
あの子は天使かそれとも悪魔か?
宮崎駿監督作品『On Your Mark』の解釈割れる6分半の「翼のある少女」は、天使なのでしょうか、それとも悪魔なのでしょうか。
目次
「お子様には早すぎるジブリアニメ」に寄せられる様々な解釈
マグミクスは2025年4月29日、
「お子様には早すぎるジブリアニメ! こちら宮崎駿監督の『何か』があふれた異色作です」
と題した記事を配信し、これに多くの反響が寄せられました。
記事は、宮崎駿監督による1995年に劇場公開された短編作品『On Your Mark』について、その内容とともに、本作がいかに異色作であるか、そしてその前後で作風に変化が見られることなどを解説するものです。
そもそも本作は「CHAGE and ASKA」の同題楽曲のために作られたミュージックビデオ(以下、MV)で、6分30秒という短編です。
ひと目で「宮崎アニメ」とわかるものの、そこには容赦のない暴力や不穏すぎる描写があふれていました。
「桜の代紋」、すなわち日本の警察のシンボルを掲げた武装警官隊による、宗教組織と思しき団体への突入シーンでは、抵抗するものはもちろん、無抵抗の人間まで容赦なく殺戮していきます。
そうしたなかから主人公の警官ふたりが、翼のある少女を見つけ救出するという流れになります。
読者からの反響
読者からの反響の声を眺めると、解釈は実にさまざまで、観る人によりまったく異なる物語、といった様相です。
多くは「救済のお話」として捉えているようでした。
「翼のある少女を地上に送り出すシーンは何度見返しても切なくなる」
「ラストシーンには解放感と、ほのかな救いがありました」
といったように、ふたりの警官が良心の呵責から少女を救い出す物語として受け止めるものです。
決してハッピーなお話ではない、とする見方も多く見受けます。
「少女が空に帰ったあと主人公たちは放射線に侵されてしまうのではないか」
「おそらく自ら犠牲になったであろうラスト」と、救出劇の裏には絶望的な結末が見えるというのです。
そうしたなか、この少女を「悪魔」として解釈する意見も見られました。
「好感を持たれるようにわざと天使に似せて作られた悪魔のような少女は、放射能に適応できるだけでなく、近くにいる人間に幻覚を見せて操る能力があり」
「最終的にまんまと操られた人間は野に悪魔を放ったとは思いもせず、天使を助ける正しい行いをしたと思いながら満足のうちに放射能で絶命する」
というものです。
「幻覚」が指すのは、展開の異なる映像のリピート部分を解釈したものでしょう。
そうなると全編にわたって、見方がガラリと変わってしまいそうです。
ナウシカの前史!?
「展開の異なるリピート映像」すなわち作品の構造については、
「ストーリー自体が、極めて短いスパンでのパラレルワールド構成になってる」
「もしかしたらあれは、ふたりの警官が良心の呵責の果てに見た幻想か願望的な近未来だったのかも」と読み解く声もありました。
このほか、「ナウシカの前史である、という解釈を聞いたことがある」と、宮崎駿監督作品のひとつ『風の谷のナウシカ』(1982年)との関連を挙げる投稿も見られます。
詳細は省きますが、『ナウシカ』もまた汚染された地球を舞台とする作品です。
このように、わずか6分30秒の作品であるにも関わらず解釈が割れるのは、MVであってセリフが一切ないことも関係するでしょうが、なにより情報量の多い画作りと映像演出にある、といえるでしょう。
このあたりも本作の、色褪せない魅力のひとつといえるかもしれません。
ネットの声
「最後のシーンは色々と考察できて深みがあると思います。
子供のころ見たときは、上見て走ってたから路肩に落っこちちゃったのかな?女の子は助けて貰ってうれしそうだなと思っていましたが、大人になって見てみると、女の子は飛んだあと助けてくれた二人の事なんて一切気にせず空に帰って行ったし、恐らく二人は死んでしまったのだなと。
大人と子供で読み取り方がこうも違うかと一人で考え、凄い映像作品だなと思った。」「YouTubeに岡田斗司夫がこの作品を解説している動画があるね。ワッペンの模様や銃の構え方、建物の壊れ具合など一見するとわからない描写も細かいところまで考えられて作られているんだなと思った。優しい絵柄でさりげなく残酷なメッセージを伝える宮崎駿はやっぱり凄い。」
「解釈がいろいろできる作りになってるのが流石ですよね。
逃げてる時に車が飛んで落ちていくシーン。なぜかリトライして空飛ぶ。そもそもあの車が飛ぶ形してないから後半は夢的なとらえ方もできる。その夢の方が正しくても外に出てしまったらチャゲアスの2人は亡くなるの確定。
結局は美しい、綺麗な感動の裏にダークな雰囲気が…
でも個人的には天使を逃がした後の3人の表情がこのストーリーを物語っていると思います。」