4月から年金支給額が引き下げへ…「年金制度」の欠陥と限界が見えてきた 

4月から年金支給額「引き下げ」…明らかになってきた年金制度の「欠陥と限界」

今年4月から、公的年金の支給額が0・4%引き下げられます。

保険料を支払っている現役世代の賃金が減少したことにあわせたものです。

引き下げは2年連続で、過去10年間で見ると’14年の0・7%に次ぐ引き下げ幅になっています。

年金額を実質的にカット

いっぽう、「マクロ経済スライド」は昨年に引き続き発動されませんでした。

こちらは現役世代の負担を軽減するため、2004年の年金改正により導入された制度で、聞いたことがある人も多いでしょう。

社会情勢に応じて年金額を「自動的に調整」する仕組みなのですが、この言い方はいかにも役所的で、要は年金額を実質的にカットする仕組みです。

通常、前年に比べて2%の物価上昇があった場合、本来的には年金支給額も2%引き上げないと、実質的な支給額は目減りするのです。

ところが、マクロ経済スライドを発動する場合、年金支給額を物価上昇と同じ2%分増やすのではなく、一定の調整率を差し引いた割合でしか引き上げないのです。

たとえば、調整率を0・9%とすると、2%から0・9%を差し引いた1・1%がマクロ経済スライド発動時の引き上げ率となります。

実質的に、0・9%分の年金を削減しているのと同じ効果があります。

マクロ経済スライド

受給者からすれば年金額は「名目的に」1・1%増えているので、損をしたという実感は少ないでしょう。

そもそも、マクロ経済スライドという言葉の響き自体が、削減というイメージを想起させにくいのです。

受給者の不満を回避するよう考え抜かれた仕組みと言えます。

もっとも、2004年にマクロ経済スライドが導入されて以降、発動されたのは過去3回(’15年度、’19年度、’20年度)しかありません。

なぜなら、「物価や賃金の上昇幅がマクロ経済スライドの調整率より小さい場合、もしくはデフレによって物価や賃金がマイナス(▲)の場合には、マクロ経済スライドを発動しない」というルールがあるからです。

どういうことでしょうか。

マクロ経済スライドの調整率を先程とおなじ0・9%と仮定しましょう。

マクロ経済スライドを厳密に適用する場合、賃金の上昇率が0・2%にとどまった場合は0・7%分、賃金の上昇率が▲0・2%の場合は1・1%分の年金を引き下げる必要があります。

先送りの限界が見えてきた

ところが、前述のようにこうしたケースの場合はマクロ経済スライドは適用されません。

引き下げ額は「名目額」が前年度を下回らない範囲内にとどまり、なおかつ引き下げ率も賃金・物価の下落率分が限度になります(4月からの0・4%という引き下げ率も、過去3年間の名目賃金の変動率の▲0・4%と揃えたものだ)。

こうした仕組みなので、マクロ経済スライドはたった3回しか発動されませんでした。

結果、デフレ経済のもとでは、実質的な年金の支給水準が想定よりも下がらず、そのぶん、積立金の取り崩し額も大きくなったのです。

制度の永続性を考えれば、デフレの際こそマクロ経済スライドを発動できるようにすべきなのは自明です。

しかし、有権者のなかで大きな割合を占める年金受給世代からの反発を警戒するあまり、政権与党はその議論を避けてきました。

「先送り」の限界はもう見えています。

膨張を続ける医療・介護費とあわせ、早急な制度改革が必要でしょう。

ネットの声

「政府は高齢者の支持を失わないように、社会保障費を増やし年金が減らないようにしようとしたが取り下げましたね。
年金や医療費の国庫負担が大きいのが実態。高齢化しても年金額を維持しようとすれば、国や自治体の負担が増え、増税が必要になることの方が欠陥のように思う。
今の制度を増税せずに維持しようとすれば、経済成長や労働人口増が前提となる。その施策を検討や強化して欲しいものです。」

「費用対効果の乏しい治療や市販薬で代替できる物を保険適用から外すなど、医療福祉の見直しは必至。
高齢化に対応した税制と維持を前提としない保障のあり方を世論に示さなければならない。」

「これだから老後の生活設計が全く立てられないのだよ。定年したら年金なんて当てにならないと言えど頼らなければ生活出来ない。先だってのばら蒔き支援策を提案するなら安定した年金制度の運用に努めて下さい。」

おすすめの記事