沈みゆく日本…“日本の埋没”が世界のコンセンサスに

「日本の埋没」が世界のコンセンサスになりつつある明確な理由

2021年、日本は、東京オリンピック・パラリンピックの開催国でした。

開催国として、政府はワクチン接種が進めば大丈夫と繰り返しました。

でも、その時、肝心のワクチンは他国依存でしか調達できなかったのです。

ジャーナリストの岡田豊氏が著書『自考 あなたの人生を取り戻す不可能を可能にする日本人の最後の切り札』(プレジデント社)で解説します。

自分の頭で考え、自分のやり方を見つける

「日本の埋没」が世界のコンセンサスになりつつあります。

日本の実力は、私たちの想像以上に速いスピードで衰えています。

世界の中で比べると、それがはっきりします。

それを認めたくない日本人が結構多いのですが、現実から目を背けていては状況を悪くするだけです。

自分たちの姿をしっかり直視して、何をどうすればいいのか、一緒に自考したいのです。

日本は世界の中でどう生き残るのか。どう、振る舞えばいいのか。

日本がどこまで凋落するのか、底はまだ見えません。残念ながら、こうした危機感は日本人に広く共有されていません。

いつか、日本は必ず底を脱し、反転することができると信じています。

ただし、自考しなければ、それは、かなわないかもしれません。

自考は、日本人にとって「最後の切り札」だと私は確信しています。

自考の定義【自考】

(1)自分の頭で考えて、既存のルールや価値観、やり方などを疑うこと。
他人がつくったルールや価値観、しがらみなどに、どれほど染まっているのか、自分ではなかなか気付かないものです。

他者が流す情報をしっかりフォローしているつもりでも、実は毎日浴びせられる情報を鵜う呑の みにして思考せず、自分が埋もれているのかもしれません。

確固たる意見を持っていると自負している人も、実はそれは自分の考えではなく、他人の受け売りだったり、いつの間にか誰かに影響を受け、すり込まれているものかもしれません。

すべてをいったん疑い、自分の力と自分のやり方で見極めることが不可欠です。

(2)自分の頭で考えて、自分のやり方を見いだし、創り出すこと。
楽しい人生を送るために最も必要なことです。自分にふさわしいやり方を創ります。

自分にとって不要なモノは捨て去り、壊します。自分の新しいやり方を創ったり、見いだしたりします。

そして、自分の存在を絶対的に守り抜き、楽しく、笑って生きるのです。誰もやったことがない、今までどこにもなかったやり方を生み出していいのだと思います。

(3)自分の頭で考えて、自分以外の人を受け入れること。
自分のやり方を見いだせたら、きっと自分の存在が大切に思えるのではないでしょうか。

そうなれば、きっと他人のやり方を受け入れられるはずです。

自分を守り抜くことができれば、他人のことも守ろうとするはずです。いわば、自考の共有です。

それはやがて、社会の未来を切り拓くエネルギーになっていくと思います。

(4)その他(あなたが自考して追加してください)
いつか、自考という言葉が広がって、自由にひとり歩きして、自考って何だろうという興味が広がって、自考に対する新しい向き合い方がどんどん増えていく。

そんな日が来ることを心から願っています。

日本の平均賃金は30年間伸びていない

「日本の賃金水準がいつの間にか経済協力開発機構(OECD)の中で相当下位になっている」。
2021年1月27日、コロナ禍の中で春季の労使交渉が始まり、連合の神津里季生会長とオンラインで会談した経団連の中西宏明会長はこう発言しました。

OECD加盟36カ国の2019年の平均賃金で日本は20位にも入れず下位。

G7では最低です。

日本はこの30年間、ほとんど伸びませんでした。

日本の経済や豊かさをめぐる国際的な地位は低下し続けています。

その目安となるデータには事欠きません。

2020年の日本の名目GDPはドル換算で5兆ドル余り。アメリカと中国に次いで3位ですが、中国の3分の1近くの水準まで落ち込んでいます。

世界におけるGDPのシェアも減り続けています。

日本のシェアは1995年に約18%ありましたが、2005年は約10%、2020年には約6%近くにダウン。

さらに三菱総合研究所は「未来社会構想2050」の中で2050年には1.8%に落ち込むと予測しています。

日本が世界で相対的に縮小しているということです。

また、日本の1人当たりのGDPは、シンガポール、韓国に抜かれ30位。ドイツ、フランス、イギリスを下回っています。

1人当たりの国民総所得(名目)は、外務省によれば、2018年の日本は4万1310ドル。

9位のシンガポール、13位の香港に引き離されて20位に甘んじています。

日本はアジアにおいても、必ずしも豊かな国だと胸を張れるレベルではないということです。

また、OECDのデータによれば、2020年の日本の1人当たり労働生産性(就業者1人当たりの付加価値)は、7万8655ドル(809万円)。

OECD加盟38カ国中28位と低い水準です。

OECDの「より良い暮らし指標」によれば、2017年の日本の生活満足度は、先進38カ国中29位でした。

少し深刻なデータです。国連児童基金(ユニセフ)が2020年9月、38カ国に住む子どもの幸福度をめぐる報告書を公表しました。

総合順位1位はオランダ、2位デンマーク、3位ノルウェーの順。

日本は20位、アメリカは36位、最下位はチリでした。

ところが、「精神的な幸福度」という分野では日本は37位と最低レベルでした。

生活満足度の低さ、自殺率の高さが響きました。

15歳~19歳の10万人当たりの自殺率は、ギリシャが1.4人と最少、日本はその5倍余りの7.5人でした。

経済状況では、日本は失業率が一番低く、子どもの貧困率も18.8%と平均の20%を下回りました。

こうしたデータを謙虚に受け止めたいと思います。

日本と日本人の実力を見つめたいと思います。

世界との比較では決して胸を張れる位置にいないことが分かります。

ただ、データや数字やランキングには、表面的な要素もあって、必ずしも本質を象徴しているとは限りません。

ある程度の豊かさがあって、国民全員に自分たちの居場所があって、子どもたちが笑っていられる国、社会であれば、国際比較など、必ずしも気にする必要はないという考え方もあります。

国際ランキングもさることながら、私たち一人ひとりが、お互いの存在、個性を受け入れ、認め合う社会、笑いが絶えない社会、自由に物事を考えられる社会、自考する社会、そんな土壌が広がれば、未来を切り拓く芽が生まれてくるのではないでしょうか。

そこから活力が生まれ、夢が広がり、新たな産業を創り出す技術が芽生えるのではないでしょうか。

国民の本当の豊かさという実感や、経済の発展という数字は、後からついてくるのではないかと思います。

私はあきらめてはいません。

私たち国民みんなが、それぞれの立場で、それぞれ自考し、行動すれば、ものすごいパワーになるだろうと思います。

それは、例えば、有能な政治家を選ぶことよりも、はるかに大きく、意義があることかもしれません。

繰り返しますが、自考は、私たち日本人にとって最後の切り札になると思います。

政府はワクチン接種が進めば大丈夫と繰り返した

日本の凋落を象徴 新型コロナワクチン接種の遅れ

2021年2月上旬、新型コロナウイルスのワクチンを少なくとも1回接種した人は世界で1億人を超えました。

接種の人数はアメリカが最も多く、中国がこれに続いていました。

OECD加盟37カ国のうち、接種が始まらないのは日本を含む5カ国。遅れが際立っていました。

日本は国産ワクチンの開発に着手しましたが、途上でした。

国民の命に関わる問題にもかかわらず、世界における調達競争力や自前での開発力は明らかに劣っていました。

2021年、日本は、東京オリンピック・パラリンピックの開催国でした。

開催国として、ワクチン対策、感染防止対策をめぐる自覚が乏しいと言われても仕方ありませんでした。

オリ・パラの開催について、国民の反対論も根強い中、政府はワクチン頼みで“強行”しました。

開催を可能と判断した根拠をめぐる説明は極めて不十分でしたが、政府はワクチン接種が進めば大丈夫と繰り返しました。

でも、その時、肝心のワクチンは他国依存でしか調達できなかったのです。

日本は「技術立国」としての評価もダウンしています。

日本の力は、ここまで落ちているのかと再認識させられます。

長引く経済の衰退にいつ歯止めをかけられるのか。

また有事などの肝心な局面において、日本政府は十分に機能することができるのか。

不安が募ります。

政府を預かる政治家や公務員のみなさんの思考は、停滞あるいは停止していないでしょうか。

不要な忖度は捨て、国民と日本の未来を見つめて、自考してほしいのです。

自考 あなたの人生を取り戻す不可能を可能にする日本人の最後の切り札 岡田豊 (著) プレジデント社 (2022/2/4) 1,650円

これから、まったく新しいスタートを切りませんか。

思考を完全に切り替え、状況を反転させませんか。

やることは、たったひとつ。シンプルです。「自考(じこう)」です。

自分の頭で考えて、自分にふさわしい、自分のやり方を、見いだすこと。

新しいやり方を創り出し、新たな行動に移すこと。

この「自考」で、あなたの中の何かが変わります。

私がアメリカでの勤務を終えて帰国した時、日本は実に息苦しい社会だと気付きました。

人をはかるモノサシ、価値観、基準の数があまりにも少ない。

自殺する人があまりにも多い。笑っている人が少ない。

他人を妬む。他人を排除する。出る杭を打つ。

決められたモノサシから外れたりする人を異質と決め付ける。

ナンセンスな社会です。おかしな社会です。

大事なのは、一人ひとりの個の人です。

すべての人が価値ある存在であり、すべての人の価値観が受け入れられていいはずです。

これからは私たち一人ひとりが、自分たちの質を高めていくしかありません。

必要なことは、一人ひとりが、古びた過去と決別し、新しいやり方を「自考」で創り出し、行動することだという結論に、私は至りました。

「自考」をひとりでも多くの人に知っていただきたい。本書にはそうした願いが込められています。

約30年間、メディアの視点から日本を見つめてきたテレビ朝日・元アメリカ総局長の著者がたどり着いた、人生を取り戻すヒントとは。

(目次抜粋)
第1章 私たち市民の平和的な「革命」
第2章 日本人に欠けていた自考
第3章 自考が「不可能」を「可能」にする
第4章 自己責任で情報と向き合う時代 自考で見極める
第5章 自考で決別する 古びた伝統・慣習・価値観
第6章 会社員よ公務員よ、立ち上がれ 自考で目覚める
第7章 アメリカ人のセンス 出る杭を育て、やり直すことを認める
第8章 世界で埋没する日本 自考で食い止める

著者について
岡田 豊(おかだ・ゆたか)
ジャーナリスト。1964年、群馬県高崎市生まれ。日本経済新聞記者を経て1991年から共同通信記者。山口支局、大阪支社、経済部。阪神淡路大震災、大蔵省接待汚職事件、不良債権問題、金融危機など取材。2000年からテレビ朝日記者。経済部、外報部、災害放送担当(民放連災害放送専門部会委員)、福島原発事故担当、ANNスーパーJチャンネル・プロデューサー、副編集長、記者コラム「報道ブーメラン」編集長、コメンテーター、ニューヨーク支局長・アメリカ総局長(テレビ朝日アメリカ取締役上級副社長)。トランプ氏が勝利した2016年の米大統領選挙や激変するアメリカを取材。共著『自立のスタイルブック「豊かさ創世記」45人の物語』(共同通信社)など。

「筆者は、今、日本が抱えている多くの問題、課題は、日本人がものごとを深く考えないことが大きな原因であるとし、個人個人があらゆる問題を人任せにせず自分で考えること、即ち「自考」することを薦めている。個人の力は小さいが、個々人のそのような努力の積み重ねが、今の閉塞した状況からの脱却につながると思う。是非多くの人に読んでほしい一冊。」

「日本にはリーダーがいないから、、、などと嘆いても、いつになっても待望のリーダーは現れないけれど、みんなが一人一人、自分で考えて動くようになれば、一人一人がリーダーシップを発揮するようになれば、世の中、変わっていきますよね。この本には堅苦しくなることなく、考えるヒント、きっかけが詰まっています。二者択一、白黒をつけるのではない、よい問いがあると、一緒に考える余地が生まれますね。話してみないと始まりませんが、日常のことから、どんな世界を望むのか、自分の考えがないと議論もできません。是非、壮大な実験に参加しませんか?」

ネットの声

「物価は安定しているが、成熟した産業の雇用の延命を有権者が望んだから、パイが減った分を非正規と中国で補い、少子化、低賃金労働者の増加という副作用が強く出て、気づいたら日本人が欲しいと思うものを日本企業が作れず、パソコンはデル、スマホはアップル、通販はアマゾン、SNSはツイッター、yotube、TikTok、LINE、日用品は中国製、EVは格安の中国製という状況になり、部品供給と観光IRだけの国になろうとしている。そして盛んに米国投資が推奨され、ますます日本企業が育たないという悪循環。分配するには原資が必要だが、既得権を温存しパイを増やさない経済政策を自民党は選んだから、財務省は緊縮という発想になる。アベノミクスで金をばらまけば、成熟産業の株価上昇に使われ、若い人が安定を求めてそうしたタピオカ産業に行ってしまい、資金が乏しい新興市場は失敗できないという緊張感から、小粒な企業ばかりになってしまう。」

「まとめると日本人はかつての栄光を取り戻そう、と言う発想。しかしかつて日本に栄光をもたらした諸条件はもう成立しない。年配者が奮起するのではなく若い人(たぶん25歳位以下)が前例・過去の栄光に縛られる事無く今の世界を自分の目で見て自分の感性で未来を新たに創作していくしかないだろう。この文脈では25,6過ぎたらもう年配者。」

「命の危機が迫らないと現状維持から抜ける気持ちにならない。だから生きていくだけでギリギリの状況までは間違いなく落ちる。
そこで何とかしようと本気になってもすぐに状況は変えられないから没落はさらに進み飢餓、病死、暴動、犯罪などで多くの犠牲者が出るでしょう。」

 

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