法規制はかかってないけど軽自動車が64馬力の自主規制を行っている理由とは

法律でもないのにずっと64馬力! 軽自動車のパワー「自主規制」が30年以上も撤廃されないワケ

軽自動車の64馬力は業界による自主規制

軽自動車というのは、言うまでもなく日本独自のレギュレーションに基づいたコンパクトカーです。

その規格は全長3.40m、全幅1.48m、全高2.00mというボディサイズに収まっていることと、エンジンの総排気量は0.66リッター以下であることとなっています。

大昔に遡ると、定格出力が規定されていたこともあったのですが、出力そのものに制限はありません。

しかし軽自動車の最高出力は64馬力(47kW)が上限だと認識しているユーザーが多いはず。

最近、日産と三菱から登場した軽EVにしても最高出力は47kWとなっているのです。

排気量制限を受けないEVも「64馬力規制」を守るくらいなのですから公的なレギュレーションと思いがちですが、じつはこの規制は業界による自主規制なのです。

事実、スズキの軽自動車用3気筒ターボエンジンを搭載したケータハム・セブン170の最高出力は85馬力となっています。

ケータハムという尖ったブランドとはいえ、自動車メーカーとしての保証を考慮した上で、ここまで馬力を上げることができるというわけです。

64馬力寄生は1987年から

軽自動車の(実質的には)ターボエンジンが軒並み64馬力なのは、技術的な限界ではなく、十分に余力を残したうえで自主規制によって抑えているに過ぎません。

そのような最高出力に関する自主規制の歴史は思ったよりも古いのです。

事実上、64馬力規制がはじまったのは1987年です。

その年、スズキが初代アルトワークスを発売した。軽自動車として初めてDOHC(スズキはツインカムと表記していた)とターボチャージャーを組み合わせたエンジンの最高出力が64馬力だったことに端を発します。

1987年といえば、軽自動車の規格が、いまのレギュレーションからすると前の前といった時代。

ボディサイズは全長3.20m、全幅1.40mであったし、エンジン排気量も0.55リッター以下でした。

エンジン排気量が2割ほど少なかった時代の自主規制が、いまだに残っているというのは不思議というか、不自然ともいえます。

電動化が進む上で自主規制を積極的に見直す必要はないといえる

ちなみに、軽自動車の排気量が0.66リッター以下となったのは1990年のことで、その際にボディサイズが全長のみ3.30mへと伸ばされています。

初代アルトワークスの誕生から、この規格改正までもう少し時間があれば64馬力規制を見直すという動きにもなり得たのかもしれません。

しかし、ただでさえ排気量アップによって軽自動車のメリットである優遇税制に対しての批判(増税)が盛り上がっていた時期に、最高出力の自主規制を撤廃しようというのは藪蛇になり兼ねません。

業界的には無用な刺激を避けることもあって、排気量がアップしても最高出力の自主規制を続けたというのが本音でしょう。

結果として1998年の規格改正によってボディサイズを拡大した際にもエンジン排気量は手つかずでしたし、排気量が変わらないのだから64馬力規制も維持されました。

それが電動化の進んだ現在まで続いているといったところなのです。

64馬力の自主規制は続く?

もし自主規制を撤廃するチャンスがあるとすれば、軽自動車税が7200円から10800円に増税された2016年でした。

しかし、軽自動車の主役がスポーツモデルだった20世紀ならまだしも、後席スライドドアのスーパーハイトワゴンが主流の21世紀においては64馬力規制を撤廃するメリットは、さほどユーザーベネフィットとはならないでしょうし、メーカーにもメリットは多くありません。

仮に64馬力規制がなくなったとすれば、いくら燃費性能が重視される時代だとしても、結果的にメーカー間では馬力競争をすることになります。

グローバルな商品開発が求められる時代に、シュリンク傾向にある日本市場専用モデルの開発に、きつい言い方をすれば無駄なリソースを割くのは軽自動車を開発している全メーカーが避けたいはず。

こうしたマインドは、軽自動車のエンジンは0.66リッター以下にするという規格を改正する必要性を感じないというメーカーのコンセンサスにもつながっているといえます。

一部のモータージャーナリストなどは軽自動車の排気量を増やすことで、もっと熱効率のいいエンジンにできると主張していますが、電動化時代において軽自動車用のエンジンを新開発するというのも各メーカーとしては避けたいところでしょう。

日産、三菱の軽EVの登場に続くように、スズキとダイハツは軽商用EVを2023年度にローンチすることを発表したばかり。

さらにホンダも2024年前半には100万円台の軽商用EVを発売するという計画を発表しています。

このように軽自動車のフル電動化が進んでいくのが既定路線である限り、あえてエンジン排気量の拡大や64馬力の自主規制を積極的に見直す必要はないといえます。

結果として64馬力規制はいつまでも残り続けるのではないでしょうか。

ネットの声

「なんか自主規制っていかにも日本ぽい。役所の目も伺っているところもあるだろうし、話題のプラック校則にも繋がる日本の悪い風潮。軽自動車はスーパーハイト系をはじめ安全装備も含めて重くなってるから、低回転からトルク重視の方向で最高出力は追わなくて良いと思う。でも軽スポーツはその限りではなく、乗り味やセッティングに応じて数馬力程度アップさせても良いと思う。もちろん他のジャンルでも必要なら良いと思うけどね。」

「軽自動車から馬力の自主規制外して、今後BEV化が進んで行くと、軽自動車の規格が、車体寸法だけになってしまい、出力モンスターな軽自動車も可能になりますね。
普通自動車は、排気量毎の税率が、HEV、PHEV、BEVと排気量は小さく車は税率が低い。
そろそろ排気量による自動車税制全体の見直しをしないといけないと思う。」

「根本的な話として、乗用車の税金が暫定で値上げされている!のを、まず見直されなければならない!!
軽自動車が優遇されているのではない、乗用車が重税されている事をまず知らなければならない!
車に税を課すのは、車が無くても問題ない都心部の感覚であり、田舎は車が無いと生活が出来ないからで、都心部の収入多い者より地方の賃金少ない者から搾取する手段としか思わない。
都心部でも維持費が安いなら、2台3台持つ者も増えるんじゃない?そっちの方が、税金収入として良いんじゃ無いかなって思う!」



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