65歳を過ぎて持ち家にひとり暮らしの落とし穴

65歳をすぎて、持ち家に「ひとりで暮らす人」が遭遇する「危ない落とし穴」

埼玉県郊外にある2階建ての一軒家に住む小野春彦さん(78歳・仮名)は途方に暮れています。

妻と死に別れて10年、小野さんは長年慣れ親しんだ自宅でひとり、暮らしてきました。

数年前から膝の調子が悪くなり、階段の上り下りが億劫になったのです。

戸建てに住むのはリスク

小野さんが言います。

「もう2階には、何ヵ月も上がっていないから、様子もわからないね。日々の暮らしでは、居間と台所、トイレくらいしか使っていない。正直、こんなに広い家は必要ないんだけど、かといって移るところもない。
最近は物忘れもひどくなってきたように感じる。このままここで、ぽっくり逝くのがオレの末路かね。子ども? 息子が2人、東京に住んでいるけど、自分たちの暮らしで精一杯なんだろう。正月に顔を見せる程度で、何の世話もしてくれねぇよ」

ひとりで老後を過ごす人にとって運命を分けるのが、家を売るか、住み続けるかの決断です。

家族で住み慣れた自宅に住み続けたいのが人情ですが、身も蓋もない言い方をすれば、ひとり身にそこまで広い家は必要ないのです。

老後問題解決コンサルタントの横手彰太氏がこうアドバイスします。

「死ぬまで元気に自活できるのであれば、いまの場所のままでもいいですが、その確率は低いでしょう。やはり65歳を過ぎて、戸建てにひとりで住むとなると、さまざまなリスクがあります。たとえば、高齢者を狙った訪問販売詐欺ですね。
だから、自宅は売ってしまって、駅に近いコンパクトなマンションに住み替えるのがおすすめです。できれば、自宅売却の資金を充てて、購入したほうがいい。最終的には介護施設にお世話になる選択肢もあるので、駅近くの物件を選んだほうが売りやすいでしょう」

売るなら早いほうがいいが

古い戸建てに住み続けるのには別のリスクもあります。

不動産に詳しい弁護士の長谷川裕雅氏が言います。

「地震で壊れたり、雨漏りしたりして高額の修繕費がかかることがあります。また、一軒家を売るにはそれなりの時間がかかります。いまは不動産市況が好調ですが、数年後、どうなるかわかりませんから、売るなら早めがいいと思います」

ただし、売り急ぐと買い叩かれる危険性があるのが難しいところ。

インターネットで近隣の相場を調べてから売却に臨むのがいいが、それが無理なら、地元で長く商売をしている複数の不動産屋に話を持ちかけ、信用できる業者かどうかを見極めることも重要です。

冒頭の小野さんはすでに物忘れに悩んでいましたが、もし認知症と診断されれば、自宅を処分することもままならなくなります。

「認知症が進み、契約能力がなくなってしまうと、いざというときに売れなくなる可能性もあります。子どもがいないのであれば早めに自宅を売って、見守りサービス付き高齢者向け住宅に住み替えたほうが安心だと思います」(老後問題に詳しい司法書士の岡信太郎氏)

自宅に住み続けるには

小野さんのケースでは早めに自宅を始末し、金額次第で小さなマンションを購入するか、息子に保証人になってもらい、賃貸物件に入るのがいいでしょう。

しかし、保証人になってくれる身内がいない場合もあります。

ひとりで暮らす人が新たに物件を借りるときにぶち当たるのが、「身元保証人」問題です。

介護・医療ジャーナリストの長岡美代氏が話します。

「高齢のおひとりさまは賃貸物件を借りにくいのが現状です。貸し出す側としては、孤独死のリスクがつきまとうため、貸したがらないのです」

親族に身元保証をお願いできればいいのですが、そういった人がいなければ、民間の身元保証サービスを利用するしかありません。

「身元保証サービスは最低でも20万円、他のサービスも含めると100万円以上かかるのが一般的です。なかには悪徳業者もいます。契約するにしても、ひとりではなく、第三者に立ち会ってもらって判断したほうがいいでしょう」(長岡氏)

もちろん、売らないほうがいい場合もあるようです。

「たとえば、自宅の敷地にある畑の世話が生きがいになっているケースや、近隣の人間関係が濃密で離れがたい場合はそのまま自宅に住んでも問題ないと思います。無理に動くと、体調を崩して介護が必要になってしまいますから」(横手氏)

自宅にひとりで住み続けるなら、介護サービスを賢く利用しましょう。

「おひとりさまの場合、家族がいない分、自分の意向が通りやすい。ケアマネジャーに最期まで自宅で過ごしたい旨を伝えて、在宅サービスや訪問診療(在宅医療)を紹介してもらうことも可能です」(長岡氏)

要支援や要介護認定されれば、ホームヘルパーが日常的な家事や入浴、排泄、衣服の着脱などをサポートしてくれる訪問介護サービスを受けることができます。

「自宅で介護を受けながら生活しようとしても、契約をしたり、代金を支払ったりすることが難しい場合もあるでしょう。そういうときは、弁護士や司法書士と財産管理委任契約を結ぶことも検討してください。
受任者に通帳を預けて生活費をおろしてもらったり、介護サービスの契約を代わりにしてもらったりすることができます。
任意後見契約をあわせて結んでおけば、万が一、認知症になった場合の処置も事前に指示しておくことができます。料金は事務所によって差がありますが、着手金は20万~60万円程度で、月に3万円ほどかかります」(岡氏)

最後はどこで暮らしたいのか、早めに考えておくことが肝心です。

ネットの声

「マンションは管理費や修繕積立金がかかります。ましてやマンションの住人にもいろんな人がいるだろうし。自分の家の事だけ考えた方が楽な気もする。理想は元気なうちに生きている間、持ち堪える平家にしておく事だろうけど、介護保険で手を入れたりヘルパーさんに頼りながら住み慣れたところで住むしかないような。」

「一年ぐらい前、訪問して来た介護士にバッグから現金を抜き取られたというニュースがあった。防犯カメラの設置は必須。」

「サービス付き高齢者住宅の中身を知っていて書いているのだろうか?結局は、何やってもらうにもお金なんです。」

「>最後はどこで暮らしたいのか、早めに考えておくことが肝心だ。
他人事じゃないな。そろそろ考えないとね。」

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