命に関わる便秘…マジメに知りたい肛門の基礎知識

「便秘に悩んでいる人」が知らない肛門の基礎知識

肛門科医が解説「スッキリ排泄」に要る3つの力

テレワークによる長時間のデスクワークなどの影響で、お尻に関するトラブルを訴える人が少なくありません。

『痛み・かゆみ・便秘に悩んだら?オシリを洗うのはやめなさい』を上梓した、約10万人のお尻を診てきた肛門科医の佐々木みのり氏が、正常な排便をするのに必用な知識を解説。

お尻のトラブルで気をつけたいのが便秘

お尻のトラブルには、痔やかゆみ、匂いなど、さまざまな悩みがありますが、とくに多いのが便秘です。

便秘を改善するために、食物繊維の多い食事をとったり、ヨーグルトを食べたり、下剤を飲んだりと、多種多様な方法が用いられます。

しかし、間違った方法を続けてしまうと、改善できないので注意が必要です。

まず、便秘を理解するうえで、知っておいていただきたいことがあります。

それは、「腸と肛門は密接に関係している」ということです。お腹(腸)は、便の「製造」(つくる)と「運搬」(はこぶ)の工程を担当しています。

出口(肛門)は、できあがった便の「排出」(出す)工程を担当しています。

つまり、お腹(腸)は便を「つくって運ぶ」仕事、出口(肛門)は便を「出す」仕事をしているというわけです。

腸と肛門はつながっていますが、役割はそれぞれ違うので、切り離して考えてください。

診察するときは、どの工程がうまくいっていないのか、お腹(腸)なのか、出口(肛門)なのか、あるいは両方なのかをチェックします。

それによって便秘の分類をして、治療の方法を変えています。

出口の肛門が詰まると、腸も「渋滞」する

私たちは、毎日何かしら食べたり飲んだりしています。

ダイエット中でも、少食でも、水分くらいはとるでしょうし、まったく食べない人はいないでしょう。食べたモノは胃で消化され、十二指腸・小腸へ運ばれ、そこで必要な栄養素が吸収され、残ったものは大腸へ送り込まれます。

大腸では、そこからもまだ吸収できそうな栄養素をカラダに取り込み、腸内細菌も手伝って「便らしく」なっていきます。

できあがった便は肛門から排泄され、カラダがスッキリします。これが本来の状態です。

便秘は、このスッキリ排泄ができないという症状。

さらに、便は排泄されるように毎日つくられています。

便を出さないということは、その分カラダの中に溜まっていくというわけです。

便を出しきれずに出口である肛門が詰まると、その前にある腸も渋滞します。

そのため、何日も便が出ないと、お腹がパンパンに張ってきたり、食欲が低下したり、最終的にゲップが出るようになったり、吐き気を感じたりします。

中には本当に吐いた人もいます。

便の流れがどこで滞っているのか、お腹(腸)なのか、出口(肛門)なのかを把握することはすごく大切です。

すべき治療が、まったく違うからです。

ところが、先ほどお話ししたように、お腹の便秘ばかりが有名なために、出口が詰まっているのにそのことに思い至らず、一生懸命、お腹に効く下剤ばかり飲んでいる人がたくさんいます。

出口が塞がっているのに、下剤を飲んで便をどんどん出口に誘導したって、便通が改善されることはありません。

むしろ、そうなることで余計、出口に便が詰まってしまいます。その結果、亡くなる高齢者もいるのです。

歳を取ると、腸の便を運ぶ力や出口の便を出す力が弱くなるうえ、硬い便になりやすいので便が詰まりやすくなります。

さらに、腸がもろく破れやすくなるので、便が詰まって腸がパンパンになってしまうと、腸が破裂してしまう場合も……。

死に至った21歳女性の症例報告も

便を詰まらせて死に至るのは、高齢者に限った話ではありません。

1998年、21歳の女性が便秘により死亡したと医学誌で症例報告がありました。

女性は1年前から便秘で、たまに腹痛などの症状も起きていましたが病院に行くことなく、市販の便秘薬を飲み続けていたそうです。

死亡する2日前までは普通に仕事をし、死亡前日から仕事が休みだったため家にいて、風邪の症状と腹痛を家族に訴え、寝たり起きたりをくり返し、朝食以外何も口にしていなかったそうです。

夕方、家族がトイレの前で死亡している女性を発見しました。

解剖の結果、死因は「腸内に大量の便が約7キロ近く溜まったことによる腸閉塞」でした。

詰まった便の塊を指でかき出そうとしたのか、女性の人差し指と中指には便がついていたそうです。

肛門内には真っ黒な便が充満し、直腸付近には水分をまったく含まないコンクリートのような便の塊が数十センチも溜まっていたと報告されています。

便による腸閉塞で体内への血液供給が不十分になり、ショック状態が起きたことで亡くなりました。

22年間にわたり約10万人のお尻を診てきた経験から、健康的な排便に必要なことは、大きく次の3つにまとめられます。

1.便の有無がわかる(感じる)……便感知力
2.便意がある(行きたくなる、もよおす)……共腸力
3.便を出せる(排便)……排出力

これらのうち、どれか1つが欠けても、正常な排便ができなくなります。それぞれ、どのような力なのかをご紹介します。

正常な排便に必要な3つの力

1.便感知力

お尻に不調を感じる方を診察していると、肛門や直腸に大量の便があることをまったく感じていない人が多くいます。

肛門付近に便を溜めすぎると肛門の感覚がマヒして、鈍感になっていくのです。

そもそも、肛門に下りてきた便を感じないと、排便行動は起こりません。排便行動が起こらないと、出口にどんどん便が溜まり、便秘になってしまいます。

2.共腸力

すっきり排便できている人は、便を感知したら便意が起こります。

つまり、便意(共腸力)の原動力は便感知力なのです。

そして、便意があるとは、腸の蠕動(ぜんどう)運動が起こって、腸が便を押し出そうと協力してくれているということです。

この力を借りて排便すると、便がスッキリ出やすくなります。

スッキリ排便ができていない人は、便があっても便意が起こらないことがあります。

肛門付近に便を溜めすぎているため、肛門の感覚がマヒして、まったく便意が起こらないのです。

無理矢理排便すると、「共腸力」を利用できず「出残り便秘」が生じやすいのです。

3.排出力

最後に、便の排出です。排便する際、力をこめていきみすぎている方をしばしば見かけます。

これは、かえって逆効果になります。

もちろん、軽く「いきむ」ことはスッキリ排便するために大切ですが、基本的に排便は「いきみ」という意識下の行動と「排便反射」の共同作業によって起こります。

蠕動運動により出口に便が下りてくると、直腸がさらに動いて便を押し出します。

同時に、肛門の筋肉である内肛門括約筋(ないこうもんかつやくきん)は弛緩します。

これら一連の反射を「排便反射」と呼びます。反射は、意識的に止めることができません。

つまり、カラダは便を出そうと自然に勝手に働くわけです。

排便反射を利用すれば、いきみすぎることなく、勢いよく便が出てスッキリ排泄できます。

「便意がある」ということは、「便が出口まで下りてきて、今にも出ようとしている」ということなのです。

ただし、排便反射は長時間続くわけではありません。反射が起こっている「まさに今そのとき」に便を出さないと、反射がなくなってからいきんで無理に排便することになります。

その結果、お尻に負担がかかってしまい、いぼ痔などができやすくなってしまうのです。

便意を我慢するから便秘がはじまる

なぜ便がスッキリ出ずに残るのでしょうか。

それは、健康的な排便に必要な力の3番目、排便を我慢するからです。

3つの力で人間が意識的にコントロールできるのは、「排便力」しかありません。そのため、排便を我慢すると、便秘が生じてしまうのです。

「私は、行きたいときにトイレに行って出しています」と反論する人もいと思いますが、トイレを我慢した経験は過去に誰にでもあるでしょう。

社会生活を送るうえで、いつでもどこでも排便できるわけではありません。

そのため、私たちは、成長の過程で排便をコントロールすることを覚え、適切な時間に、適切な場所で、排便するようにしています。

しかし、便意をもよおしているのに我慢してしまうと、「トイレを我慢するのが当たり前の肛門」になってしまいます。

出ようとしていた便は、肛門に挟まったままというわけです。

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