日本×スコットランドは日本の勝利に終わりました。夢のベスト8進出です。

4トライのBPも獲得。特に2トライ目はプロップの稲垣啓太のトライに注目が集まりました。
3つのオフロードパスの末に得たボールを倒れ込んでのトライ…。魔法のようなトライに早くもトライオブザイヤーの声がかかります。
そして、もう一つの注目は、稲垣啓太が笑わないことなのです。

そこにいたから…

華麗なトライはどうして生まれたのか…

「おそらく、そこにいたからトライ取っただけの話」

明快な答えを藤井雄一郎強化委員長が素っ気なく話しています。

今どきの言葉で言えば“塩対応”ですね。


13日のスコットランド戦で、プロップ稲垣啓太が奪った代表初トライに対する回答です。

この発言を反復するうち、「そこにいた」ことの凄みを感じるのです。

念のために補足すると、同強化委員長の発言は以下のように続きます。

「彼はフィットネスもスキルも高い選手。ゲームのシステム上、コンタクトする場所にいつも立っている。オフロードでつないで忠実にサポートした結果」

稲垣啓太に対する最大級の賛辞でしょう。

華麗なオフロードパス

前半25分、スコットランド陣右中間のラックからSH流→SO田村とフラットに近いパスでつながれ、続く受け手のフッカー堀江の前には、相手No・8トムソンが間近に迫っていました。

普通であれば、ここでスローダウンさせられるところです。

しかし、そこが堀江の凄いところ。

少し左にずらしてボールを受け、コンタクトしたやいなや右に360度回転したのです。

相手にはタックルを食らいながらも右手一本のオフロードでムーアへ…

ムーアの片手オフロードは速くて低かったのですが、FBトゥポウは両手でしっかりキャッチ

FBホッグを右ステップで交わして、最後は後ろから迫ってきたCTBハリスに捕まりながら、左をフォローした稲垣にラストパス

これが見事に通ります。

勢い込んで走り込んでいた稲垣、ボールを受けた瞬間は止まっていたように見えました。

そのまま相手タックルを引きずりながら、数歩前進して倒れ込みます

ボールが出てから、わずか10秒間のトライショーでした。

オフロードパスは一朝一夕では成り立ちません。

ラグビーの基本は両手でのパス

これは、楕円形のボールをできるだけ、受け取りやすくするためです。

オフロードパスは、相手のタックルを受けながらのパスですから、態勢も不安定…しかも片手でのパスになります。

8月10日のパシフィックネーションズ杯の米国戦。

その試合では、流→堀江→リーチと2本のオフロードがつながるトライが生まれています。

世界に先駆け2月4日に代表活動を開始。

「ファンデーション1」と命名された期間に、基礎スキルの反復練習を繰り返した成果が出たトライだったのです。

この時を上回る3本のオフロードパスをつないだばかりではありません。

その1人がロックであり、フィニッシュしたのがプロップという事実が素晴らしいのです。

ジョセフジャパンで「スモー」の呼称を与えられているFW第1、2列の選手。

相手の突進を止めるのが本職ですから、プレーするエリアが限定されています。

したがってトライが生まれる場面では下働きが多くなり、プロップの選手が決定機でボールを持つチャンスはかなり限定されるのです。


そこで、最初の疑問…

ではなぜ、稲垣はあの位置を走り込めたのでしょうか

それは、試合翌日の14日、日本代表のリーチ主将が会見で語った言葉で解決しました。

「試合に出ている選手でルールがある。もし前に出てストラクチャーから離れてボールが前に出たら、自由にプレーしようというルールをつくった」

というのです。

ラックからボールが出る場面、稲垣は田村、堀江、ムーアと並んださらに外にポジショニングしていました。

オフロードパスによって一気にゲインラインを突破し、一度はボールのある位置から離されたのですが、そこで「ルール」が生きたのです。

稲垣は一気に加速し、トゥポウからラストパスをもらったのです。

もし、稲垣がフォローしなかったらトゥポウは倒され孤立していたでしょう

当然、勝ち越しトライが生まれることはなかったのです。

稲垣はいつ笑うのか…

代表初トライを決めた稲垣啓太…


そのときもチーム全員からもみくちゃにされながら、笑っていません

ここで笑わなければいつ笑うのか…。

これはたぶん笑わないでしょう。

すでにネタにもなっていますし、本人すら「笑ったことはありません」と言っているくらいですから。

稲垣のトライは、W杯決勝翌日の11月3日に東京都内で行われる、ワールドラグビーの年間表彰式で、「トライ・オブ・ザ・イヤー」の候補に挙がるのは間違いありません。

もし受賞が決まったら、タキシード姿の稲垣は、どんな表情を見せるのでしょうか。

晴れがましい席でもやはり笑わないのか

それを見るのが楽しみで仕方ないのは自分だけ??

ネットの声

「このトライはひとつの結果。この結果を得るまで、彼は今までどれだけサポートに尽力し走ってきたのだろう?ほとんどボールが回って来ることの無いサポートを、それでもその来るかも知れない一度のために。『なんでそこにいたのか』なんて失礼な質問だと思う。そこにいるのがFWの仕事なんだから…」

「4本目の福岡選手の独走トライの場面でもフォローに走って1番先に抱きついたのが堀江選手で二番目が稲垣選手。あの独走でもフォローのために1列目の選手が忠実に走ってるのが今の日本ラグビーなんだなと感じた。」

「スコットランドの本気のオフェンスは、日本を遥かに凌駕する圧力と速さを見せた。もはや土台が違う。時折そう見えたけど、全く気圧されずにハードコンタクトと練り上げたサポートで渡り合った日本は、間違いなく実力をもって上位国を下したと思う。それには、稲垣をはじめとしたFW陣の身を削るような献身があってこそ!」

試合を重ねるごとにテーピングが増えて、稲垣選手がミイラ化しているような…。でもがんばって欲しい!

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