ビートルズの未発表曲!?ザ・ケイファーズの「クライング・フォー・ザ・ムーン・インステッド」

ザ・ケイファーズが「クライング・フォー・ザ・ムーン・インステッド」発売

2020年12月にダウンロードが開始されると同時に、ビートルズ研究家の藤本国彦氏が「ビートルズの未発表曲かと思った」と語ったザ・ケイファーズの「クライング・フォー・ザ・ムーン・インステッド」。

インターネット上でも曲のクオリティーの高さに加え、メンバーが顔を出さない“謎のバンド”ということも相まって大きな話題となりました。

あなろぐ盤がリリース

あれから1年4か月が過ぎ、4月23日にはザ・ケイファーズの名曲がアナログ盤でリリースされることが決定したというのです。

「本当にうれしいニュースです。それも初めて『クライング・フォー・ザ・ムーン・インステッド』を聴いたときに、“これはぜひアナログ盤で聴いてみたい”と思ったものでしたので」

そう話してくれたのは、ザ・ケイファーズを発見して一般に知らしめた藤本氏。

今回のアナログ盤発売について、「ビートルズ初期、それもまだジョン、ポール、ジョージ、リンゴの“ファブ4”が、4人だけの演奏で録音していた頃の作品を思わせるものです。

そして、やはり、ビートルズの未発表曲のようだと思わせるメロディーの良さが素晴らしい」とその魅力をあらためて語りました。

藤本氏が太鼓判を押す良質のメロディーに乗って、1960年代に世界を魅了した若かりし頃のジョンとポールを思い起こさせる希望にあふれた明るい歌声が絶妙なハーモニーとなって流れ出てくるのです。

そして、ビートルズに影響を与えたとされるバディー・ホリーの「クライング・ウェイティング・ホーピング」の間奏を連想させるギターソロが続きます。

しかも、そのフレーズを「もしも若きジョージが弾いたらこうなりそうだ」と、マニアも思わず微笑む、たどたどしくも初々しいタッチで聴かせます。

トム・ハンクス監督作品に

さらに今回は「クライング・フォー・ザ・ムーン・インステッド」に加えて、弾けるようなマージー・ビートの「SO LITTLE GIRL(ソー・リトル・ガール)」がカップリングされました。

「この曲は“ビートルズマニア”で知られるトム・ハンクスが監督した映画『That Thing You Do!(邦題:すべてをあなたに)』の同名の主題曲を連想させる曲です。『That Thing You Do!』はアメリカ人のマージー・ビートに対するオマージュというところ。『ソー・リトル・ガール』は、そうした『That Thing You Do!』のエッセンスをうまく取り入れた作品。サビのコーラスの掛け合いが聴かせどころで、そこで思わず“うまい”とうなってしまいます」

トム・ハンクスといえば、1993年の「フィラデルフィア」、94年に「フォレスト・ガンプ」でアカデミーの主演男優賞を2年連続で受賞した大俳優。

そして、自他共に認めるビートルズの大ファンでも知られています。

64年に全国ネットで放映された「エド・サリバン・ショー」でビートルズの強烈な洗礼を受けた7300万人のアメリカ人の一人で、「ジョン・レノンの大股で仁王立ちして歌う威厳ある姿に感動した」という発言は有名。

ハリウッドを代表する映画人でありながら、「A HARD DAY’S NIGHT(邦題:ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!)」が“最も好きな映画”と語るほどのマニアなのです。

「ビートルズを知らない若い世代の人たちに聞いてほしい」

「That Thing You Do!」は、そんなトム・ハンクスのビートルズに対する愛情と思い入れがあふれた映画です。

当然、その主題歌は聴いて思わず指を鳴らしたくなるような、ハイテンポでメロディアスな完全なるマージー・ビートに仕上がっています。

これもいわばビートルズの未発表曲のようなナンバーです。

そんな「That Thing You Do!」を思わせる「ソー・リトル・ガール」は、ミドルテンポの「クライング・フォー・ザ・ムーン・インステッド」のカップリング曲に選ばれました。

めりはりの効いた選曲であるのと同時に、今回のアナログ盤を両A面と言うべき出来にしたのです。

藤本さんは、この1960年代初頭をほうふつとされる2曲のアナログ盤を「できるだけ多く、ビートルズを知らない若い世代の人たちに聞いてほしいと思います」と言います。

「なぜなら、僕らが何も知らずにビートルズのオリジナルだと思って『のっぽのサリー』や『ロックン・ロール・ミュージック』、『ツィスト&シャウト』を聴いて、リトル・リチャードやチャック・ベリーを知り、アイズレー・ブラザーズを知って、エルビス・プレスリーやバディー・ホリー、エヴァリー・ブラザーズと出会ったように、この曲を気に入った若い人たちなら、必ずビートルズにたどり着くと思うからです。ケイファーズを入口にしてビートルズを知るというのも非常に面白い。21世紀ならではの裾野の広がりを感じます」

日本人が作った優れたオマージュを先に知り、ビートルズを知る。

それも、1962年に「LOVE ME DO」で英国レコード・デビュー果たしてから今年でちょうど60周年を数えながらも、今でも世界の音楽ファンを魅了し続ける偉大なバンドの永遠性を象徴する現象でしょう。

現代でも色褪せないビートルズの魅力が詰め込まれたアナログ盤が4月23日の「レコード・ストア・デイ」に発売されるというのも御一興。

しかも、レーベルによると、アナログ用にミキシングをし直し、シングル仕様のカッティングを施したことで、昔のジュークボックスで聴くような、ダウンロードでは絶対に体験できない迫力あるサウンドに仕上がっているそう。

1年4か月前にネットで曲を耳にして気に入ったという方々ならもちろん、「マージー・ビートって何?」という若い世代にもおすすめです。

4月23日にはかつての音楽ファンのように、発売日にケイファーズのアナログ盤を求めて、ぜひとも近所のレコード店に駆けつけてほしいものです。

ネットの声

「褒めたいのは分かるが、同じ楽器、同じような曲調だとしても、「未発表曲かと思った」なんてビートルズと同等に扱う表現は専門家としてどうかと。60年代にマージービートが注目を集めて以来、この手のバンドがどれだけ出てきた事か・・・。」

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