佐野元春のアルバムは何が好き?90年代ロックの金字塔「ザ・サークル」がすごい!

90年代ロック屈指の傑作!佐野元春「ザ・サークル」ザ・ハートランドと最後のセッション

佐野元春はデビューから40年以上、常に旅を続けている。

そう、旅を続けながら、ストーリーテラーとして湧き上がるイメージを次々と具現化している。

湧き上がるイメージを次々と具現化していった佐野元春

ニューヨークからロンドンへたどり着いた1980年代半ば、アルバム『Cafe Bohemia』(1986年)でも、最先端のUKソウルやアシッドジャズのエッセンスをいち早く取り入れていた。

旅を続ける元春には、かつて彼のバックバンドである “THE HEARTLAND” が常に傍にあった。

元春が彼らとレコーディングを共にした最後のアルバム『The Circle』(1993年)は、《人間の無垢な感情(イノセンス)は、決して成長と引換えに失ってしまうものではなく、大きな円環(サークル)の中で受け継がれてゆくものなのだ》というコンセプトがタイトルに反映され、R&B的な色彩が強い作品に仕上がっている。

かつて元春は、確か『Cafe Bohemia』リリース時のインタビューだったと思うが、《ロックンロールは “ I ” の音楽。

一方、ソウルやR&Bは “We” “us” の音楽》といった主旨の内容を語っていた。

そして『Cafe Bohemia』から7年、“We” “us” の音楽として、より一層くっきりした輪郭を見せたのが『The Circle』だった。

それは主張の一致団結ではなく、聴き手それぞれが心に抱える理想を探り合いながら前に進んでいくということだろう。

これまでのTHE HEARTLANDとの日々がそうであったように。

THE HEARTLANDと共同制作した最後のアルバム

ポエトリーリーディングのような力強さで語りかけるオープニングナンバー「欲望」には「♪物憂げな顔したこの街の夜」や「♪この街のジャズにまぎれて」という、初期の作品でも使われたようなフレーズが散見される。

でもそれは決して懐かしさを感じるものではない。THE HEARTLANDと共に経験してきたいくつもの出来事をしっかりと見据え、未だ見えぬ未来と向き合っている。

そして「君を連れてゆく」では「♪新しいルールを作るのさ」と歌い、「新しいシャツ」という曲では「♪あせらない 迷わない 新しいシャツを見つけに」と歌う。

THE HEARTLANDと共同制作した最後のアルバムだからこそ、過去を見据え、未来に進むという力強さが溢れているのだ。

本作では、バブル経済が破綻をきたし、混沌とした社会情勢を映すようなシリアスなリリックが続くが、どこか煌めきを感じずにいられないのがTHE HEARTLANDが成せる技だろう。

また、9曲目に収録されている「エンジェル」には、1960年代の英国モッズカルチャーに大きな影響を及ぼしたジョージィ・フェイムが参加。

レゲエのダウンビートが特徴的なこの曲にフィーチャリングされているレジェンドのオルガンは、何処か幻想的で、牧歌的でもある。

なるほどジョージィの参加は、アルバムに普遍的な魂を注入するという意味合いもあったのかもしれない。

アルバムコンセプトが見事に体現された90年代ロック屈指の傑作

元春は、この『ザ・サークル』をリリースするにあたって、自身が記したセルフ・ライナーノーツにこう記している。

《新作『The Circle』では喧騒の80年代をドライブしてきた者たちが見た1993年の風景を描いた》 つまり、THE HEARTLANDと共に駆け抜けてきた80年代の喧騒が1993年当時の心象風景として具現化されていたというわけだ。

あれは幻なのか? と思えるほど慌ただしかった日々は、普遍的なものとして心に刻まれていく。

重厚なミディアムナンバーで構成された『The Circle』というアルバム。

繰り返すが、《人間の無垢な感情(イノセンス)は、決して成長と引換えに失ってしまうものではなく、大きな円環(サークル)の中で受け継がれてゆくものなのだ》といったコンセプトが見事に体現された90年代ロック屈指の傑作である。

この名盤『The Circle』リリース30周年を記念した限定盤が、2024年12月25日にリリースされている。

オリジナルアルバムのハイブリッドSACD化に加え、リマスタリングを施したリミックス / レア音源集、インタビュー映像、ミュージッククリップ集、放送番組映像など、現在入手が困難なマテリアルを多数収録。

さらに、未発表フォトを多数含む充実のブックレット、当時のツアーで販売されたツアーパンフレット(リサイズ版)を収録。

CD2枚、Blu-ray Disc2枚を豪華特製ボックスに収納した完全生産限定盤としてのリリースになっている。

ネットの声

「佐野元春の傑作中の傑作のアルバム。いや日本ロック史の金字塔だと思う。特に1曲目の「欲望」。彼のそれまでのキャリアの総決算の曲。決して勝ち誇る事はなく、逆に時間の不可逆性に対する透徹した眼差しがある。それはプラスともマイナスとも両義性を含む。自分はこの曲を聴きながら、物質的な欲望は要らないから、ただこの曲を聴いている時間だけは幸せがあり、己の実存があると。他の曲も彼はロックの歌い手としてカッコ付ける訳でも社会を煽る事もない。日常の実感としての「確かな事」だけを歌い上げる。しかも淡々と。しかし力強く。心の奥の大切な所に強く響くアルバム。」

「20代後半以降になってから初めて聴いても、このアルバムの持つ素晴らしさは心を揺さぶるでしょう。
でも、もし10代の頃にこのアルバムに出会えたなら、もっと幸せでしょう。
生涯にわたって寄り添ってくれる素敵な一枚になれるはずです。
特に派手なことを歌っているわけではないけれど、人生で岐路に立ったとき、迷ったとき、困難に押しつぶされそうなとき。
背中を押してくれたり、救済の歌になってくれる作品です。

リマスターのおかげで、音の奥行きが増し、元春のボーカルがより立体的に浮かび上がってきます。
各楽器の音も聴き取りやすくなっていますが、それらが一つになって作り上げるサウンドとボーカルは、全体を貫くトーンと相まってとても温かく感じます。」

「最初の長田さんのギターでやられました…欲望はずっと聞いていたい曲です。 全体的に粒揃いの曲で素晴らしい作品ですしデジパックのジャケットも格好よくAmazonさんで中古は格安です(佐野さんには失礼ですが)一枚持ってるといいと思いますよ。」


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