日本はどうして30年も停滞した?その決定的なタイミングとは…

日本の「負け」が決まった決定的タイミング…平成の30年のあいだに、世界で戦えない国になった理由

1989年時点、世界の時価総額ランキングにて、上位30社中21社と7割をも占めていた日本企業ですが、2020年現在、同ランキング30位以内に入る日本企業は1社すらありません。

一体この30年の間で、いったい何が起こったのでしょうか。

ここでは、中内玲子氏の著書『シリコンバレー式 世界一の子育て』(フローラル出版)より一部を抜粋・再編集し、各国の成長に圧倒的な遅れをとった日本について解説します。

世界の企業ランキング

図表の右側は、2024年の世界の時価総額ランキングです。

時価総額は、上場企業の企業価値を測るものさしのようなもので、これを見れば世界で今、どの企業がもっとも優良とされているかがわかります。

ランキングを見ると、アップル、アマゾン、マイクロソフト、そしてグーグルの親会社であるアルファベットなど、シリコンバレーの企業が上位に入っています。また、サウジアラビアのサウジアラムコや、アリババなどの中国企業、韓国のサムスンもランクインしています。

日本企業はどうかというと、残念なことに、30位以内には1社も入っていません。50位まで見てみると、39位にトヨタ自動車がランクインしています。

私はここで、「やっぱりシリコンバレーの企業はすごい」ということを言いたいわけではありません。

私がみなさんに知っていただきたいのは、世界の企業ランキング30位以内に日本企業が1社も入っていないということです。

日本が世界一だった時代

つぎに、左側にある1989年の世界の時価総額ランキングを見てみましょう。

上位30社中、日本企業は21社で、全体の7割を占めています。

その隙間を埋めるようにアメリカやイギリスの企業がランクインしていました。

まさに、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われた、高度経済成長期からバブル景気までの日本の強さがわかるランキングです。

けれど、約30年後、日本企業は上位30位から消え去ってしまいました。

2つの表を見比べてみると、2020年7月末に1位になったアップルと1989年に1位だったNTTの時価総額には11倍もの差があります。

そして、1989年の2位から7位にランクインしていた日本の銀行は、バブル崩壊以降に吸収合併され、当時の行名を残すものは一つもありません。

成長し続けたアメリカ・中国、停滞していた日本

この30年間は、ちょうど平成の30年間にあたります。

この間、日本にいったい何が起きたのでしょうか。

もちろん日本の企業も、この30年もの間になんの努力もしなかったわけではありません。

日本が世界の市場で戦えなくなったのは、アメリカや中国などの急速な成長に追いつけなかったからなのです。

それは、国の経済力を示すGDP(国内総生産)にはっきりとあらわれています。

日本は長年、世界のGDPのランキングでアメリカに次いで2位をキープしていましたが、2010年頃には中国に抜かれ、3位になりました。

2019年のGDPは、アメリカは21.4兆ドル、中国は14.3兆ドル、日本は5兆ドル(ドル換算)で、上位2か国と日本の間には大きな差があります。

実は、1995年の日本のGDPは5.4兆ドルでした。

つまり、日本のGDPはこの25年間、ほとんど変わっていないということです。

日本の産業そのものが衰退したわけではなくても、ほかの国が成長するなかで停滞していれば、相対的に日本は後退することになってしまいます。

そして、世界における国の力が弱まれば、それは国の技術力や文化の遅れ、教育の遅れにもつながります。

日本人には高い技術力も知識もある。

難問にぶつかっても挑み続ける粘り強さもある。

日本の製品は、その性能の高さで世界から信頼も得ている。

それなのに、なぜ日本企業は世界トップの市場で戦えなくなってしまったのでしょうか。

なぜ、日本にはアップルやグーグルのような、イノベーションを起こす企業がこの30年間に生まれなかったのでしょうか。

シリコンバレーの企業がどのようにして世界をリードするようになったのか、そして何が日本に足りなかったのかを振り返りながら、その答えを探ってみましょう。

日本ではアップルやグーグルが生まれていない

私が住むシリコンバレーは、カリフォルニア州北部のサンフランシスコから車で45分ほど南に下ったところにある地域です。

コンピュータの部品である半導体の産業がさかんだったことから、半導体の原料である「シリコン(silicon)」と「谷(valley)」と呼ばれる盆地の地形を合わせて、「シリコンバレー」と呼ばれるようになりました。

シリコンバレーには、GAFA(IT業界のトップに君臨する巨大企業の頭文字をとった略称)と呼ばれるグーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルのほか、ツイッターやインスタグラム、マイクロソフトやヤフーなど、誰もが知る世界的企業が集まっています。

また、ライドシェアや日本でも普及しつつあるウーバー・イーツなどのサービスを生み出したウーバー、自動運転車の産業をリードするテスラなど、今まさに世界を変えている企業もシリコンバレーで誕生しました。

これらの企業は、多くが数人のスタートアップから始まっていますが、それまでにない製品やサービスによって世界を一変させる「イノベーション(革新)」を起こすことで、巨大企業へと成長を遂げています。

もう一つ、シリコンバレーに欠かせない存在となっているのが、スタンフォード大学です。

スタンフォード大学は、グーグルの共同創業者であるラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンなど、多くの優れた人材を輩出しました。

大学での研究と周辺企業の技術開発を結びつける「産学連携」を行うことで、シリコンバレーの発展とともに成長し、今では世界の大学ランキングで第2位(2020年9月現在)にランクインしています。

世の中を一変するような製品やサービスを生み出す企業群と、それを支える頭脳であるスタンフォード大学。

この環境が数々のイノベーションを生み出し、シリコンバレーは「イノベーションの聖地」とも呼ばれています。

世界を変えたイノベーション「iPhone」

世界を変えたイノベーションとして思いつくのは、やはりiPhoneでしょう。

アップルが初めてiPhoneを発売したのは、2007年です。

iPhoneは、カリスマ的経営者だったスティーブ・ジョブズのアイデアにより、それまで世界にあった携帯端末の「当たり前」を一変させました。

キーボードをなくして端末のほぼ全面をカラー表示が可能なディスプレイにし、表面のボタンはたった一つ。

それなのに、メールも送れるし、ウェブサイトを見ることもできて音楽だって聴ける。

iPhoneは世界に衝撃を与えました。

デザインの美しさも、iPhoneの特徴です。

余計なものを省いてシンプルにし、角を丸くした美しいデザイン。

その洗練されたデザイン性により、いつしか「iPhoneユーザー=センスのいい人」というイメージができ上がっていきました。

翌年にはグーグルのAndroidも誕生し、スマートフォンは瞬く間に世界中の人々の手に渡りました。

今ではスマートフォンは世界各地で「ライフライン」と呼ぶべき存在になっています。

また、グーグルは、設立当初は精度の高い検索エンジンを提供する会社でしたが、その後、さまざまな企業とのM&Aやパートナーシップを築くことで、今ではGメール、グーグルマップ、グーグル・クロームなど、世界中の人に活用されるサービスを展開していきました。

さらにAndroidやスマートスピーカーのグーグル・ホームなども私たちの生活に浸透しています。

毎日、世界中の人がグーグルが提供するサービスを使っており、今ではグーグルのない世界など考えられないくらいです。

「ガラケー」を生んだ日本のイノベーション

戦後から高度経済成長期の日本も、自動車やラジオなど海外の製品を手本に、それらに負けない製品をつくるイノベーションを起こしてきました。

価格が安く、大量生産ができ、品質がいい「メイド・イン・ジャパン」の製品は世界を驚かせました。

半導体産業でもアメリカとの競争に勝ち、80年代後半には世界の50%以上のシェアを獲得しました。

けれど、90年代以降、日本はイノベーションの方向を見誤ってしまったのです。

日本のイノベーションの誤算を象徴するのが、「ガラケー(ガラパゴスケータイ)」です。

着メロ、着うた、ワンセグ、おサイフ携帯に赤外線通信など、30代以上の方は「あった、あった!」と、懐かしく感じるかもしれません。

日本の携帯電話産業は、国内のユーザーを満足させるため、つぎからつぎへと携帯電話に独自の新機能を追加していきました。

けれど、それらの機能は、海外から見れば過剰で魅力的に感じられず、ガラケーは海外市場に進出できなくなってしまったのです。

そうしていつしか日本の携帯電話は、独自の進化を遂げたガラパゴス諸島の生物にたとえて「ガラパゴスケータイ」と呼ばれるようになりました。

ネットの声

「この前旅行でシンガポールに行って感じたのは、3年前にはにあった町看板やメトロの券売機での日本語表記が完全になくなっていた。
韓国語や中国語はあったのにもう日本という存在は著しく低下してるんだなと。
日本人はいまだに自分たちは世界第3位の経済大国だと信じていて、G7の一員だと自制心を保ってるけど
外国行くと今の日本の立ち位置が本当によくわかる。」

「確かバブル期は世界のお金の6割が日本に集まっていたとか。それ自体が異常でそれと今を比較するのも無理がある。栄枯盛衰と言うように栄えるものはいずれ衰退していく。アメリカは勿論、あれだけ勢いがあった中国でさえここ最近陰りが見えてきている。戦争で焼け野原になった資源も無い日本があっという間に立ち直り、GDPで世界第2位を長らく維持していた方が凄い事。少なくとも30年前よりも遥かに多くの海外の人が日本をあらゆる面で評価するようになっている。日本は素晴らしい国だと。お金や企業も大事だが、いつまでも過去の栄光に浸っていても意味は無い。世界でも類を見ない超高齢化の日本が、早かれ遅かれ世界と戦えない国になるのは必然だったと思うよ。」

「景気が少し良くなると増税で腰を折り続けてきた財務省。その結果が今目の前にある社会です。
財政再建化はそれほど大事ですか?少なくとも財務省が声高に叫んでいる日本の財政赤字は借金だけしか示しておらず、貸しているお金について意図的に隠しているのは各有識者の述べているとおりです。言うなればローン残高は5000万円ある(借金)と騒いでいる傍で、実は年収2000万円ですという部分は隠して家族に節約を強制している様なものです。

こんなことを30年続けたら一部の官僚や政治家を除いて皆苦しい生活を強いられる社会になりました。」


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