人生100年時代だからと慌てて老後の仕事や趣味を見つけても、周囲に対する遠慮や人間関係のもつれ、ストレスやミスなどから、長続きしないことが多いはず。

また、「何もしない老後」に陥ってしまうと、最悪の場合、世間に迷惑をかける問題高齢者になりかねないことも、指摘されています。

それではどうすればいいのでしょうか。

解決策の1つはごく単純に言えば、「普通のシニアが幸福にやり遂げられる可能性が高い仕事や趣味」を選ぶこと。

それは、意外なところにあるのかもしれません。

最底辺の職業と思っている人は多い

紺色の作業着に身を包み、ヘルメットをかぶって、赤い誘導棒を振り回す。

雨の日も風の日も現場に立ち、車や人を誘導し続ける…。

「交通誘導警備員」は、数あるシニア向け職業の中でも最も過酷に思える仕事の1つです。

一方で、高齢者の数が突出して多い職業の1つでもあるのです。

警察庁の「警備業の概況」によると、2018年末の警備員の数は約55万人。

そのうち、60歳以上のシニアは44.1%に上るというのです。

交通誘導員という職業はよく見ると、「シニアが楽しくやり遂げられる仕事」の条件を案外兼ね備えていることが分かってきました。

シニアが仕事で幸せになれない5つの理由

高齢者が仕事で幸せになれない理由として考えられるのが以下の5つです。

  • ①事故に巻き込まれる(起こしてしまう)
  • ②若い人からの指図に抵抗感を覚える
  • ③自分が足を引っ張っているという自責の念に駆られる
  • ④仕事を覚えられない
  • ⑤単純で刺激の少ない業務が退屈になる

交通誘導員の仕事にはこうした要素が少ないのです。

まず『①事故に巻き込まれる(起こしてしまう)』については、高所から転落したり、機械の誤操作で負傷したりすることが少ないといっていいでしょう。

片側通行車線で案内ミスにより車が衝突する可能性はゼロではありませんが、死傷事故が起きる確率は、少なくとも建設業や製造業などの「20分に1度」に比べてずっと低いのです。

『②若い人からの指図に抵抗感を覚える』については、オフィスでの共同作業とは異なり、四六時中、上司の指示を受け続ける仕事ではありません。

『交通誘導員ヨレヨレ日記』の著作者の柏さんによれば、「現場に配置された後も、横柄に細かく指示してくる現場リーダー」も中にはいるようですが、ほぼ毎日、現場とメンバーが変わるとあって、人間関係のもつれを引きずることは少ないといいます。
交通誘導員ヨレヨレ日記――当年73歳、本日も炎天下、朝っぱらから現場に立ちます

『③自分が足を引っ張っているという自責の念に駆られる』、『④仕事を覚えられない』は、とりわけ技術革新が速い職場では多くのシニアが覚える感情ですが、交通誘導は毎年「新たな誘導技術」が生まれるわけではありません。

「歩いてきた人やクルマがどう動こうとしているかを瞬時に見極める必要があり、実は頭も体も使うなかなか奥の深い仕事だが、やる気さえあれば高齢でも身に付けられる仕事」(柏さん)

でもあるのです。

道行く人やクルマの考えを読み続けるという部分は、脳科学に詳しい医師の加藤俊徳氏が年を取っても穏やかでいるために必要と指摘した、「相手の立場に立って人の考えを理解する力」を養う上でも役立ちそうです。

そして『⑤単純で刺激の少ない業務が退屈になる』。

一見単純に見える交通誘導員の仕事。

しかし、「難しい状況を判断し、車や人の流れを上手に裁いたときには、思いの外達成感がある」と柏さん。

加えてなによりの醍醐味は、現役時代にはなかなか会えなかった個性豊かな同僚と触れ合えることです。

交通誘導員で人生の勝ち組に

一見世間では過酷に思われている交通誘導員は、見方によっては、「人に大きな迷惑をかけることもなければ、人に指図されることもなく、程よい刺激が伴う仕事」という面があるのです。

もっとも、ここで紹介したのは働く当事者個人の受け止め方であって、「交通誘導員こそが、シニアが幸福になる可能性が高い仕事」など主張するつもりはありません。

言いたいのは、人生100年時代に普通のシニアが生涯現役で幸福になるには、どうやらそれまでの職業選びの基準や常識を変えた方がよさそうだ、ということなのです。

例えば、「好き・嫌い」や「得意・不得意」だけでなく、少なくとも次の視点を入れるのはどうでしょうか。

①なるべく個人で完結する仕事を選ぶ(若者に指図される抵抗感など防止)
②なるべく技術革新の遅い仕事を選ぶ(周囲に迷惑をかけているという自責の念防止)
③なるべく人の考えを読み解く作業が必要な仕事を選ぶ(脳の劣化防止)

いつまでも第一線に立ち、若い世代のロールモデルとなり、後進を指導し、同世代に生き方の指針を示す。

そんな理想の「生涯現役」像だけに固執していては、「長生きという憂鬱」を追い払うのは難しいでしょう。

ネットの反応

「自分は新卒で入った会社がきつくて勤務地も変で休みも不規則で友達もできず、唯一の人生の楽しみは休日にバイクで走ることだったが、その時人気のない山道にいた交通誘導員の人を見てなんとなく安心感を覚え、人の役になってる仕事だなという印象を受けた。最底辺の職業なんて発想すらなかった。」

「土方のオッサンが警備員を見下してるのを見ると可哀想になります。」

「仕事の関係で交通誘導員の方と話す機会があるけど、誘導員の労働環境は過酷ですよ。交代の人員がいない時は紙おむつを履いて業務に当たるときもあるし、通行規制をかける時などは運転手や通行人から罵声を浴びせられるときもある。工事現場の最前線にいるため、工事の騒音の苦情まで言われることもあるそうだ。」

シニアが行き着く仕事が交通誘導員のイメージがあります。しかし、立派な仕事だしなくてはならない仕事ですよ。

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