
個人事業主が法人化する法人成り その目安となる所得とは?
個人事業主として働いていると、事業の所得はすべて個人の所得となり、すべて個人の所得税の対象となってしまいます。
場合によっては「法人化」したほうが節税できることも発生します。
また個人事業主という形態は、法人と比較したときのデメリットも存在。
そんなときに考えてみたいのが「法人成り」です。本記事では、法人成りとは何かとその目安となる所得について記載しています。
Contents
法人成りとは?
個人事業主(自営業)で事業を営んでいる人が、事業を引き継いで株式会社や合同会社を設立することを指して「法人成り」と呼びます。
法人とは人ではないが法律上人格を認められる社会的な存在という意味で、株式会社、合同会社、労働組合、私立学校などが法人にあたります。
法人となることで法律行為などを行うことができるようになります。
法人成りのメリット・デメリット
法人成りは登記を行う必要があり、その際手数料も発生します。それでも行いたい法人成りにはどのようなメリットがあるのでしょうか。
また、デメリットは存在するのでしょうか。
法人成りのメリット
法人成りをした場合には下記のメリットを得ることが可能です。一定以上の事業所得があれば、節税面で大きな魅力があります。
社会的な信頼を得ることができる
法人という立場になるためには、お金をかけ時間のかかる手続きをしなければなりません。
それができているということで、ビジネス上での信頼感の向上に繋がります。
また、資金調達などの場面でも銀行等の信用情報が向上するため役に立ちます。
節税の効果がある
節税面ではいくつかのメリットが発生します。
①給与所得控除が適用できます。後述する条件によって個人事業主の事業所得よりも節税となります
②消費税の納付が法人成りから2年間免除されます
③役員報酬の損金算入として、生活に使用するお金の一部を経費として計上することができます。
出資した範囲での有限責任となる
法人成りした場合には法人のビジネスに対して負う責任は、基本的に出資した範囲が対象となります。
事業継承が可能に
事業をやめたくなった場合や子供などに譲りたくなった場合、法人化していることで継承が可能となります。
事業から手を引くときの選択肢を増やすことが可能です。
また、事業を軌道に乗せて、売却するという手法をとることにもつなげることができます。
法人成りのデメリット
法人成りについて、デメリットも存在しています。下記がデメリットとして挙げられます。
- 事務的な手続きが増える
- 設立の際に、法人登記費用が必要
- 赤字でも住民税が発生する
- 従業員の社会保険、労働保険を負担する必要が発生する
法人成りの目安となる事業所得の額
所得控除の幅によっても前後しますが、売上から経費を引いた個人所得が600~800万円見込める場合、
法人成りしたほうが個人事業主として働き続けるよりも節税の面で有利となります。
この事業所得額が毎年実現可能であれば、法人成りを検討する契機となります。
具体的な数字でいうと、個人事業主の所得税は所得が695万円~900万円の場合、税率は23%です。
この上に地域で多少の差があるものの、約10%の住民税がかかり、合計33%が税率となります。
個人事業主の所得と所得税の率
330~695万円 約20%
695~900万円 約23%
900~1800万円 約33%
法人化すると、払わなくてはならない税金は法人税・住民税・事業税の3つとなります。
この3つを合算した税率は以下の通りのため、所得が600~800万円の場合が法人成り検討を行う目安となるのです。
この場合も住民税は地域によって前後するため、若干の差異はあります。
事業所得と税率(合計)
400万円以下 約22%
400?800万円 約25%
800万円超 約35%
また、対外的な信用が必要となった場合も法人成り検討のタイミングです。
事業拡張に伴う資金の調達のために法人化するということもあります。
個人事業主の事業が拡大して所得が年間600~800万円となる場合、法人成りして法人化したほうが、節税面で有利となることがあります。
この所得額を目安として法人成りを検討するとよいでしょう。