期間から選択できます。
しかし、2022年4月からは、60歳から75歳までの間となります。
これも将来75歳までの勤労が可能となるための布石と考えることができます。
例えば、iDeCoの老齢給付金の受給開始年齢を75歳として、受給期間を10年とすれば、85歳まで受給できるようになります。
企業型DC加入者は勤務先の労使合意に基づく規約がなくともiDeCoに加入できるようになる
もう1つのポイントは、企業型DCに加入している人がiDeCoにも加入する場合、
それぞれの加入額などに関する企業における労使合意に基づく規約が必要でしたが、2022年10月からはそのような制約がなくなります。
本来は以下の表に示すとおり、企業型DC、または企業型DCと確定給付型に加入している方の場合、
それらとiDeCoの掛け金の合計額がそれぞれ5万5000円、または2万7500円以内であればiDeCoに加入できるのが原則でした。
ただ、それに加えて「規約」が必要との制約があったため、iDeCoの加入者を抑制していました。
その制限が撤廃されるので、iDeCoの加入者が増えることが考えられます。
着実に加入者は増加
公的年金、企業型DC、iDeCoの加入者数を比較すると次のとおりです。
- 公的年金:6762万人(100)(2020年3月31日現在)
- 企業型DC:748万人(11.1)(2020年9月30日現在)
- iDeCo:175万人(2.6) (2020年10月31日現在)
iDeCo加入者数は、2017年3月31日時点を85万人とすると、2020年10月時点では175万人で、2年半の間にほぼ倍増しています。
それでも公的年金加入者総数6762万人の3%弱にすぎませんが、年金制度の改正により、今後は企業型DCも含め、iDeCoの加入者数が伸びていくことが予想されます。