これは英断!?アイリスが中国から国内生産に切り替えたワケ

アイリスが中国から国内生産に切り替えた理由

ロシアの侵略戦争開始以降、日本経済は沈下の一途。

円安や、ガソリン価格の動向は見通しが立ちません。

人件費が安い海外生産主流となっていた状況も変わりはじめました。

アイリスオーヤマは、5月に他メーカー同様、製品の値上げを発表しましたが、それだけでは吸収できない製品について、国内での生産開始を決めたのです。

空気を運ばせるな

最近は、家電メーカーとしても、徐々に名が通り始めたアイリスオーヤマ。

彼らが扱っている製品は家電だけではありません。

同社の母体となっているホームセンターにある製品すべてを何らかの形で手掛けているのです。

ホームセンターで扱う代表的な製品に、収納ボックスがあります。

大きなプラスチックケースは、あまりにも嵩張るので、売り場面積の大きなホームセンター以外、ほとんど扱うところはありません。

逆に、ホームセンターといわれるところには、必ず置いてあります。

今の時代、この収納ボックスがないと、家の中が、整理ができないと言っても過言ではないでしょう。

箪笥の代わりにクローゼットの床や、上部棚にこの収納ボックスが使われることが多くなりました。

しかし、メーカー視点で見ると、この収納ボックス、なかなかの難物なのです。

というのも、中身が空っぽだからです。

効率のよい物流は、空荷をいかにして防ぐかがポイントになります。

要するに、中身がぎっしり詰まっているモノの方が効率的。

ところが、収納ボックスは、この空間にこそ意味がある製品。

このため、数量の割にスペースをとります。

倉庫然とした、天井も高いところでないと並べることができませんし、輸送効率も悪いのです。

物流の鉄則は「空気を運ぶな」。

しかし、収納ボックスは空気と言える典型的な製品なのです。

ロジスティックの隣に工場を

普通、工場を作る時は、土地があり、電力に恵まれ、材料が運び込みやすく、従業員を集めやすい。

これをまとめたのが、いわゆる工業団地です。

そして近くにロジスティックを構築。

しかし収納ボックスは違います。

ロジスティックを基準に工場を建てるのです。

収納ボックスの生産は、技術的には容易です。

樹脂ペレットを入れるサイロ、専用の金型、そして樹脂を熱で溶かし、金型に送り込む射出成型機があれば、製造できます。

かなり狭いスペースでも対応することができるのです。

大変なのは、保管です。

そのため、製造したらそのまま、店に納入したいところです。

そしてできる限り、輸送距離は短くしたい……。

もうお分かりでしょう。

アイリスオーヤマが国内生産に切り替えた50品目はすべて収納ボックス関連なのです。

今までは、中国でふんだんに作り、日本へ持ってきていたのですが、エネルギー費が高騰したため、輸送費が跳ね上がり、海外生産のメリットがなくなったのです。

どうやって、国内生産をスムーズに立ち上げたのか?

そして、もう一つのポイントは、超短期間で国内生産に切り替えたことです。

新型コロナがまん延したとき、シャープが1カ月でマスクの国内生産を始めました。

それを可能にしたのは、一番用意に時間のかかるクリーンルームが余っていたからです。

同時期に国内生産をしようとしたアイリスオーヤマは、クリーンルームを作るために時間を要し、シャープより4カ月遅れました。

今回、ネックになりそうなのは、成型機です。

余っていれば、短期で生産切り替えができるし、そうでなければ、状況にもよるが、半年くらいかかることもあります。

しかし、今回はアイリスオーヤマの埼玉県深谷工場ですぐに製造できるとのこと。

アイリスオーヤマへ、成型機が余っていたのでしょうか。

問い合わせると、「違う」とのことでした。

では、どうしてできたのかというと、元々の成型機の稼働率が低かったので、対応できたとの回答でした。

普通、成型機ラインは、休まず稼働することが当たり前。

成型機を止めるのは、同じ金型で樹脂色を変えたりする時だけです。

金型内に残っている色樹脂を、新しく成型したい色樹脂で押し流すのですが、これには時間がかかります。

例えば、ちょっと複雑な金型の場合、黒樹脂のあと、透明樹脂で成型しようとしたら、最低でも数時間、場合によっては十数時間押し流す必要があります。

このような場合は、生産効率が一気に落ちます。

それを避けるために、金型はできる限りシンプルにつくるのです。

このため、生産は連続で、休まずというのが成型機の基本。

しかしアイリスオーヤマは工場稼働が70%だそう。

これは社の方針なのだそうです。

ここは一般的なメーカーとは異なるところです。

この余裕分があったから、今回の上乗せ分を吸収することができたということでしょう。

余裕をもった生産体制にしていたことで、状況変化に対し柔軟な対応を産んだわけです。

そして、オーナー企業の真骨頂とも言えるのが、アイリスオーヤマの決断と対処の迅速さ。

これが大手メーカーだったら、例えば、ウクライナ戦争が1年後に終わる場合、2年後に終わる場合などと、と綿密にシミュレーションをしたりするのです。

しかし、その通りに行くのかは不明。

このような場合、先を読んで正確に動くことより、タイミングよく動くことが大切です。

また完全を期すとプランは大きくなる一方です。

むしろ、手持ちの材料で対応できるなら、とりあえず手を打つのがベターでしょう。

シェイクスピアの悲劇「マクベス」のセリフではありませんが「やってしまってことが済むモノなら、さっさとやってしまった方がよい」を地で行くような話です。

国内で価格があわず、海外で生産していた製品の一部が、日本に戻され、価格が合うことになってしまった状況です。

今まで、品質、技術で国内で作りますというのはありましたが、価格のために国内生産というのは、あまり例がありませんでした。

国内生産回帰の第一歩となるでしょうか。

ネットの声

「政府の無茶な賃上げ要求とかに対応しなければならないから企業も大変ですよね。今の政府のやる経済対策など当てにならないから結局企業が先行して努力するしかないですよね。ものを作らない国は滅びますよ。」

「こういう早い判断ができるから伸びるんだろうな。しかも、国内回帰なんて、早くやればやっただけ利益出るし、話題にもなるし。」

「他の企業も早く国内にシフトしてほしい。雇用が生まれ、税金も入ってきてその町が活性化するのでいいことしかない。」

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