年金の減額が加速…死ぬまで働けってこと??

「年金の減額」がいよいよ本格化…これから高齢者の生活に起きる「ヤバい現実」

公的年金の支給額が4月分から減額されます。

同じタイミングで制度改正も行われており、受給開始年齢を75歳まで先送りできるようになりました。

高齢者の就労を促す狙いがあるものの、年金財政の悪化に伴う給付抑制と表裏一体であることは言うまでもありません。

今回の改定によって、いよいよ本格的な年金減額時代が始まったと見てよいでしょう。

年金は減額の方向へ

2022年4月1日、公的年金の支給額改定が行われ、4月と5月の両月分(6月に支給)から0.4%の減額が行われます。

政府は今回の減額について、新型コロナウイルスの感染拡大で現役世代の賃金が減ったことが原因と説明しており、メディアもそれに倣った報道をしているのですが、十分な説明とは言えません。

公的年金支給額の改定というのは毎年、行われています。

基準となる指標は主に、(1)物価変動率、(2)賃金変動率、(3)マクロ経済スライドによる調整率の3つです。

物価変動率は前年の消費者物価指数が基準となっており、2021年は0.2%のマイナスでした。

賃金変動率については、名目手取り賃金変動率という、過去4年から2年の賃金変動率に可処分所得割合の変化率などの係数を乗じた指標が使われています。

おおまかに言えば、賃金の動きに変動する数字であり、今回は0.4%のマイナスとなっています。

3番目のマクロ経済スライドは、主に現役世代の人口減少分に合わせて高齢者の年金引き下げる仕組みで、この項目による減額はマイナス0.3%です。

今の年金制度には、物価に合わせて金額を増減する仕組みと、同じく賃金に合わせて金額を増減する仕組み、そして、現役世代の人口減少に連動して強制的に年金を減額する仕組みの3つがあり、状況によってどれが優先されるのかが変わります。

賃金変動率が物価変動率を下回った場合、物価ではなく賃金を用いるルールとなっており、さらにこの数字がマイナスだった場合、マクロ経済スライドは発動されません。

今回は、たまたま賃金の下落が大きかったことから賃金が減額要因となったものの、賃金や物価がプラスになった場合でも、現役世代の人口減少による減額が行われるので、年金は基本的に増えない仕組みになっています。

現役世代の賃金下落で年金が下がったと聞くと、賃金が上がれば年金も増えるとイメージする人がいるでしょうし、政府もそうした効果を狙ってこのような説明をしているのかもしれないが、現実にはそうはなりません。

簡単に言ってしまうと、今の年金制度は物価や賃金の動向で上下するものの、同時並行で現役世代の人口減少に伴って強制減額していく仕組みが動いている。アクセルとブレーキを両方踏んでいる状態なので、大きな流れとして年金は増えない方向性にある(実質的に減る方向性にある)と考えて良いでしょう。

「高齢者は働け」と言う政府

今回の改定と併せて、政府は年金制度の改正も実施しており、受給開始時期のルールが変わります。

従来の制度では、年金の受給開始年齢は65歳を中心に60から70歳までの10年間が設定されていました。

新しい制度では、これが60~75歳の15年間に拡大されます。

政府は高齢者の就労を促すため、年金支給を繰り下げる制度を設けたのですが、今回はそれをさらに拡大させ、支給開始年齢を75歳まで繰り下げられるようになりました。

支給開始を75歳まで繰り下げた場合、65歳支給開始に比べて84%年金受給額を増やすことができます(1カ月あたり0.7%×120カ月)。

75歳まで十分な収入を確保できる人にとっては、8割の増額になるのは大きなメリットかもしれませんが、この条件に当てはまる人はそう多くないでしょう。

実際には60歳を過ぎた段階で、すでに生活が苦しくなり、年金の繰り上げ支給を望む人も少なくありません。

繰り下げ支給とは反対に、繰り上げ支給を行った場合、年金が減額されてしまいます。

今回の改定では、減額率が月あたり0.5%から0.4%に多少緩和されたものの、それでも繰り上げた場合には25%近く年金が減るのです。

近年、生活が困窮する高齢者が増えており、この流れを放置すると生活保護受給者の増加につながるのは確実でしょう。

減額率の緩和は年金財政にとっては逆効果ですが、背に腹は代えられないというのが政府のホンネだと思われます。

高齢者に積極的に就労して欲しいという政府の意向は、在職老齢年金制度の見直しにも反映されています。

これまで、一定の収入がある人の場合、厚生年金を減額する仕組みが適用されており、60~64歳では、賃金と年金の合計額が月額28万円を超えると減額対象となっていました。

この基準があるため、あえて就労しない高齢者もいたことから、「就労意欲を阻害する」などの批判も出ていました。

このため、今回の改定では基準額が47万円まで引き上げられることになりました。

月額47万円を単純計算すれば年間564万円なので、結構な年収であり、働ける人にはとにかく働いてもらって、保険料を納付してもらおうという算段です(ちなみに65歳以上については以前から基準値が47万円だったので、同じ金額が継続となる)。

「生涯労働制」への移行宣言

今回の年金減額と制度改正を整理すると、以下のような流れであることが分かります。

年金財政が悪化していることから、基本的に政府は年金支給額を減らす方向で調整を行っています。

物価上昇を反映して支給額を増やす仕組みは存在するものの、現役世代の人口が減った分、年金を強制減額する仕組みが存在するので、物価上昇分の多くは、この減額で相殺されてしまいます。

つまりこれからの年金支給額は、物価上昇分ほどには増えないと考えるべきでしょう。

そうなると物価上昇分を補うためには、就労を続ける必要があり、就労意欲がある高齢者にとっては、ある程度、有利になるような制度に移行しつつあります。

つまり、一連の改定は、老後は年金をもらって生活するという価値観を改め、基本的に生涯を通じて就労し、年金は賃金を補うものであるという新常識を国民に求めていると考えた方がよいでしょう。

こうした価値観の転換については、いろいろな意見がありますが、30年間経済が成長せず、現役世代の人口が減っている以上、避けて通れないと考えるべきでしょう。

しかしながら、年金の支給基準の決定は極めて複雑な仕組みになっており、国民にとっては、とにかく分かりづらいところです。

この分かりにくさでは、多くの国民が年金制度を理解し、運営のあり方について正面から議論していくのは至難の業でしょう。

多くのメディアや一部の専門家も、十分に内容を理解しないまま、政府の説明をそのまま垂れ流しており、国民の理解はますます遠のいています。

公的年金というのは、もっとも重要な政策のひとつであり、国民生活の維持にとってはもちろんのこと、経済的にも極めて大きな影響があります。

これだけ複雑になってしまったのは、とにかく目立たないように支給額を減らしたいとの意図から、小手先の小さな改定を繰り返した結果です。

本来であれば、マクロ的な事情から、従来の年金水準の確保は不可能であり、減額を中心とした改定を行っていかなければ制度を維持できないというストレートな説明を国民に行うべきです。

仮に国民が減額を中心とした既存制度の改定を望まないのであれば、抜本的な年金制度改革に手を付けなければいけません。

一連の責任を担っているのは当然、政治ということになりますが、その点において今の政界は非常に心許ないところです。

岸田政権誕生前の自民党総裁選において、(その内容の是非はともかく)年金制度改革について言及したのが河野太郎候補ただ1人だったという事実が、今の永田町の現状をよく表わしています。

ネットの声

「一連の改定は、老後は年金をもらって生活するという価値観を改め、基本的に生涯を通じて就労し、年金は賃金を補うものであるという新常識を国民に求めていると考えた方がよい。ここまで言うなら年金加入は選択制にした方がよい。年金とは国民が支払っている「保険料」で運営されている。仮にも「保険」と言うならば選択があって然るべきでは。そもそも保険料を支払っている側に何の説明、了承もなく一方的に改悪するのは詐欺である。生涯就労を推進するならば働く側も自分のライフプランに沿った民間の保険など選択肢があるのは自然なことでは。」

「要するに身体が動く間は死に物狂いで働けという弱者をいたぶるような制度になりつつありますね。健康体なら75歳までの労働も可能かもしれませんが、現実的には70代にもなれば健康上の問題を抱えている人が多いと思います。60歳になったらすぐに年金を貰いたいという困窮している方々だって健康体とは限りません。病院代が高くて診察を受けたり通院したりが不可能な事が祟り、結果不健康になった人も少なからず居ると思います。日本もヨーロッパ諸国のように老後の医療に対する負担が少なければ、もう少し病院に通える人が増えて健康になる人も増え、結果的に長く働く事が出来る人が増える気がするのですが。そうすれば今の自転車操業のような年金システムも少しはマシになるのではないかと思います。」

「年金問題は、生活保護問題とセットにして考えるべき。生活保護制度が無くなれば、年金を払わない人は大幅に減るはず。まずは、その前提で考えて行くべき。完全に無くすのは人道的観点からも直ぐには難しい。だから、まずは生活保護を受けたくないと思うような政策を取っていくべき。事故や老齢で動けないとか、一生治らない難病等でどうしてもと言う奴は例外として…それ以外の75歳以下でそれなりに動ける奴なんかは、中古品や古着や廃棄直前の食品の現物支給だったり、空き家利用等、決められた住居にしか住めないようにしたりといった、最低限の生活は出来ても選択自由度を下げれば良い。それだけで、年金をちゃんと払う奴が増えて生活保護費も減るはずだし、空き家問題や食料廃棄問題や古着、中古家具等の廃棄問題、それらによる二酸化炭素の増加の問題等、色々な問題が緩和できる。」

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