老夫婦の穏やかな日常を描いたマルコメのアニメCMがテレビで放送され、SNSを中心に多くの感動の声が上がっています。

2014年にスタート

家族の絆を温かなタッチのアニメーションで描く同CMシリーズは、2014年にスタートしました。

以来、これまでに8作を公開しています。

90秒という短い尺ながら、短編映画のような奥深いストーリーと良質な作画にはファンも多く、新作のたびに「泣ける」と話題を呼んできたのです。

とくに反響が大きいという今作、そして老舗メーカーであるマルコメがアニメCMを放送する理由はどういったものなのでしょうか

動画再生数の伸びがすごい!中国でも話題のアニメCM

定年退職した夫と、足を悪くして台所に立てなくなった料理好きの妻。

海辺の町で静かに寄り添って暮らす老夫婦の日常風景を、叙情的なアニメーションで描いた『料亭の味 液みそシリーズ いつまでも一緒に篇』が公開されたのは、今年1月のこと。

SNSでは

「互いが互いを支え、愛を共有し、苦難を乗り越えて共に寄り添う。ささやかだけど確かな愛のカタチ…」
「これからも一緒に年を重ねていって、いつか私たちもこんな夫婦になれたらいいな」

といった感動の声が数多く上がり、その反響を受けて再び2月25日にオンエアされることになりました。

これまでも「マルコメの泣けるアニメCM」として話題を呼んできた同シリーズ

広報担当者によると、

「今作は公式YouTubeチャンネルの再生数が180万回、一般ユーザーがアップしたTwitterの動画は1370万回(2月25日現在)と、これまでにない早さで伸びています」

とのこと。国内のみならず、中国でも話題になっているとか。

「大変な時期の中国で話題になるとは、とてもありがたいですね。さらに、1月に初オンエアした直後には、(夫の)道夫役の声優さんから、『まわりからの評判がすごくいいんです。次回のオンエアはいつですか?』とお電話をいただいて。声優さんからこのような連絡を直接いただくのも、今作が初めてのことでした」

第8弾 いつまでも一緒に篇 90秒

2020年(令和2年)1月26日放映開始。

定年退職した道夫(声:峰秀一)と妻の洋子(声:寺内よりえ)は二人暮らし。最近足を悪くした洋子は、道夫に負担をかけまいと施設に行ってもいいと考えていたが、道夫から家にいて欲しいと止められた。「自分が家事をすれば妻はずっと家にいてくれる」と、慣れないながらも洋子に代わって料理をつくる。ある夜、液みそでつくったあらだしを合わせたみそ汁を出してみたところ、洋子はいつもと違うみそ汁に気づき「おいしい…」とつぶやく。道夫は内心喜び、「いただきますと、ごちそうさまだけじゃ足りなかったんだな」と気づく。翌朝、洋子を乗せた車いすを押しながら「今夜、何食べたい?」と尋ねる道夫。洋子は「何でも」と応える。すると道夫は、「そういうのが一番困るんだ」とこぼす。いつも自分が言っていたことを言われて思わず吹き出す洋子。本当は自分で家事ができなくなることを不安に感じていたことを打ち明ける。そして「じゃあ、肉じゃが」「おみそ汁は、赤だしでね」洋子は道夫の気持ちを感じて、これからも二人で暮らしていこうと決める。「ああ、まかせとけ」と答える道夫。二人の向こうには海が煌めいている。

裏側に老舗企業の課題

マルコメが創業したのは安政元年、1854年のこと。

それから160年以上の長きにわたり、日本の食卓に密着した商品を届けてきました。

そんな屈指の老舗味噌メーカーのCMがアニメというと、意外に感じる視聴者もいるのではないでしょうか。

ではなぜ、6年前にマルコメはアニメCMの制作に踏み切ったのでしょうか。

それは、その前年に同社が新たに設定した『日本のあたたかさ、未来へ』というスローガンがきっかけだったというのです。

「弊社は社員400人程度とそれほど大きな会社ではありませんが、規模の割にはありがたいことに広く認知をいただいています。しかしその認知は、昭和の時代の『マルコメくん』CMのイメージのままでストップしているのではないか? という課題意識もありました」

マルコメ=安心安全というポジティブなイメージは、幅広い世代に浸透しています。

しかし、日本人にとって味噌はあまりにも身近なもので、ともすれば「どのメーカーの味噌もそれほど変わらない」と認識されやすいのです。

数多くのメーカーがひしめく中で、これからの生活者に「なんとなく、マルコメがいい」と選んでもらうには? 

老舗メーカーが未来を見据えた岐路に立たされたのが、2014年の新CM企画のタイミングだったといいます。

「さらに当時、弊社は新商品として『料亭の味』ブランドの徳用袋を開発していました。廉価商品をアピールするCMは、実写で作るとチープな見え方になりがちなこともあります。だけど『料亭の味』の価値は価格ではなく、家族の絆や温もり、そして時代ごとの生活者に寄り添う手軽さとおいしさにあります。その世界観を伝えるにはアニメーションという手法が最適だと考え、上司に掛け合ったんです」

米アカデミー賞短編アニメ映画賞を受賞した制作会社を起用

そうした経緯を経て生まれ、長く愛されるようになったアニメCMシリーズ。

とくに大きな反響が見られる今作については、

「いろいろ理由は考えられますが、まずは作画のクオリティの高さが大きかったと思っています」と担当者。

これまで同シリーズの制作を一貫して手掛けてきたのは、米アカデミー賞短編アニメ映画賞を受賞した実績のある映像制作会社・ロボットだ。

「ロボットさんとは5年間ご一緒してきて、回を重ねるごとにいいものになっていったという自負があります。さらに今作では、ロボットさんが集結してくださったアニメーターの豪華さに、我々も驚いたほどでした」

アニメーション制作は、繊細な人物の感情表現描写に定評のあるアンサー・スタジオ。

また美術監督には、美しい背景描写で評価の高いアニメ工房婆娑羅など、日本のアニメ界を牽引するスタッフが集結。

アニメに詳しい人であれば、クレジットを見ただけでもクオリティの高さに納得するでしょう。

リアリティ溢れる物語は実体験から

一方で、CMで描かれる“老々介護”というタイムリーな時代背景に、胸を締め付けられた人も多いようです。

SNSでは「こんなふうになりたい理想の夫婦」と共感する声もありながら、「自分の親もこんな感じなのかな…」など、郷里の家族に思いを馳せるようなコメントも散見されます。

“CMの中の出来事”ではなく“自分ごと”として重ねて見てしまうのも、同シリーズの魅力の一つ。

そのためか、「つい見入ってしまった」とYouTube広告のスキップ率も極めて低いようです。

そうしたリアリティあふれる血の通ったストーリーのベースは、常に「日常に転がっている」と担当者は言います。

「それこそ、シリーズ1作目の『母と息子篇』は、寮生活していた私自身の学生時代の思い出を、新社会人に置き換えて描いたもの。母親が段ボールで送ってくれる日用品に『こっちでも買えるって…』とつぶやくセリフがありますが、それも実際に私がよく言っていた言葉なんです。個人的な体験ではありますが、一方で“一人暮らしあるある”じゃないですけど、母親への感謝とか、それをストレートに言えない気恥ずかしさとか、誰しも似たような思い出はあるのではないでしょうか。また、今作の『今夜、何食べたい?』というセリフも、私自身が実生活でそう聞かれることの幸せを感じたからこそ、入れた言葉なんです」

90秒という短尺だけに、盛り込める要素やセリフは少ない。

だからこそ、行間からじんわり滲み出る味わい深さが琴線を揺さぶるのでしょう。

まるで短編映画のようなストーリー構成の見事さも、多くの視聴者の心を掴んでいる要因です。

「クリエイティブディレクターの方も常々、『登場人物が1人で動き出すまで待つ』と言っていますが、名前はもちろん、これまでの人生など、CMで描写されない要素にもこだわっています。またそれほど多くのセリフが入れられない分、一つ一つの言葉はとても大切にしていて。今作の中に、夫の『いただきますとごちそうさまだけじゃダメなんだなぁ』というモノローグがあり、すごく心に残ると言っていただけるのですが、実際は制作過程で『これはいらないんじゃないか』『いや、この言葉が命なんだ』という攻防があって残ったセリフなんです。こんなふうに、制作に取り掛かるまでのディスカッションには毎回とても長い時間がかかるため、現状は年1本ペースでしか制作ができないんですよ」

生活者にいかに語ってもらえるかを大事に

広報担当者はアニメCMの良さを「みんなで語りたくなるところにある」といいます。

事実、SNSでは同CMシリーズについてのなごやかな会話から、ストーリーがあまりにもリアルなためか、内容によっては議論が巻き起こることもあるよです。

「ほとんどがポジティブな反応なのですが、これだけ多様な時代だけに、全員を満足させることはなかなか難しいなと思うことはあります。それでもなんとか、誰が見ても不快にならない、傷つかないものは目指していきたいですね。ただ、たとえネガティブな意見だとしても、語っていただけることが本当にありがたい。ブランド自体をうまく伝えるというよりも、やはり生活者にいかに語ってもらえるかを大事にしています」

近年の代表的なアニメCMといえば、大成建設や東京ディズニーリゾート、日清食品などがありますが、『料亭の味』シリーズも8作を重ね、確実にその一つに名を連ねつつあるのです。

現在は、9作目を制作中とのこと。

次はどんなストーリーになるのか、楽しみに待ちたいものです。

ネットの反応

「昨夜、このCMを初めて見ました。足が不自由になった奥様に変わり、旦那さんが一生懸命料理するのを見て、身につまされました。私は、家事のほとんどを妻に頼り切りだから、もし、同じような事になったら、多分あの旦那さんのようには、出来ないので、情けない気持ちでいっぱいになりました。見る人々によって、捉え方は様々でしょうけど、私のようなグータラ亭主は、反省をした方が良いと思えました。」

「『いただきますとごちそうさまだけじゃダメなんだなぁ』これは本当に外さなくて良かったですね。あるかないかではずいぶん違ってきたのではないかと。全て見させてもらいましたが、話によって狙っている年代層が違っていて、商品の押し加減も強弱がついていますね。よく考えられていますね。味噌や味噌汁には、誰もが何か思い出を持っていると思います。思い出も味も人にしみている食品のひとつです。小さな思い出を掘り起こして、これからもほっとするCMを作り続けてください。」

「夕べたまたまテレビで観ました。純粋に感動して泣いてしまいました。きっと年代によって印象は異なる描写だと思いますが、生きていて年をとると誰もが遭遇する場面かも知れませんね。」

『マルコメくん』から泣けるアニメに…時代は変わりますね。

今はこういった優しいアニメが求められているのかも。見ているとホッとします。

マルコメアニメCM1作からドーンと紹介

第1弾 母と息子篇
2014年3月29日放映開始。就職して1人暮しを始めた主人公(声:増尾興佑)のもとに、田舎の母(声:堀越真己)から荷物が届く。中身は雑貨や食材、そして即席味噌汁。味噌汁の湯気の中、息子を気遣う母の姿が浮かび上がる。決して順調ではない新生活だが、主人公はいつも母からの荷物と、母の姿に元気づけられる。初めてのボーナスで、主人公は母にセーターを贈る。プレゼントを喜ぶ母と食卓を囲むかのように、主人公は味噌汁を味わう。

第2弾 単身赴任篇
2014年10月4日放映開始。単身赴任中の父(声:中田顕史郎)のもとを[* 1]、小学生の姉妹(声:鎗水遥、太田梨香子)が2人きりで訪ねる。不自由な食生活であろう父のため、姉妹は父の好物ばかりのご馳走を手作りしようと張り切る。母(声:武山佳世)のもとで練習したものの、料理の出来栄えは散々で、姉妹は泣きながら詫びる。しかし父は娘たちの想いを受け止め、料理を口にして味を誉め、姉妹は笑顔を取り戻す。味噌汁を飲みつつ、父娘は笑顔を交わす。

第3弾 夜食篇
2015年(平成27年)2月22日放映開始。大学受験生の娘(声:根岸薫子)と父(声:若林正)は、父娘の会話が減っていることを、密かに気にしている。娘が深夜の勉強中に台所に行くと、おにぎりとカップ味噌汁が用意されている。翌朝に母(声:永山あけみ)に礼を言うと、母は知らないと言う。その夜に娘が台所を覗くと、父が不慣れな手つきでおにぎりを握っている。おにぎり2種類のどちらを選ぶか、父とじゃんけんで決めつつ、娘は顔を和ませる。

第4弾 上京篇
2015年4月7日放映開始。友人に逢うために広島から上京した和代(声:内田尋子)を、東京在住の息子の貴史(声:児山隆)は自宅に泊める。かつて不良だった貴史は家庭を持ち、共働きで早朝から多忙な妻の裕子(声:明石香織)に代わって弁当を作っている。トーストを齧る孫の広貴(声:櫻井優輝)を見て、自分も朝食はパンで十分と遠慮する和代に、朝食はいつもご飯だろうと、貴史はご飯と味噌汁の朝食を勧める。和代は息子の成長を喜び、そっと涙ぐむ。

第5弾 母になれば篇
2017年4月6日放映開始。学生の果穂(声:池田葵)は、母の久子(声:枝村みどり)が常に自身のことを後回しにし、家族を最優先にして家事ばかりの生活を過ごしていることを、何が楽しいのかと疑問に思い、自分が大人になっても母のようにはならないと考える。月日が流れて果穂は就職、結婚。かつて母を疎ましく思っていたことを心の中で詫び、家族を何より大事にできる母親の存在に憧れながら、身籠った腹を撫でつつ、台所の母の味噌汁作りを手伝う。

第6弾 ミソスープ篇
2018年(平成30年)5月17日放映開始。畳屋を営む父のもとに、娘ゆり(声:厚地彩花)が、イタリア人の恋人を紹介しにやって来る。昔気質の父は渋い顔で、最後まで理解を示さない。シチリアで開かれた結婚式。大荷物を抱えた父が、顔を赤らめて現れる。レストランで湯を貰って即席味噌汁を飲もうとすると、新郎の家族がいる。父はたどたどしく「ミ、ミソスープ……」と皆の分の味噌汁を勧め、家族たちは大喜びする。ゆりは一同が共に食事する様子に、そっと涙する。

第7弾 ふたりでおやすみ篇
2019年(平成31年)3月15日放映開始。シングルマザーの真美子(声:のん)は、小学1年の息子の陸(声:吉田奏佑)と2人暮し。真美子が風邪で仕事を休んだ日、陸も腹痛で学校を休む。真美子は食事の支度もままならないが、陸は嬉しそうに味噌汁作りを手伝う。真美子は仕事も家庭も中途半端と、自分を責める。後日、陸の学校を訪れた真美子は、陸が絵日記に、母と一緒にお休みし、一緒に味噌汁を作ったと楽しげに書いていたと知る[* 2]。学校から帰ってきた陸を、真美子は両手一杯に抱きしめる。

ある日のじーちゃんとばーちゃんと3人での晩御飯。ばーちゃんが「今日は味噌切らしたっちゃ…」なんて言うまでじーちゃんも僕もいつもの味噌汁と思って飲んでて…醤油と具で味噌汁の味を隠したのか…じーちゃんはばーちゃんの作ったものに何も文句を言わないから、気がついてても黙って味噌汁飲んでたんだろな…というのに大人になって気がついた…。というよりも、あらかた飲んだ後に2人の反応を確かめるように白状するばーちゃんの茶目っ気ぶりがね。

そんなことを思い出しました。

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