新型コロナウィルスの感染拡大によって、様々な市民生活に制約が生じ、経済活動が停滞しています。

そのため新卒者などを中心に、せっかく就職先が決まったのに内定が取り消されたという話を耳にするようになりました。

内定者は法律上どういう立場?

まず、知っておいてほしいのは、内定をもらった時点で、会社との労働契約が成立しているという点です。

したがって、内定者も労働者となり、法的な保護があります。

内定段階での労働契約を、難しい言葉で、解約権留保付労働契約といいます。

普通の労働契約と何が違うのかというと、まだ就労開始の時が来ていないので労働の義務がない点、場合によっては内定を取り消すという解約権があるよ、という点が普通の労働契約とは異なるのです。

大学の就職指導部・キャリアセンターに連絡・相談

仮に卒業式が終わっていても、3月31日までは「学生」です。(3月31日を過ぎてもOBです)

「今さら」などとは思わずに、内定取り消しにあったら、まず連絡すべき先は、大学の就職指導部やキャリアセンターです。

多くの大学では、こうした内定取り消しなどの場合には、卒業後も支援を続けています。

4月以降にも、解雇など問題に直面した時も、相談に行きましょう。

「就職指導部やキャリアセンターは当てにならない」と諦めて批判する人もいます。

しかし、緊急事態に頼りにすべきは自分の所属校の支援です。

今の大学生は、入学以来、先輩たちの好調な就職状況しか見ていないはず。

それだけに自分自身も先輩たちも、どうしたら良いか判らず、途方に暮れてしまうかもしれません。

しかし、多くの大学の教職員は、1992年頃のバブル景気崩壊、1990年代後半の金融不安、2008年のリーマンショック、そして2011年の東日本大震災といった時期を経験しています。

ということは、そのときに起こった「内定取り消し」を、実際に自身が体験したり、あるいは学生たちの対応を経験した人が多く存在しているのです。

大学や高校の先輩や同級生に相談しても、自分と同程度の経験や知識しかないことが多いですが、大学の就職指導部やキャリアセンターなどの教職員には過去の経験と知識があります。

これを利用しない手はありません。

ハローワークに相談

どうしても大学に相談しに行きたくないという人には、他にも公的な相談の窓口があります。

それは、ハローワークです。

ハローワークとは正式には公共職業安定所と呼ばれ、主に職業紹介事業を行う厚生労働省の機関です。

「大学生が相談しに行くところでは?」と思った人もいるかも知れませんが、学生や卒業後3年以内の人を対象とした「新卒応援ハローワーク」という窓口を全都道府県に開設しています。

もう一つは、都道府県の労働局です。こちらでも企業と労働者の就労関係の問題や、企業による労働法違反行為の摘発などを担っているところです。就職内定の取り消しなどの相談にも乗ってくれます。

困ったことがあれば、一人で悩まず、必ず相談する。これが遠回りのようで、一番早い解決に繋がります。

書類など証明するものはきちんと保存しておこう

採用内定が出た場合には、労働契約が成立したと認められます。

したがって、採用内定取消しは解雇に当たるとされます。

解雇については、労働契約法第16条の「解雇権の濫用」についての規定が適用されます。

つまり、採用内定取消しについても、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、権利を濫用したものとして無効となるとされています。

こうしたことに基づき、企業側に内定取り消しを撤回させたり、賠償請求を行うことを求めるには、弁護士の力を借りねばならないことにもなります。

もちろん、こうした事態は最悪だと言えますが、万が一のために準備をしておくことも重要でしょう。

会社側と取り交わした雇用契約書や就業規則等は、トラブルが起こらなくとも重要ですからきちんと保存しておかねばなりません。

研修などを受け、勤務態度などが記録された人事評価表などの通知書類も、重要な書類となります。

そして、企業側が解雇の事実と理由を証明する解雇通知書、解雇理由証明書なども重要です。

これらの書類をきちんと渡してくれないような企業は、そもそも危ないと理解しておいた方がよいでしょう。

4月からの会社側の姿勢にも注意

入社予定の企業から連絡が特にない人も、会社の経営状況に注意しておきましょう。

ある社会保険労務士は、

「内定取り消しをすると企業側の責任が追及されるために、自主的な内定辞退を求めたり、4月の入社後、試用期間中に理由を付けて自主的な退社を促すようなことをする企業もあるかも知れません」

と言います。

さらに、「自分から辞めると言ってはいけません。言えば、企業側の責任がなくなります。」とも付け加えます。

実は、企業が従業員を解雇する場合は、30日前の解雇予告行うかもしくは最低30日分の平均賃金である解雇予告手当を支払う義務が労働基準法で定められています。

しかし、試用期間中、入社から14日以内は即時解雇が可能になっているのです。

もちろん、解雇するには正当な理由が必要です。

その理由として認められるのは、大きく二つで極端に能力が不足している場合、それから遅刻や無断欠勤など職務態度が悪い場合です。

「責任を逃れるために、研修期間中に自分から辞めると言わせるような企業もないとは言えません。まあ、そういう会社だと早く判るという点では、長い目で見れば良いかもしれませんが」

と先の社会保険労務士は言います。

今までの内定取り消し多発期よりも、新たな可能性はある

1998年の内定取り消し者数は1,000人を超していました。

2002年には380人、2009年には331人、そして、2011年の東日本大震災の際には内定取り消し者数は416人、入社時期の繰り下げは2000人を超していました。
(厚生労働省「新規学校卒業者の採用内定取消しへの対応について」)

今回も経済への影響は、バブル経済崩壊、リーマンショック、東日本大震災などと同程度か、それ以上ではないかとされています。

しかし、当時と今回とは大きく異なっていることがあります。

それは、企業側の高い採用意欲が続いているという点です。

帝国データバンクが2020年3月12日に発表した「2020年度の雇用動向に関する企業の意識調査」によれば、2020年度に正社員の採用予定がある企業は前回調査(2019年2月実施)から5.0ポイント減少の59.2%となり、 2年連続で減少です。

6年ぶりに6割を下回る大幅減となっており、調査期間が2月後半だったこともあり、先行きに多くの企業が不安を抱えていることが現れています。

一方で、「大企業」は82.9%と7年連続で8割台となり、 高い採用意欲が続いているのです。

「中小企業」は53.6%と昨年よりも慎重な採用姿勢が見られるものの、依然として採用予定がある割合は高水準のままなのです。

これらを考えると、今までの内定取り消し多発期よりも、新たな可能性は、まだあると言えます。

就職が決まっていた会社に未練もあり、諦めきれない気持ちも強いと思います。

しかし、「危ない企業に入らずに済んだ」と前向きに考え、できるだけ多くの人の支援を受け、心機一転、次を目指して動きましょう。

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