肛門見えても…実はすごい機能を持っていた…

肛門の「とてつもない機能」を知っていますか?

唾液はどこから出ているのか?

目の動きをコントロールする不思議な力、人が死ぬ最大の要因、おならはなにでできているか?

「深部感覚」はすごい…。人体の構造は、美しくてよくできている――。

外科医けいゆうとして、ブログ累計1000万PV超、Twitter(外科医けいゆう)アカウント8万人超のフォロワーを持つ著者が、人体の知識、医学の偉人の物語、ウイルスや細菌の発見やワクチン開発のエピソード、現代医療にまつわる意外な常識などを紹介し、人体の面白さ、医学の奥深さを伝える『すばらしい人体』が発刊されました。

実弾と空砲

「実弾と空砲の区別がつかない」。

肛門の手術を受けたことがある私の知人は、自分の悩みをこう表現しました。

肛門の機能が落ち、おならと便の区別がしにくくなったのだ。表現はユニークだが、全くもって笑いごとではないのです。

肛門は、精密機械のようによくできた臓器です。

「降りてきたのは固体か液体か気体か」を瞬時に見分け、「気体のときのみ排出する」という高度な選別ができるからです。

固体と気体が同時に降りてきたときは、「固体を直腸内に残したまま気体のみを出す」という芸当もできるのです。

こうしたシステムを人工的につくるのは不可能でしょう。

おならと便を識別できないと、生活はとても不便になるでしょう。

なぜなら、毎度トイレに行って便座に座らないとおならができなくなるから。

日頃トイレに行きづらい職業の人なら、オムツが手放せなくなってしまいます。

このような話をすると、必ず少数の人から、「私の肛門はたまに気体と液体を間違える」と指摘を受けます。

確かに肛門が健康であっても、水のような液体の便は、気体と出し分けるのがやや難しいこともあるでしょう。

しかし、その頻度は高くないはず。

せいぜい、お腹を壊して下痢気味のときくらいでしょう。

「たまに」ならご愛嬌なのです。

それはともかく、肛門の素晴らしい機能は他にもあります。

直腸に溜まった便を「無意識に」せき止めておき、好きなときに排出できるという機能です。

もし直腸に少しでも便が降りてくるたび、肛門に力を入れて漏れるのを防がなければならないとしたら、どうでしょうか。

とても生活は成り立たないでしょう。

ゆっくり眠ることすらできないはず。

肛門には、出口を常に締めている括約筋が二種類あります。

一つは外肛門括約筋、もう一つは内肛門括約筋。

外肛門括約筋は、自分の意図で動かせる筋肉、すなわち随意筋です。

一方、内肛門括約筋は不随意筋、つまり意図とは関係なく動く筋肉です。

肛門をぎゅっと締めるよういわれれば、従うことはできるはずです。

このとき動かすのは外肛門括約筋(と恥骨直腸筋)です。

もちろん、直腸の容量に限界はあるため、十分な量の便が降りてきて直腸の壁が引き伸ばされると、排便反射によって内肛門括約筋が弛緩します(ゆるむ)。

このとき、意識的に外肛門括約筋を弛緩させれば排便できるのです。

乳幼児は、これらを調節する機能が未熟なため、反射的に排便してしまいます。

一方、成人は大脳皮質からの指令によって外肛門括約筋を収縮させ、排便しようとする無意識の反射に意識的に逆らえるのです。

これらの高機能な筋肉と、極めて繊細なセンサーが、私たちの日常生活を支えています。

普段の生活では肛門のありがたさを実感しづらいが、実は替えのきかない優れた臓器なのです。

肛門の外傷は必ず防ぐべき

性的な目的で肛門にコップや人形などを挿入し、取れなくなって病院を受診する、というケースは比較的多い。直腸や肛門を傷つけて出血したり、穴が開いて重篤な腹膜炎になったりすることもあります。

手術が必要になるケースも少なくありません。

肛門への異物挿入については、これまで多数の研究報告があります。

患者は二十~九十歳代と広い年齢層に及び、男性は女性の一七~三七倍多い、とされています。

挿入された異物は家庭内で使用する日用品が多く、ボトルやグラスが約四二パーセントを占めます。

その他、歯ブラシやナイフ、スポーツ用品、携帯電話、電球などの報告もあります。

他にも、遊び半分でエアコンプレッサーの空気を同僚の肛門に吹きつけ、相手を死亡させるという事故が何度か報道されたこともあります。

いずれにしても非常に危険な行為です。

また、肛門を使用した過剰な性交渉によって肛門や直腸に怪我をする事例も少なからずあります。

特に、直腸の表面はやわらかい粘膜でできているため、乱暴に扱うと裂けたり出血したりするのです。

膣に比べると、肛門や直腸の壁はデリケートなのです。

肛門や直腸をひどく損傷すると、治るまでしばらく使えなくなります。

その場合は、手術で人工肛門をつくり、便の通り道を変更しなければならなくなってしまいます。

無事に治療ができても、術後に肛門の機能が完全に回復せず、後遺症が生じることもあります。

肛門の機能が落ちると、日常生活に甚大な影響を与えるというのは、前述の通り。

もちろん、こうした事態が起こるのは肛門外傷だけではありません。

直腸がんや肛門がんなど、直腸や肛門の病気に対する手術後にも肛門の機能障害は起こりうるのです。

病巣を切除するためには、肛門周囲の筋肉や神経を傷つけざるをえないことがあるからです。

また、交通事故やスポーツ中の事故などによる脊髄損傷も、こうした神経障害を引き起こすことがあります。



すばらしい人体 あなたの体をめぐる知的冒険 山本健人(著) ダイヤモンド社 (2021/9/1) 1,870円

坂井建雄氏(解剖学者、順天堂大学教授)推薦!

「まだまだ人体は謎だらけである。本書は、人体と医学についてのさまざまな知見について、魅力的な話題を提供しながら読者を奥深い世界へと導く」

人体の構造は、非常によくできている。汚い例になってしまうが、私たちが「おなら」が できるのは、肛門に降りてきた物質が固体か液体か気体かを瞬時に見分けて、「気体の場合のみ気体だけを排出する」というすごい芸当ができるからである。

著者は、学生時代に経験した解剖学実習で、大変驚いたことがある。

それは、「人体がいかに重いか」という事実だ。脚は片方だけでも10kgほどあり、持ち上げるのに意外なほど苦労する。

一見軽そうな腕でも、重さは4、5kgである。想像以上にずっしり重い。

私たちは、身の回りにあるものの重さを、実際に手にしなくともある程度正確に推測できる。

だが不思議なことに、自分の体の「部品」だけは、日常的に「持ち運んでいる」にもかかわらずその重さを全く感じないのだ。

一体なぜなのだろうか?

その答えを求めると、美しく精巧な人体の仕組みが見えてくる。

このような人体のしくみを探求する学問、それが医学である。

医学は自然科学の一分野であり、物理学、化学、地学、数学、生物学・・・と並び称される学問として、人体の構造や機能、疾病について研究を積み重ねている。

医学や人体に関する知識は、身近であるにもかかわらずあまり学ぶ機会がない。

学校でも、 ごく一部が理科の授業で扱われる程度で、多くの人が「医学や人体の最も面白い部分」を学ぶことがない。

外科医けいゆうとして、ブログ累計 1000 万 PV超、twitter(外科医けいゆう)アカウント8万人超のフォロワーを持つ著者が、人体の知識、医学の偉人の物語、ウイルスや細菌の発見やワクチン開発のエピソード、現代医療にまつわる意外な常識などを紹介していきます。

健康情報として医学を取り上げるのではなく、サイエンス書、教養書として、人体の面白さ、医学の奥深さを伝え、読者の知的好奇心を満たす一冊です。

ネットの声

「肛門がこれ程高性能だったのかと驚いた。当たり前と思っていることが事故や病気で当たり前で無くなって初めてそのありがたみに気付くってことは良く聞くけど、このような記事でありがたみに気付かせてくれると大事にしなきゃと思えていいですね。」

「シャワートイレって気持ちいいけど、皮膚が弱いのかかぶれちゃって、一日中痒くて痒くて本当に大変でした。お薬塗ってなんとか治したけど、それ以来シャワーやめて、すっかり快適。大切にしております。」

「人間の身体ってホントに良く出来ていますよね。人様の性癖に文句はつけたく無いですが、回復が困難になる程こう門を痛めつけるのは出来るだけ止めましょう。」

 

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