高齢者の寝すぎは良くない!?65歳で横になっていいのは一日何時間まで??

健康を保つためにもよい睡眠は大事。

睡眠のトラブルは生活習慣の改善で解決することもありますが、病気が隠れていることも。

身近な原因を遠ざけ、日常生活に支障がある場合は、早めに医療機関で受診を。

心不全や睡眠時無呼吸症候群、前立腺肥大などに注意したい

布団に入ってもなかなか寝つけない、夜中に何度も目が覚める、眠りが浅い、早朝に起きてしまう……など、年齢を重ねるとともに増えてくる睡眠の悩み。

「加齢によって体内時計がくるいやすく、睡眠サイクルがはっきりしなくなります。一方で病気が隠れている場合もあるので、まず、病気かどうか、はっきりさせることが大事です」と常喜医院院長の常喜眞理さん。

夜中に何度もトイレに起きる人も多い。

「膀胱に尿をためる力が衰えると、夜間頻尿になります。男性の場合は前立腺肥大が隠れていることがあります。気になる人は泌尿器科で受診を。気がつかないうちに、心臓の機能が低下して心不全になっている人もいます」

心不全になると、日中は体に水分がたまるのだが、夜はその水分が尿となるため頻尿になる。

「夜間頻尿があり、夕方になると足がむくむという人は心不全の可能性があるので、内科受診をおすすめします」

足がむずむずして眠れない「むずむず脚症候群」や「睡眠時無呼吸症候群」なども睡眠トラブルを招く。

「家族から、寝ている間の強いいびきや一時的な呼吸停止を指摘された場合は、かかりつけ医や耳鼻科、呼吸器科で相談しましょう。睡眠時無呼吸症候群は肥満の人に多いといわれますが、特に女性は更年期以降、いびきをかきやすくなるので注意が必要です。自宅で調べることができる簡易検査も普及しています。昼間、強い眠気に襲われるという人も医療機関で受診したほうがいいと思います」

スマホのブルーライト、昼寝、夜遅い食事も不眠の原因に

病気ではない場合、どのように改善していったらいいのだろう。

「寝る前にスマホを使っていたり、明るい部屋で過ごしていたりすると寝つきが悪くなります。日中の活動が少ない、昼寝の時間が長すぎる、寝る前に食事をする、カフェインの含まれる飲み物や飲酒(深酒や寝酒)なども不眠の原因になります」

冒頭のような睡眠の悩みがある場合は、「まず生活習慣や睡眠環境を整えて、改善できるか試みましょう」と常喜さん。

「朝は決まった時間に起きて日光を浴び、朝食をとることで体内時計がリセットされます。スマートフォンのブルーライトは覚醒作用があるので、寝る2時間くらい前から使わないようにしましょう。LED照明も同様なので、眠る前に過ごす部屋はなるべく暗いほうがいいですね。夕食、特に炭水化物は遅くとも寝る2時間前までにとる。体をあたためると眠りにつきやすくなるので、寝る1~2時間前に、ぬるめのお風呂に入るといいでしょう」

寝室は暑すぎず、寒すぎない温度に。冬は18度以上、夏はエアコンを使う。寝間着も寝具もリラックスできるものを選びたい。

「日中はウォーキングや軽い筋トレなどの運動をし、昼寝をするのであれば30分以内に。夜は眠くなってから寝床に入ることが大事です。夜中に目が覚めてしまったときは寝床から出て、暗い部屋でリラックスして眠くなるのを待ちましょう」

生活習慣を改めても睡眠トラブルが解決しなければ、かかりつけ医に相談したり睡眠専門クリニックで受診を。

「夜間の不眠が続き、日中に精神や体に不調を感じて、生活に支障がある場合、不眠症と診断され、その人の状況に応じて睡眠導入薬が処方されます」

睡眠導入薬には眠りに関係するホルモンを利用して自然な眠気を強くするものと、脳の神経活動の機能を低下させるものがある。

「最近は覚醒作用のあるホルモン・オレキシンを抑えるタイプがメジャーです。悪夢や金縛りといった副作用が出ることもありますが、習慣性も依存性もありません」

数多くある「眠りをサポートする」とうたうサプリメントを利用するのは?

「試してみてもいいと思います。サプリの効果は1カ月くらい続けて飲んでみて判断を。ただ、甘さを感じるものは血糖値などに影響することがあるので、主治医と相談してからにしましょう」

睡眠時間は6時間程度に…8時間以上の睡眠はリスク大

一日どのくらいの時間、眠るのがいいのだろうか。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」によると、必要な夜間睡眠時間は年齢によって変化し、個人差はあるものの45歳では約6.5時間、65歳では約6時間。

成人後は20年ごとに30分程度の割合で減少していく。

常喜さんは、「長く寝ようと思うことのほうにリスクがある」と言う。

「65歳以上では、一日のうち横になっている時間が8時間を超えると体の機能が衰え、死亡率が高くなるというデータがあります。9時間以上の睡眠はアルツハイマー病の発症リスクを高めるという研究報告もあります。昼寝や寝つくまでの時間、目覚めてから起き上がるまでの時間も合わせて、体を横たえるのは一日8時間までに抑えたいものです」

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