Netflix「セナ」善人セナが描かれている!?

Netflixシリーズ「セナ」 ヒーローの生き様に過度なフィクションは不要

11月29日(金)より、Netflix シリーズ「セナ」(全6話)が配信中だ。

F1世界選手権で計3度のワールドチャンピオンに輝いた史上最高のF1ドライバー、アイルトン・セナの人生を初めてドラマ化した骨太かつ感動の人間ドラマだ。

このドラマは、セナの輝かしいキャリアを振り返るのみならず、彼の人柄や家族・友人・恋人との関係も掘り下げ、周囲から愛されたセナの真の姿に迫っていく。

リアリティを追求

彼の知られざる素顔に迫る本作は、セナの実家でも撮影が行われるなど親族の積極的な協力のもと生み出され、リアリティを徹底的に追求している。

伝説的な活躍と成功だけでなく、彼の内側にあった苦悩、家族や友人、恋人との関係、そして、悲劇。彼の人生を誠実に映し出そうという制作陣の真摯な姿勢が伝わってくる。

セナの没後30年となる2024年に生み出された「セナ」。

“音速の貴公子”が駆け抜けた景色、勝利と挫折、喜びや悲しみ、そして人生を、見つめてほしい。

時代を魅了した英雄

“音速の貴公子”アイルトン・セナの衝撃的な死から、今年で早30年。

その節目の年に配信された、Netflixシリーズ「セナ」は、カート界を席巻した少年時代から、F1での栄光、そしてイモラ・サーキットでの悲劇まで、彼のレース人生を、その愛や苦悩を含めて描いている。

F1界に彗星の如く現れ、強烈な輝きを放ち、去っていった男。

たった10年余りのF1歴の中で、優勝41回、ポールポジション65回獲得、そして3度の年間王者に輝いた。

凄まじい成績である。

その後、レース数の増加や技術の進化、新世代ドライバーの台頭もあり、セナの叩き出した記録は、数字としては既に色褪せてしまったかもしれない。

だが、ファンの目に焼き付いた彼の神がかり的な走り、勝利への執念、圧倒的なカリスマ性は、今なお色褪せていない。

当時、セナの人気はF1そのものを超えていた。

特に日本では。

英雄と奉られた母国ブラジルに次いで、世界で2番目にセナを愛していたのは日本人ではなかったか。

欧州中心の強大なレース界そのものに、欧州人ではないセナが立ち向かう。

それもHondaエンジンで‥‥といういかにも日本人好みなストーリーに加え、彼のいつもどこか寂しげで憂いを帯びた表情は、カーレースに全く興味のなかった女性の心も掴んだ。

もはやアイドルだったのである。

現在、野球を見なくても大谷翔平を知っているように、F1を全く見ない者でもアイルトン・セナを知っていた。

当時を思い出させる演出

根強いファンも多いセナだけに、今回のドラマ化には期待とともに不安の声も聞こえていた。

中途半端なドラマをつくって伝説に泥を塗るのはやめてほしい」と。

しかしNetflixはアルゼンチンのスポーツカーメーカーCrespiに依頼し、なんとこのドラマのためだけに当時のマシンそっくりの“走行可能な”レプリカを製作した。

それも、セナの象徴とも言うべきマクラーレンMP4シリーズのみならず、ロータスやウィリアムズを含む彼のレースキャリアを彩ったほとんどのマシン、フェラーリやベネトンなどのライバル車まで計22台を作りあげた。

さらに、彼の得意コースだったモナコのメインストレートをそっくりそのままウルグアイに建設。

巨大な降雨装置を使って30メートルに渡って雨を降らせたというのだから、制作陣の本気ぶりたるや推して知るべし。

レース以外の場面も抜かりはない。セナを演じるのは同じくブラジル出身で、映画『フェラーリ』でもレーサー役を演じた、ガブリエウ・レオーニ。

「俳優としてセナに再び命を吹き込むのは最大の栄誉だ。全身全霊で臨む」と語る。

顔立ちがセナに激似というわけではないが、セナがまとっていた憂いを見事に体現している。

日本人にとってはHonda総帥・本田宗一郎や後藤治、僅かだが中嶋悟などが登場するのも嬉しい。

おまけにセナの訃報を伝える当時のフジテレビによる現地中継映像も使われている。

当時を知っている人ほど中実に再現されたシーンの数々に驚くはずだ。

中でも、初めて母国ブラジルGPを制し、極度の疲労で落としそうになりながらもトロフィーを高く掲げるシーンは、記憶とピタリと重なり涙してしまう往年のファンもいるだろう。

同じくNetflixで配信中のドキュメンタリー映画『アイルトン・セナ ~音速の彼方へ』と見比べてみるのも面白い。

ドラマ以上にドラマチックな実話

そんなリアリティを追求した本作にも気になるシーンがある。

F3の年間チャンピオンを決める最終戦、彼はエンジンが本来の力を発揮するまでの時間を短縮するため、冷却器の排気口をテープでふさぐという奇策に出る。

そうすれば確かにエンジンは瞬く間に温まるだろうが、すぐオーバーヒートしてしまう。

それを防ぐため、なんと彼はサーキットを全速走行しながら、シートベルトを緩め、身を乗り出し、排気口のテープを剥がすのだ。

このいかにも映画的なアクロバットはさすがに創作ではと疑った。

だがセナの全レースをまとめた書籍にそのような記載があることから、信じがたいが真実のようだ。

波乱万丈過ぎる彼の人生を描くとき、 いかにもドラマチックな創作を入れる必要はない。

上述のブラジルGPや、14位まで落ちながら奇跡の大逆転勝利を決めた88年の日本GP、2年連続でのプロストとのクラッシュなど、実話がそこらのドラマ以上に劇的なエピソードに満ちているからだ。

ただ不満がないわけではない。

本作がブラジル製作ゆえ、“セナが正義、それ以外を悪”と見なし過ぎている面はあるし、プロストや主催者(特に当時のFIA会長・バレストル)とのぶつかり合いの描写に注力するあまり、マンセルやシューマッハなど他のライバルたちの描写があまりに少ない。

それでも限りない愛と情熱とプライドを持って作り上げられたこのドラマは、あの時代を知っている者には当時の熱さを思い起こさせ、知らない者にもその熱を伝える、そんなエネルギーを確かに持っている。

ネットの声

「セナも南米からF1に昇格して色々理不尽なこともあった。
特にトールマン時代のモナコで、雨の中猛然と追い上げる中プロストがレース中止を促してそれをバレストルが指示を出すシーンなど、まるで悪役とヒーローのように誇張されていると思うだろうけど、これは実際にあった話だからね。
今でもこのレースはことあるごとに語られている。
セナの納得いかない表情で2位の表彰台に立つ姿をみると、見てるこっちの方が何もと言えない悔しさがこみあげてくる。
色々意見もあるだろうけど、個人的にはこうした逆境を乗りこえてチャンピオンになったセナは本当にF1界のヒーローだよ。
今年の理不尽ともとれるレッドブル人事のこともあって、角田選手にも通じるものを感じてしまった。」

「もうセナが亡くなり30年か。当時はプロストが好きだったからセナへはあまりいい印象はなかったけど当時においてセナが最速であり偉大なドライバーであったのは疑いようのないことだ。これはセナが好きだったとか嫌いだったとかの話しじゃない。セナもプロストも時代が被らなければもっとずば抜けた記録を残せた。だけど歴史上5本指に数えられるであろう2人が同じ時代でしかも同じチームで世界一を競いあった。だからこそファンを熱狂させた。セナもプロストもお互いに最強で最高のライバルがいたからこそ全力で戦えた。時には交錯することもあったけどコース上で戦うもの同士にしか分からない絆がそこにはあったと思う。」

「予想通りというか、セナが善でプロストが悪、さらにロータス時代のピーターウォーまで悪人かのような描き方はやり過ぎだし、フランクウィリアムズも実物とはかけ離れてる印象だった。

日本との関わりも結構強調されていて日本人的には良いのかも知れないけど、カラオケのシーンは少し萎えてしまった。ドラマだから仕方ないけど、セナを神格化し過ぎるとこんなドラマになるという典型ですな。」

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