
シーズン開幕後のホンダとヤマハ現在地は?
改善と残る懸念点を考える。
MotoGPの2025年開幕戦タイGPでは、ドゥカティのマルク・マルケスが週末を圧倒。
ポールポジションからスプリントと決勝を制し、ドゥカティが今季も変わらぬ強さを持っていることを示していた。
目次
日本勢に改善の傾向が!?
その後方での争いでは、ホンダ陣営のヨハン・ザルコ(LCR)が7位でフィニッシュ。
同郷ヤマハからはファビオ・クアルタラロは11位となっており、ホンダがヤマハを上回った。
近年苦戦が続いてきた日本メーカー勢には改善の傾向が見て取れる。
開幕戦の結果から2025年はホンダがヤマハよりも序列上位につけたとも見えるだろう。
ただ事態は複雑だ。
今のところ日系2メーカーのガレージには、励みになる点と心配になる点のふたつの兆候がある。
まずホンダだが、彼らの2025年シーズンのスタートは成功したと言える。
ジョアン・ミル(ホンダ)とザルコが予選Q2に進み、ミルが記録したベストタイムは昨年10月に行なわれたタイGPで記録されたタイムよりも、0.4秒も速くなっていた。
ポールポジションとのギャップは0.640秒で、昨年の1.1秒差からは大きく縮まっている。
スプリントではミルが9位、ザルコが10位でフィニッシュ。
そして決勝では、さらに良い走りを見せた。
ミルは11番グリッドから順位を上げていき、レース中盤に転倒してしまう前には、昨年には考えづらかった位置である7番手をキープしていた。
その後は、トップ10を争っていたザルコがポジションを上げ、7位を持ち帰った。
6位だったアプリリアファクトリーのマルコ・ベッツェッキから0.3秒差であり、ホンダがこの冬の間に遂げた進歩を示している。
優勝者(マルク・マルケス)とのギャップでは、ザルコは15秒差。
2024年タイGP決勝は雨だったため、直接比較できないが、昨年は40秒遅れといった場面もあり、20秒以下の差になることはめったになかったということを考えれば、15秒差は上出来だろう。
そして最もホンダ勢で影が薄かったものの、ルカ・マリーニもいいパフォーマンスを見せた。
スタートで最後尾に落ちたものの、マリーニはそこから挽回して12位となっている。
マリーニはこの冬にホンダが0.4秒の改善を成し遂げたと考えているが、時間的なスケールを考慮すると決して小さくない成果だ。
「僕らのペースを昨年と比較すると、0.4秒は速くなっていると思う」とマリーニはいう。
「昨年は1.2秒は遅れていたと思うんだけど、今は0.8秒くらいだ」
「だけどマルケスにどれだけ余力があるのかは分からない。彼は先頭でかなりマネジメントしていたからね。タイムはもう少し伸ばせただろう。もちろん、今のタイヤではこれ以上速くはできないという限界も存在している」
「タイヤ自体は素晴らしいんだ。レース中は凄く一貫性があってラップタイムを出せている。でも、今年中に彼らへより近づきたいし、早く実現させたい」
ミルの転倒が悔やまれる
そして転倒したにもかかわらず、ミルもホンダの進歩具合には感銘を受けている様子だった。
「僕らが示していたペースなら、トップ5により近づくことも可能だったと思う」
ミルはレースについてそう語る。
「これは昨年のどのレースでも見せられなかったモノなんだ」
「つまり僕達は前に進めているということだ。強さがあったし、ハッピーだよ」
ただホンダはライバルと比較して、エンジンパワーで劣っているという問題が未解決のままだ。
「マレーシアではタイよりもエンジンが良さそうだったんだ。つまりここでの暑さが僕らにとっては他メーカーよりも不利になっていたかもしれない」とザルコは語っている。
「こうした不利な点を挽回できるのか、他の普通の気温の場所でどうなるか様子を見てみよう」
開幕戦でヤマハの真のポテンシャルは見えづらい
タイGPでのヤマハのパフォーマンスを語る上で、予選は外せない。
今季からプラマックに加入したジャック・ミラーが、ポールポジションからわずか0.308秒差の4番手を確保したのは驚愕の出来事だった。
さらにファビオ・クアルタラロもQ2に進み、10番手を確保。少なくともヤマハは1発のタイムアタックでは本物のペースがあることを示していた。
クアルタラロはスプリントレースで7位を獲得。この時点ではホンダに先んじていた。
しかし決勝では問題が発生。2025年のYZR-M1の真のポテンシャルが覆い隠されてしまった。
4番グリッドからスタートしたミラーは、26周中16周目まで6番手を維持。
このまま行けば昨年のインドネシアGPでクアルタラロが記録した4位に次ぐ好結果だった。
しかしカウルの留め具が緩んでしまったことが影響しミラーはペースダウン。大きく順位を落とした。
「8周目あたりからカウルにちょっと問題を抱えていたんだ。それで先頭集団には離されてしまった」
「残念だけど、留め具がひとつ外れて、カウルの一部が緩んで来てしまったんだ。知っての通り今のバイクではエアロがコーナリングに不可欠になっている。僕の得意としていたターン4やターン5では、スピードを維持するのに苦労した」
「スピードが乗ってくると、カウルはさらに動いてしまって、330km/hくらいだと外れてしまうんじゃないかと怖かったよ! できるだけカウルを抑えようとしたんだけど、腕は熱いし脚も熱かった」
なおミラーはこの問題を抱えつつも、ヤマハ陣営最上位の11位でフィニッシュしている。
一方でクアルタラロは決勝でタイヤに苦戦し15位に終わった。
プレシーズンテストからフロントタイヤの扱いには苦しんでいたが、レースウィークにも問題が持ち越されてしまったのだ。
更に悪いことに、今回はリヤタイヤも機能せず、グリップを得られない状態でのレースに終始した。
「最初からグリップに問題があった。かなり苦戦していて、最初はタイヤのウォームアップに問題があるのかと思っていた」
クアルタラロはそう語っている。
「でもレースを走り切って確認したところ、単に1周目から全くプッシュできず、バイクを傾けることもできず、スライドしていただけだった。その結果多くのポジションを失い、良いレースも良いペースも見せられなかった。本当に厳しいレースだった」
さらに母国フランスのCanal+に対しては、こうも付け加えた。
「序盤のラップ、そしてレース全体で何が起きたのかをよく調べて行くつもりだ」
「最初の何周かはリヤタイヤが本当に上手く機能してくれなかった。フロントタイヤについては(問題があることは)知っていたけど、リヤがこんなに複雑なことになるとは思っていなかった。ウォームアップラップからタイヤを温めて、スタートからプッシュする戦略をちょっと考えていたんだけど、2~3周は曲がることすらできなかったよ。本当に大変だった」
他のヤマハ陣営では、アレックス・リンスがオーバーヒートの問題に苦しめ目られ17位。プラマックのミゲル・オリベイラも14位だった。
こうした結果からヤマハの真のパフォーマンスを開幕戦で判断するのは難しい。
タイGP自体はヤマハにとって良い結果になるコースではないと予想されていたことも、留意する必要があるだろう。
ヤマハのマシンはプレシーズンテストからグリップの低いコンディションでは依然として苦戦してしまうことが確認されている。
今後、MotoGPはアルゼンチン、オースティンと進んでいくが、どちらもグリップは低いと予想されているため、まだヤマハにとって厳しい状況は続くかもしれない。
ネットの声
「一発の走りはミラーにとって前よりある才能ですが、必ず後半ペースが落ちます。フィジカル的なものなのかタイヤマネージメントなのか?
ミルに関しては結果は転倒。スズキ時代は後半まくるライディングだったので、まだ本調子では無いのか、ホンダ乗りにスタイルを変えたのか分からないです。
ラウンドを重ねてみないと何ともですが、前半戦は大幅なモディファイをしてないドカ勢がデータもあり圧倒するでしょうね。
マルクに於いては空気圧の管理までする余裕もあり、何も起こらなければまた茂木でチャンピオンを決めてしまうかもしれません。
恐らく無理をしなくても良い状態なのでしょう。
逆に去年以上に無理をしなければいけないのはチームメイトのペッコなのかもしれません…」「結局今年がドゥカティ選手権であることは間違いないのよね。
マルケスやロッシに変わるビッグネームがいるでなし、マシンに長足の進歩があるでなし、結局日本のメーカーは去年と何ら変わりがない。
KTMが会社の倒産でマシン開発が出来ずその分落ちていくので相対的にホンダヤマハが上がったように見えるかのしれないが、ドゥカティの足元にも及ばす表彰台にすら乗れない状況はこれからも続くだろう。」「YAMAHAが予選は速くて、特定のラインを外さないなら好タイムというのは以前から変わらない、クアルタラロが安定しないのも。
HONDAは昔はパワー命だったのにだいぶ変わってしまったなあという印象、周りの戦闘力や空力バトルという環境の違いは大きいし。」