ブラック企業もドン引き、「自衛隊」の不遇すぎる労働実態。

新型コロナウイルスの感染者が急増している自衛隊。

国防や災害派遣、集団生活の現場ではソーシャルディスタンスをとるにも限界があり、自衛官は常に危険と隣り合わせ…。

発信者は、各媒体で人気の「連載コラム」の著者に聞くシリーズ、第1回はWEB媒体『日刊SPA!』(扶桑社)で連載中の「自衛隊ができない100のこと」の筆者・小笠原理恵さん。

右派でも左派でもなく読者層は一般人

自衛官といえば国防の要。

彼らの待遇について、読者の中には「どうせ公務員なんだから高い給料もらっているんでしょ?」と思う人がいるかもしれません。

「自衛隊ができない100のこと」ではそんな幻想を見事に打ち砕いています。

彼らの待遇は、ブラック企業の経営者が青ざめるほど悲惨なものだったのです。

最初に「自衛隊ができない100のこと」について説明すると、特徴的なのが読者層です。

一般的に、国防をはじめ「自衛隊」に関心を寄せるのは右派で、「労働問題」は左派というイメージが何となくあるでしょう。

しかし、実態は大きく異なるようです。

「読者層はビジネスパーソンやOL、主婦など一般の人が多いです。左派にしてみれば、たとえ関心の高い労働問題であっても自衛隊の存在そのものに反対な人が多いためスルーし、一方で右派も『自衛隊はどんな理不尽にも耐えられる強い精神が必要だ』『たとえどんなにつらかろうが、自衛隊が泣き言なんか言うわけがない』というスタンス。右派からも左派からもなかなか理解は得られませんでしたが、一般の方々は『自衛隊ってそんなにきつい職業だったのか…』『うちの職場もブラックだけど自衛隊ほどじゃない』と興味を持ってくれたのです」

小笠原さんは連載が始まったキッカケをこう振り返ります。

「今から10年以上前、SNSで元自衛隊のパイロットと知り合ったのですが、その方は北朝鮮の不審船対応の任務に就いていました。その時は北朝鮮側が撃ってくるかもしれないという緊迫した状況でしたが、防衛出動がかかっているわけではなかったため、武器を持たず丸腰だったそうです。彼らは仲間たちと遺書まで書いて覚悟を決めて任務にあたっていました。そうした話を聞いていくうちに、自衛隊の劣悪な労働環境や待遇を知り、誰かが声を上げなければいけないと思ったんです。その後、扶桑社の編集者を知人に紹介してもらい、2016年に連載がスタートしました」

小笠原さんが、それほどまでに驚愕したという自衛官の労働実態とは、一体どんなものだったのでしょうか。

極寒の体育館で雑魚寝…休憩や食事もひっそりと

「自衛隊ができない100のこと」で最も反響があったエピソードは、自衛隊の「災害派遣、雑魚寝問題」です。

冒頭の写真は、ある自衛官がこっそり撮影し提供してくれたものだそうですが、本人が特定される恐れもあるため、日時や場所は伏せて掲載しています。

「この時期は冬でしたが、災害派遣で駆けつけてくれた自衛官たちは、寒い体育館で布団もなく、男性同士で体を温め合いながら寄り添うように睡眠をとっていました。なぜそんなことが起きるかといえば、自衛官が被災地へ向かう際、自衛隊トラックには人命救助の道具を優先して積み込むため、彼らの寝袋を積むスペースがないからです。また、被災地に向かう道は舗装されていないガタガタ揺れる山道であることも多いのですが、座席ではなく荷台の側板への乗車で、座骨神経痛を患っている自衛官も多いと聞きます」

そもそも災害は戦争ではないため実弾が飛んでくる危険性はありません。

そうならば自衛官は観光バスや新幹線で被災地近くまで行っても構わないはず。

在日米軍は物資や人を運ぶために民間業者を使う予算が十分あるようですが、自衛隊ではそれも難しいというのです。

「自衛隊は余剰のバスやトラックを持っていません。もし、自衛官が自衛隊車両での移動に不満を漏らせば、『今まで自衛官たちが全員やってきたことなのに何でお前は耐えられないんだ!』と上官から叱責されるでしょう。さらにそのことで他の自衛官たちも連帯責任をとらされてしまうと、『お前のせいで俺たちまで巻き添えだ!』といじめに近い構造が発生する可能性もある。かつての日本軍のような精神論的な考え方が今も自衛隊には根強く残っているのでしょう」

休憩を国民に見られないように

被災地、あるいはそこへ向かう道中のSAやPAで休憩をとる場合も、彼らはひっそりと休まなければならないようです。

「自衛隊など制服公務員は、自分たちが休憩をとっている姿を国民に見られたくないと思っています。なぜなら、制服を着たまま飲食していたり、休憩中についウトウトしていると、その姿を写真に撮られ『サボっている』『職務に専念していない』とクレームが入る可能性もあるからです。そのため、国民の命を守ってくれている自衛官たちは、人目につかない場所で隠れながら休憩や食事をとらざるを得ないのです」

民間企業の場合、労働基準法第34条では、8時間を超える労働で最低1時間の休憩をとることが義務づけられています。

バスの運転手は連続2時間以上の運転で20分以上の休憩が必要とされているのです。

基本的に公務員は労働基準法の対象外のため、労働争議は認められていません。

しかし、事実上の組合(職員団体)は存在しています。

自衛隊員や警察官、消防士などはそもそも組合を結成することもできないのです。

残業代・休日手当はなし…自衛隊と刑務所の違いとは?

現在、自衛官たちの賃金は、自衛官候補生(2~3年の任期制隊員)の初任給が14万2100円、一般曹候補生(部隊の中核である「曹」候補)は17万9200円。

その他に、ミサイル対応1100円、(比較的危険度の低い)不発弾の捜索や発掘250円~1万0400円、潜水器具を使った作業350円~1万1200円などの手当が1日あたりつくこともありますがが、金額の幅が大きいのです。

また、普段はそれぞれの職業に就き、召集がかかれば任務に赴く「即応予備自衛官」は、訓練では1日1万0400円~1万4200円もらえます。

一方で、いざ本番の招集では訓練時の6割程度しかもらえない場合もあり、実戦の手当の方が安いという矛盾も指摘されています。

「よく自衛官は衣食住が無料という誤解がありますが、あらかじめ給料から経費を天引きされて俸給が決められ、残業代や休日手当もありません。曹クラスの自衛官も53歳で定年を迎えますが、彼らの再就職は簡単ではなく、年金受給開始の65歳までの収入補填(若年給付金制度)は曹クラスでは毎月10万円程度で生活に困窮する人もいます。しかもこの若年給付金制度は、収入が一定基準を超えた場合は返納しなければならず、いわば“働いたら負け”の制度でもあるのです」

さらに、「こんな安月給で、長期休暇の一つでもとらないとやってられない!」と思っても、今度は面倒な手続きが待っているのです。

「お盆の帰郷や新婚旅行で遠方に出かける場合、休暇許可申請手続きが必要になりますが、この手続きがとにかく細かい。利用する路線名、発着時間、乗車駅、降車駅、昼食時間などすべての旅行日程を記載せねばならず、書類に不備があれば何度でも突き返されます。万が一、そのまま脱柵などしようものなら、家族や友人宅にまで捜査が及び、かかった捜査費はすべて請求され、規律違反で処分も下されます。民間企業と違い、自衛隊は退職届を出してもすぐに退職が承認されず、場合によっては年単位で交渉を重ねる必要があります」

果たして自衛隊と刑務所の違いはどういったところなのでしょうか。

「刑務所は、受刑者が脱走しないように壁上の柵が内側(敷地側)を向いているのに対し、自衛隊基地は、外敵からの侵入を防ぐため柵が外側に向いています。それ以外はほとんど同じと思っていただいて構いません」

ネットの声

「自衛隊への一部の厳しい目が活動面での自粛を推進しています。災害時、あるいは有事には必要不可欠な存在です。処遇の改善はぜひしていただきたいです。」

「安全保障に対する、金の使い方が根本的におかしい。思いやり予算やF 35にはバンバン使って、隊員の待遇をケチってどうするのか。先の大戦では死者の三分の一が餓死だった。間違っている事を間違っていると認めずに、現実を直視せずに美化する風潮を放置するからこういうことになる。」

「災害派遣へ行って自衛隊が倒れたら誰が活動するのかね。その辺を考えて自分たちの寝袋くらい上層部がちゃんと持っていかせる指示しないとね。まぁ記事が本当のことならね。単にほんの一部分だけを抜き出して書いていなければの話だけど。」

新型コロナウイルス渦の中、自衛官たちは雨の日も風の日も、国防と国民のために尽くしてくれています。

自衛隊員の正義感が報われることを願ってやみません。

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