円広志の『夢想花』は良かったね…しかし、それがスタートではなくてゴールだったという現実も…

円広志の“どん底からの転機” 『夢想花』大ヒット後に仕事消滅、堕落に身を任せたギャンブルと酒に溺れた日々…妻の号泣で「目が覚めた」

一見華やかな芸能界にも人知れず苦労した人は少なくない。

ヒット曲やベストセラーを出しても生活の安定は保証されない厳しい世界だ。

奈落の底に落ちることもある。そんなどん底から這い上がった人生の「転機」と「勝機」を聞いた。

『夢想花』のヒットで一躍「時の人」に

1978年に開催された「ヤマハポピュラーソングコンテスト」で歌った『夢想花』で、見事グランプリを獲得した歌手の円広志(71才)。

“とんで”というフレーズを9回繰り返す歌詞は、円の代名詞といえる。

その年の11月にレコード化されると、約80万枚を売り上げる大ヒットとなり、直後は目が回るほどの忙しさとなり、一躍「時の人」となった。

「『ザ・ベストテン』(TBS系)などいろいろな音楽番組に出演し、スケジュールがびっしりでした。ところが、翌年の1月半ばには『夢想花』がオリコンチャートのトップ10から落ちてしまいました。すると、あっという間に仕事がなくなったのです」(円・以下同)

ラジオのパーソナリティーなど歌手以外の仕事も長くは続かず、1981年頃には仕事がなくなり、ギャンブルと酒に溺れるようになったという。

「仕事がないので遊ぶしかないんですよ。朝10時に起きて、15時までパチンコをして、一度家に帰って服を着替え、原宿の行きつけの店の前で19時のオープンを待つ。そこに午前0時30分の閉店間際までいて、次は新宿二丁目で朝5時までマスターのお金で飲むのが日課でした。自分が落ちていってるなという感覚を味わいました」

周囲からは『夢想花』をもじって、「とんでとんで、どっかいった」などと揶揄され自暴自棄に陥っていた円だが、ある日突然、自堕落な日々に終止符が打たれる。

いつものように朝帰りをした日のこと。妻に飲み代を要求すると、「もう、お金は銀行にもないわ~」と言われた。プツンときた円は、こうまくし立てた。

「お前は映画館に行って、映画を見たことあるか。本編の前には予告編があるやろ。いきなりお金がないなどと、本編を言うな。どうして、いまは5万円、10万円しかないと、予告編のように言ってくれなかったのか」

朝帰りした円が、「なんやお前、寝とけゆうたやろ」と声をかければ、「寝てて、もう起きたんや」とあきれながらも明るく返していてくれた妻が「あんたの稼いだお金だから、そんなことよう言わんわ!」と号泣。

円の「目が覚めた」瞬間だった。

転機となった『越冬つばめ』の作曲

再起を決意するも、新曲を歌うチャンスは得られない。

信頼していた人たちからも見放され、まさに生きるか死ぬかという状態で円が選んだのは、故郷・大阪だった。

「生き残りたいと思いました。大阪に戻って、暴飲暴食で80kgほどあった体重も、テレビ出演を意識して65kgまで落として、死に物狂いですよ」。

1983年のある日、レコード会社のMさんの一言が、円の運命を変えた。

「お前はいいメロディーを作れるんだから、作曲家をやってみないか、と声をかけてくれたのです。再起を図る意味で、本名の篠原義彦の名義で手掛けたのが、森昌子さんに提供した『越冬つばめ』です」

森はこの年の「日本レコード大賞」で、最優秀歌唱賞を受賞。円は、めでたくその年の“冬を越すことができた”のである。

「ヒットは優秀な作詞家の石原信一さんと、抜群の歌唱力をもつ森さんのおかげ。でも、少なくともぼくのメロディーは死んでいないなと自信になったことは確かです」

何をやってもマイナスはない

円にはもう1人の恩人がいる。

大阪時代にマネジャーを務めたYさんだ。

Yさんにかけられた言葉がいまも忘れられないと話す。

「お前はもうゼロなんだから、何をやっても平気だ。マイナスはない。恥ずかしいことを言ってもプラスしかない。だから、なんでもやってみろ──と。ぼくはこの言葉をもらい、再出発を図ろう、たくさんテレビに出ようと気持ちを切り替えたのです」

昨年、芸能生活46年を迎えた円。

自身の財産は“人”だと語る。

「ぼくは人に助けられたと思う。才能がないぼくがいろいろな人に助けられたので、その恩に報いたいと、誠意をもって人に接してきていまがあると思います。そして、ぼくがいまも大事にしているのは“言葉”です。ちょっとした言葉が相手の助け船になることもあるし、ぼく自身、周りの人たちのそうした言葉に助けられてきました」

とんで、とんで、とんで──円は遠回りをしながらも言葉を頼りに自分の道に戻ってきたのだ。

ネットの声

「全国的には印税と昔の名前で生き残っている人といまだに思われいるかもだけど、関西ローカルでは関西を代表する大スターなのです。
最近は年齢もあってペースダウンしているようだけど、情報番組のゲストやパネラーとして毎日何かしらの番組で顔出し。地元ローカルCMでも頻繁に顔見せ。上沼恵美子との絡みはお約束。そして冠を務める朝10時からの帯番組「よ~いドン」は高視聴率の絶対安定長寿番組。ギャラが関西相場とはいえ、個人事務所だから儲けも莫大。大成功した大スターなのです。
街ブラロケに遭遇したらそりゃもう、縁起物ですよ。」

「「越冬つばめ」。珠玉の名曲です。一度聴いただけで辛く悲しい女性の心と情景が想像出来る歌詞、そして神の領域すら感じさせる森昌子さんの歌唱力、そこに円さんの、素晴らしい歌詞と歌唱力を見事に表現させる感動あふれるメロディ。本当に素晴らしい楽曲を世の中に出していただき、ありがとうございます。」

「奥さんの号泣....本当にぎりぎりまで円さんを信じていたんですね。
「覆水盆に返らず」の故事を思い出しました。
でも、あっちの方も奥さんは相当我慢した故の決断でしょうに何か酷い展開だなと思っていたんですが、こちらの方は本当にどん底まで落ちてそれでも号泣するほどに旦那さんと向かい合って再起を果たしたんだから感無量ですね。」

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