実刑必至…4630万円持ち逃げ男が背負う代償

「給付金4630万円持ち逃げ男」が背負う代償、実刑必至に多額の納税も

山口県阿武町が新型コロナウイルス対策の臨時特別給付金4630万円を誤って住民1人の口座に振り込み返還を求めている問題。

山口県警は5月18日、誤給付と知りながら別の口座に移し替えて不法に利益を得たとして、電子計算機使用詐欺の疑いで無職、田口翔容疑者(24)を逮捕しました。

既に使い込み、スッカラカンとみられますが「はい、そうですか」で済むわけがありません。

若者に降って湧いた出来事に魔が差したのかもしれませんが、代償は極めて高そうです。

誤給付されたカネを使い ネットカジノで大ばくち

田口容疑者の逮捕容疑は4月12日、阿武町が誤って自分の口座へ4630万円を振り込んだと知りながら、スマートフォンでオンライン決済サービスを使い、決済代行業者の口座に400万円を振り替えて不法な利益を得たとされています。

容疑を「間違いありません」と認めているそう。

全国紙社会部デスクによると、阿武町が誤給付するまで田口容疑者の口座には665円しかなかったのですが、町職員が返還を求めに訪れて誤給付の事実を知った同8日から19日まで、決済を計34回にわたり繰り返したのです。

1回当たりの決済額は67万~400万円で、1日に900万円以上を決済した日もあったそうです。

田口容疑者は逮捕前、代理人弁護士に「複数のネットカジノで全部使った」と説明しており、決済代行業者を通じてカジノを運営する海外の口座に流れたとみられます。

逮捕当日の18日時点で、田口容疑者の口座には約6万8000円しか残っていませんでした。

「電子計算機使用詐欺罪」(刑法246条の2)は、あまり聞き慣れない罪状と思います。

一般的な詐欺罪(同第246条の1)と構成要件は同じで、他人をだまして財物を受け取ったり、不法な利益を得たりする行為を指します。

罰則は10年以下の懲役 弁済不能で実刑は必至

今回のケースでは、単純に「誰かをだまして金品を詐取」したのではなく、自分の口座とはいえ、町職員に「誤給付」と告げられて(というか、口座を確認すれば普通におかしいと気付くでしょうが)他人のお金だと認識しているのに、勝手に口座から移動させた行為が「不法な利益」に当たると判断されたわけです。

ちなみに新聞やテレビは「決済代行業者の口座に移し替えた疑い」「不法に利益を得た疑い」などと報じていますが、誰が被害者か書き込んでいない記事が少なくありません。

この場合、正解は「銀行」になります。

誤った振り込みが口座になされたとはいえ、田口容疑者の所有物ではないので、その瞬間は銀行が一時的に「占有」していることになるのです。

その銀行から不当な利益を得たという解釈です。

ちなみに罰則は10年以下の懲役で、罰金刑はありません。

通常、詐欺罪のケースは被害を弁済した上で「厳罰を望んでいない」「寛大な処分を望む」と一筆差し入れてもらって執行猶予が付くのが一般的です。

田口容疑者の場合、ほぼ全額使い込んでいるわけですから弁済は無理でしょう。

初犯だったとしても金額が金額だけに長い刑期になる可能性もあります。

なぜ一括して4630万円分の容疑で逮捕しないのか、という疑問もあるでしょう。

これは単純に1回の決済として一番金額が多かったからで、再逮捕や追送検という形で勾留を続け、いずれ全額分が立件されるはず。

4630万円と弁護士費用の支払いは 利息だけでも月10万円以上

刑事的な流れは上記の通りですが、刑期を勤めれば使い込んだお金を返還しなくて済むわけでは当然ありません。

テレビや新聞が報じている通り、阿武町は5月12日、不当利得の返還と弁護士費用を加えた5100万円余の支払いを求め、山口地裁萩支部に提訴しました。

逮捕前、代理人弁護士に「お金を使ってしまったことは申し訳ない」「少しずつでも返していきたい」と話したそうですが、訴えを全面的に認めるか疑わしいものがあります。

ほぼ全額を使い込んだ後、返還を求めても「町が悪い(から返す必要はない)」と責任転嫁していたとされています。

こうしたタイプは、答弁書や口頭弁論でも「阿武町に過失があり、全額の返還には応じない」と一部争う姿勢を見せるケースがあるからです。

こうなると、田口容疑者は逮捕・勾留されているだけに訴訟が長期化する可能性があります。

しかし、長くなれば長くなるほど債務は膨れ上がります。

民法704条は、得た利益が「不当利得」と知りながら取得した場合、年3%の利息を付けて返還しなければいけません。

単純計算で年間138万9000円、月に11万5000円余です。

利息は判決確定ではなく、遡って発生するので、月10万円ずつ支払っても、利息にさえならないのです。

万が一、阿武町側の好意で「利息免除」となったとしても、弁護士費用も含め月10万円の支払いで42年以上かかります。

そもそも、こうして有名になってしまった田口容疑者が、出所後にこれほどの額を支払い続けるのは厳しいでしょう。

犯罪で得た収益にも 納税する義務

実は田口容疑者には、恐ろしい組織が待ち構えています。

国税局ですだ。

あまり知られていませんが、所得税法36条の規定する「収入金額とすべき金額」または「総収入金額に算入すべき金額」について、基本通達で「その収入の基因となった行為が適法かどうか問わない」とあります。

つまり合法だろうが違法だろうが、懐に入れた金の税率分は納めろというわけです。

2017年には横浜市の寝具販売業の実質的経営者が従業員と共謀し、悪質な訪問販売に悩む高齢者に「勧誘をやめさせる」とウソをつき、その費用名目でだまし取った現金計約3億4000万円を他人名義の口座に隠したとして組織犯罪処罰法違反の罪で起訴された後、その所得の一部を脱税したとして、法人税法違反の罪で追起訴されたケースがありました。

これは、東京国税局査察部が千葉地検に告発していたのです。

国税局はありとあらゆる媒体から情報を収集し、事件のニュースも網羅しているので、犯罪収益を隠していると目を付けた法人や団体、組織、個人は例外なく調査に出向きます。

一般的に脱税は仮装・隠蔽(いんぺい)、金額が大きいなどの場合は刑事事件になるのですが、修正申告するなど反省の姿勢を見せれば行政処分(追徴課税)で済むケースもあります。

今回はどうでしょうか。

前例がないので断言できませんが、「一時所得」か「雑所得」のいずれかのはずです。

納税額は約2000万円か 自己破産でも逃れられず

所得税の税率は4000万円を超える場合、45%。

誤給付の金額から控除額を引いて単純に計算しても、来年の確定申告で約1870万円の納税義務があります。

納税できなければどうなるのでしょうか。

金額が大きいだけに税務署ではなく、広島国税局課税第1部資料調査課(通称・リョウチョウ)の出番かもしれません。

仮装・隠蔽という悪質な手口ではないと認められ重加算税を免れても、納税できなかった場合、無申告加算税(20%)の約370万円が加えられ、計約2240万円。

国税の延滞金は民法の規定のように優しくはなく、時間が経過するにつれて高くなり、最大で14.6%になります。

そうすれば利子だけで年約330万円、月30万円近い支払額になるわけです。

言うまでもなく、「納税」は国民の三大義務。

民事訴訟で判決が確定しても「一銭も払わずバックレる」というのはよく聞く話です。

しかし、税金は自己破産しようとも一生、免れることはできません。

使い込んでしまった阿武町の公金を少しずつでも返していくのか、来年から義務が生じる納税を続けていくのか。

いずれもバックレて自分の素性を偽り、隠れるように生きていくのか。

大金に目がくらみ、出来心で背負った十字架は随分と重いものになりそうです。

ネットの声

「供述通りに全て使ったと言う事が事実なら、こうした記事を見る度、この誤送金された4630万は返って来ないんじゃないかと言う印象を受けますね

ただ、ロンダリングという可能性も強いんじゃないですか
履歴が明らかになりましたが、等しく134万毎の振込みは、まるで積立て預金
暗号資産化して、出所したら引き出す事も可能と言えば可能でしょう

金に対して執着していた事もニュースで明らかになっていますが、日頃から考えてないと用意周到に全額使うか隠すなんて事もできないはず
だからこそ、逃走と証拠隠滅の恐れがあるからとしての逮捕だと思いますね

役人が接触した時の手慣れた言い分を見ても、全額使ったと言うのは主張であって、隠している可能性もあるんじゃないでしょうか」

「役所が訪問してきた時に「1時間待ってくれ」と言ってる間に、こういうの通じてる知り合いに電話で相談し、海外のネットカジノに入れろ、そこなら警察も手が出せない、とアドバイスされる。

しかし1時間ではやりきれず、ひとまず役所の人間と同行して銀行に向かう。
で、銀行に着く土壇場に「やっぱり今日はやめる」といって家に帰り、再び知り合いと相談してカジノに金を移す手順を教わり、実行。

そもそも、貯金もなく田舎に流れ着いてパチンコ程度しかやってない人間が、オンラインカジノの口座を持っていたとも思えないし、やり慣れていたとも思えない。

突然オンラインカジノに金をぶっこんだり、こんな怪しい輩が弁護士を準備していたのも、入れ知恵した奴がいるってこと。

金はカジノの海外口座にプールされたままでしょうね。
もしかしたらその手引きした奴がすでに引き出してるかも。

罪は確定しても、回収は難航するだろうな・・・」

「今回の件、容疑者の余りにも浅はかな行動にただただ呆れるばかり。必ず足がついて自分のものになることなんてほぼほぼあり得ないことすら想像できなかったのだろうか。

ただ、事実上こういった人間が今の日本人にはいることが証明された格好で、日本人の短期的ばかりで中・長期的な損益を考える力や、金融リテラシーの乏しさが露呈したとも言えるんじゃないかと思った。

この4月から高校で金融の授業が始まったそうだが、投資とかの前に預金口座でのカネの流れとか窓口、ATM、ネットバンキングでの手続き、口座の種類といった基礎中の基礎から教えていくべきなんじゃないかな。」

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