日本語の敬語には「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」の3種類があります。

しかし最近、4種類目の新しい敬語が世間にはびこっていることをご存じでしょうか。

たとえば、こんな文章です。

「ご相談させていただけないでしょうか」
「お打ち合わせのおまとめをお送りいたします」
「ご確認いただければ幸いと存じますがいかがでしょうか」

…などなど。

日々、遠回しで意味不明な内容のメールにイライラしている方も多いかもしれません。

円滑なやりとり阻害する「卑屈語」の罠

こうした言葉を、「卑屈語」と呼んでいるそうです。

「卑屈語」が使われる意図は、「丁寧」でも「謙譲」でもなく、ましてや「尊敬」では決してありません。

いわゆる「保身」ですね。

嫌われたくない
責任を取りたくない

こうした「保身」が日本語を歪め、卑屈にしているのです。

「卑屈語」が使われるのは、ビジネス・シーンに限りません。

テレビをつければ芸能人が、「私事でありますが結婚させていただいたことをご報告させていただきます」なんて言っているのです。

ソーシャルメディアに目をやれば「担当させていただいた案件で、ニース広告祭のグランプリを受賞させていただきました!」みたいな、意識高い系ビジネスパーソンのドヤりが繰り広げられているのです。

「卑屈語」が蔓延してしまった理由は、ただひとつ。

「嫌われないことを」を最優先する人が増えたからでしょう。

コピーライティングの極意は商品を売ったりブランドの好感度を高めたり、さまざまなコピーを書いているが、一番の目的は顧客を満足させることです。

他のどんな仕事であれ、これは変わりません。

すべてのビジネスは、本質的には「顧客を満足させること」を目的としているのです。

当たり前の話のようで、ビジネスの現場では、意外と通用しないのです。

たとえば「顧客を満足させること」が、「顧客企業の担当者を満足させること」とイコールではないことは多いのです。

短期的な満足と中長期的な満足が異なることも多い。さまざまなしがらみや事情もある。

結果として、多くのビジネス・パーソンが「顧客を満足させること」ではなく、「誰かに嫌われないこと」を目的にしてしまっているのです。

クライアントや上司の機嫌を損ねたくない
部下からバカにされたくない

四六時中そんなことを思っていてストレスを貯めている人も多いことでしょう。

相手の機嫌を伺うことで

相手にとって嫌な指示をしなくてはいけない。

でも、嫌われたくはない。

だから「やってください」ではなく「ご相談させていただけないでしょうか」と書くのです。

判断しなくてはいけないけど、責任は取りたくない。

だから「A案でお願いします」ではなく「A案のご採用をご検討いただけないでしょうか」と書きます。

こんなふうに、人は「卑屈語」に逃げてしまうのです。

「させていただきます」の連発は、芸能人からの影響が大きいように思う。

「主演させていただきます」
「私事ではありますが婚約させていただきました」

というアレです。

背後にあるのは「自慢したい。でも、嫌われたくない」という心理でしょう。

そういった心理がビジネスのメールやフレーズに現われてくるのですね。

なぜ「卑屈語」を使ってはいけないのか

「卑屈語」を使ってはいけない理由は単純明快です。

ビジネスの生産性を著しく下げるからです。

まず書くのに時間がかかります。

あれこれ逡巡しながら「考え方はOKなのですが、別の方向性の可能性もご検討いただければ幸いと存じますがいかがでしょうか?」と書いていれば15分はかかるでしょう。

そんなヒマがあれば「すみません! 修正してください」と1秒で書いたほうがよっぽど効率的です。

読むのだって一苦労。

「今の案も通る余地があるの? それともやり直し?」と、これまでの文脈や相手との関係性を考慮しながら半日悩むほどムダな時間の過ごし方はありません。

そもそも真意が伝わらないのです。

「全部やり直し」と伝えたいのに、読み手は「微修正」と判断しかねないのですから。

確かに卑屈語を使えば、嫌われることは減るのかもしれません。

しかし、代償としてナメられてしまいます。

そして、次から次へと無理難題を要求され、値切られるようになるでしょう。

もしビジネス・パーソンとして稼ぎたいと思っているのであれば、決して「卑屈語」を使ってはいけません。

使うごとに1円年収が下がるくらいの気持ちでいたほうがいいのです。

といっても具体的にどうすればいいのか…解説します。

「卑屈語」を使わないコツ

まず「させていただく」を使わないようにしましょう。

どうしても使いたくなったら、「いたします」と言いかえればいいのです。

<ケース1>

「確認させていただきます」→「確認いたします」

<ケース2>

「受賞させていただきました」→「受賞いたしました」

これだけで文章の卑屈度はグッと下がることがわかるでしょう。

単語の頭に「お」や「ご」をやたら付けないことも大切。

「おまとめ」「お戻し」「お打ち合わせ」など……。

昔の貴族じゃないのですから、「まとめ」「戻し」「打ち合わせ」と普通に言えばいいのです。

卑屈語の隆盛には、ソーシャルメディアの普及とも因果関係があるように思われます。

人類の歴史上初めて、誰もが全世界に発信できるようになった時代。

「嫌われたくない」と慎重になるのも無理はないのです。

しかし、これはテレワーク時代には合わない考え方といっていいでしょう。

ビデオ会議やチャットツールでは、相手の表情や場の空気、行間のニュアンスなどはあまり重要視されません。

何しろ視線が合わないのですから。

そして、短時間で端的なコミュニケーションが重要になってきます。

いちいち「させていただけないでしょうか」と送信されたら、たまったものではありません。

ネットの反応

「「メール文言の丁寧さ」が仕事のできる基準では全くありません。一般的な丁寧語を用いて、相手に正しく伝わりさえすればそれで良いのです。過剰な丁寧語は違和感を覚えますが、言いたいことがわかればいいと思います。」

「遊びは、くだけた文章で、仕事は丁寧な文章でメールを作成しています。同じ相手先でも、遊びのメールと仕事のメールは、語尾を使い分けてます。その方が、一線引ける気がして。」

「私はメールに時間かけてしまう方ですが、クライアントとの関係を良好に築けるという評価をもらっています。そのせいか、コミュニケーションが雑でトラブル起こしがちな人とペアを組まされます…こちらが些細なミスをした時、関係が良好だと「まぁ次からは気をつけて」で済みますが、関係が良くないとインシデントとして問題になりがちなんですよね。その対応を含めた時間を考えると、多少メールに時間をかけても損はないと思っています。」

メールを仕事の一部と考えないと、どうしても「時間の無駄」ということになってしまいます。

メールにかける時間を「一日1時間」と考えるとどうでしょうか。

長いように感じるかもしれませんが、実際にそのくらいかかっているはず。

それと、メールもコミュニケーションツールのひとつです。

というよりも電話よりも時間を専有しないので、むしろ有効かつ丁寧に相手にわかるようにするのが吉ですね。


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