ラグビーワールドカップ日本大会…試合を見て泣いてばかりいる人も少なくないでしょう。

開幕戦のキックオフで泣き…釜石のスタンドに並んだ子どもたちの笑顔に泣く…

アイルランド戦の勝利で泣いてしまった人もまだまだ続きがありました。

泣けるスポーツがラグビー

スコットランドに勝利して初のベスト8トーナメント進出

スコットランドに28-21での勝利…ここでも泣いた人は多いでしょう。

特にラスト24分の死闘はドキドキものでした。

そして、堀江選手のタックルでの流血にビックリした人も多いのでは…

ちょっとコケたくらいで大げさにアピールするサッカーと違って、命の危険もあるようなタックルを受けても平然と立ち上がってプレーを続けるラグビー選手。

負傷退場の具選手の涙にもらい泣きしました。

しかし、涙はラグビーによく似合います

第一、当の選手がよく泣くのです。

彼らは勝っては仲間と抱き合って泣き、負けては相手と健闘を讃えあって泣く…

いや、そもそも戦う前に国歌斉唱の時点で泣いている選手がいるくらいです。

スコットランドの選手が泣いてましたね。

気持ちが昂ぶるのを抑えられないのでしょう。

どのようなスポーツでも感動的なシーンがありますが、泣けるスポーツの筆頭といっていいかも。

鍛え上げられた筋肉の鎧をまとった男たちが人目もはばからず泣きじゃくる…それがラグビーなのです。

ユーミンのノーサイド誕生秘話

大分舞鶴高校というラグビー名門校があります。

公立の進学校でありながら花園の常連校。

大分舞鶴は、松任谷由実の『ノーサイド』のモデルであることをご存知でしょうか。

1984年の全国高等学校ラグビーフットボール大会決勝。

大分舞鶴と天理高の一戦となりました。

大分舞鶴は後半ロスタイムにトライを決めてスコアを僅差とします

ゴールキックさえ決まれば同点で、両校優勝となるところまで追い上げました。

ところが、最後のキックをキャプテンが外してしまうのです

その瞬間、ノーサイドのホイッスルが鳴る。

このドラマチックな幕切れから、ユーミンは曲の着想を得たというのです。

ラグビーの持つ多様性

ラグビーは観る者の心を揺さぶる力を持っています

なぜラグビーを観ると胸が熱くなるのでしょうか。

ラグビーの魅力の本質…それは「多様性」です

まずラグビーはどんな体型でも、その人にあったポジションがあります。

太っていても、のっぽでも、小さくても適したポジションがあるのです。

大男じゃないとラグビーでは勝てない…そうとも限らないのは日本の流選手や田中選手が証明しています

身体能力もしかり…足が遅くてもハードワークで…力が弱くても判断力で…

誰にでも貢献できるポジションがあるのです。

どんな人にも適材適所の居場所が用意されているのがラグビーです

必要なのは、相手にぶつかっていく勇気だけ。

選手は文字通り体ひとつでぶつかりあう。

実にフェアなスポーツなのです。

紳士のスポーツたる所以ですね。

多様性は国籍にも

ラグビーの多様性は選手の国籍にも及びます。

ここがもっとも大切なポイントといってもいいでしょう。

ラグビー日本代表ももちろんこの多様性を体現しています。


そしてそのことで彼らは、日本社会の未来を映す鏡にもなっているのです。

「日本代表なのになんで外国人ばっかりなの?」
「日本人じゃないのってなんか違和感がある」
「日本は強豪国じゃないから、助っ人外国人に頼るの?」

あちこちでこのような素朴な疑問の声を耳にします。

たしかに他のスポーツの代表チームに比べると、ラグビーは特殊に見えるかもしれません。

ラグビーでは、以下の条件のいずれかを満たしていれば、国籍と異なる国の代表としてプレーできます。

〈出生地がその国であること〉
〈両親、祖父母のうちひとりがその国の出身であること〉
〈その国で3年以上、継続して居住。または通算10年にわたり居住〉

そして、上記に加え「ひとりの選手は1ヵ国の代表にしかなれない」という制約があります。

また今回の日本大会以降、3年以上の居住は5年へと変更されることになっています。


なぜラグビーは国籍を問わないのか。

それは、大英帝国の歴史が関係しています。

ラグビーは19世紀にイングランドで生まれます。

やがて近隣のスコットランド、ウェールズ、アイルランドの4カ国でテストマッチが行われるようになったのです。

これら隣り合う国々では住民の往来が盛んだったうえに、ラグビーが普及していった植民地の間でも人々がひんぱんに行き来していました。

国籍を重視しない考えはそんな歴史的背景から生まれてきたものです。

「英国」という国ではなく、スコットランド、ウェールズ、イングランドという国で代表チームを作り、さらにはアイルランドと英国領の北アイルランドで「アイルランド」という統一チームを作っています。

今回グループリーグ初戦で、日本と戦ったアイルランドはこんなチームなのです。

「日本は強豪国じゃないから、助っ人外国人に頼っている…」

これはよく聞きます。

しかし、それは誤解です。

2015年のW杯出場国の中で、外国出身の選手をもっとも多く起用した国はサモアです。

次いでウェールズ、スコットランド、トンガと続きます。

いずれも強豪国ですね。

実は日本は20カ国中、5番目に過ぎなかったのです。

しかも、外国人選手は決して「助っ人」ではありません。

彼らはれっきとした日本代表の一員なのです。

『国境を越えたスクラム』という本があります。

これを読めばそのことが実感できるでしょう。

この本は、外国出身の選手たちがどんな思いで代表として戦ってきたかを教えてくれます

ノフォムリ、ホポイ、ラトゥなど往年のファンには懐かしい選手から現在の代表メンバーまで、多くの外国出身選手が日本についてその思いを語っている名著です。

代表に選ばれた海外出身選手は、桜のジャージに特別なプライドを持っています

彼らを支えているのは、自分をサポートしてくれた人たちのために戦いたいという強い気持ちです。

日本代表のキャプテンであるリーチ・マイケルが高校2年生の時。

ニュージランドの実家が火事になってしまいます。

後に彼は、高校の監督が関係者に呼びかけて義援金を集め、何も言わずに実家に送ってくれていたことを知るのです。

感動したリーチは

「その恩はラグビーで返すしかない。何があっても、日本以外の国の代表になるわけにはいかないと思いました」

と語っています。

ニュージランドやフィジーの代表になる資格があったにもかかわらず、彼は日本を選びました。

海外出身の選手にとって日本は、国家という抽象的な概念に基づくものではありません。

具体的な誰かと結びついた存在なのです。

異なる文化を持つ国から来た自分を寛容に受け容れ、ともに泣き、ともに笑い、多くの時間を過ごしてきた恩師や仲間たちのために、彼らは戦っているのです。

今回のスコットランド戦では、台風で被害に遭った人のために戦ったと選手は口々に言っています。

彼らの言葉は、私たちにとても大切なことを教えてくれています。

象徴的なのが、日本が2019年4月から外国人労働者の受け入れに踏み切ったことです。

これは、事実上の移民政策であることは間違いありません。

今後、日本社会は大きく変わっていくことでしょう。

外国人と共生する時代がこれまで以上に大きなうねりとなってやってきます。

そのために何が必要なのか…心の持ちようはどのようなものなのか…

私たちはまだその答えを手にしていません。

しかし、そのヒントは、ラグビー日本代表にあるといっていいでしょう

アイルランド戦のプレーの中で、目指すべき日本社会の未来が垣間見えた瞬間がありました。

この試合のターニングポイントとなったのが、前半35分のプレーです。

日本のフォワードが相手ボールのスクラムを粉砕し、アイルランドの自信を挫いたシーンがありました。

この時カメラは、温和な性格で知られる右プロップの具智元が雄叫びをあげる姿をとらえていたのです。

彼はソウル生まれの韓国人。

しかし、日本代表のために死力を尽くしています

何かと日韓関係はきな臭い時期にあって、その姿にこみあげてくるものがありました。

「ラグビーはメッセージのスポーツ」です。

大きな相手にひるまずにタックルする選手がいれば、その気持ちは力強いメッセージとなってチーム全体に伝わっていきます。


今回はベスト8が目標とされてきました。

その目標も達成しました。

そうなると、もう次は負けてもいいのか…もちろんそんなことはありません。

まだまだ日本代表の戦いは続きます。

最低でももう一試合日本代表のプレーをしっかりと目に焼き付ける機会ができました。

トーナメント初戦は南アフリカですよ。

多様なルーツを持つ選手が一丸となってプレーする姿にまたまた涙する日がやってきます。

ネットの声

「リーチマイケル選手。今日の試合中に肩を痛めて痛烈な表情をしていましたね。こちらがもらい泣きしそうなくらい顔を歪めていました。それでも戦い続けた姿に胸が熱くなりました。いつもここぞという時に相手を止めてくれてありがとう。」

「選手全員が自分を犠牲にしてパスを繋いで、全員がサポートにまわる。ラグビーは、本当にチームのために戦うチームプレーのスポーツという事をあらわしたようなナイストライでした!今大会の日本のトライの中で、一番素晴らしいトライだと思います。トライをとっても最後まで謙虚なのも素敵です。仲間のサポートのために、あそこまでつめて走っていたのがリプレイを見てよく分かりました。ナイストライ、稲垣選手!」

「最後の24分は 本当に手に汗握る攻防戦。どちらも フェアプレーで熱いプレーの連続。トライしか狙っていないから、5mラインの攻防は どちらも見応えあり。最後の最後まで諦めないで守り切る姿。最後まで攻めきる姿に感動した。本当に凄い試合だった。」

稲垣啓太選手は「いつも命をかけて戦っている」と言っています。どの選手を見ても体はテーピングだらけ。どれだけ激しいスポーツでどれだけ肉体に負担をかけているのか…

それでも臆さずに勇気をもってタックルしていく姿に痺れます。サクラのジャージを着たら国籍も関係ないですね

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