
2026年の新レギュレーションに“見直し派”が現れたわけ…
本田宗一郎は89年の“ホンダつぶし”に「バカなやつらだ」と笑った
来年から導入される新しいレギュレーションを巡って、F1関係者たちによる政治的な争いが勃発している。
目次
パワーユニットの新しい規則
問題となっているのは、パワーユニット(PU)に関する新しい規則だ。
2026年から導入される新しいPUは、エンジンとモーターによる電力の出力比を現在の「エンジン(ICE)83%対電力(MGU-K)17%」から「50%対50%」にし、電動領域の重要性が大きく引き上げられることになっている。
ところが最近になって、一部のレース関係者から26年のPUに関するレギュレーションを見直したほうがいいのではないかという声が挙がった。
その中には「100%持続可能燃料の使用が義務付けられるのであれば、自然吸気のエンジンを使ってもCO2排出量を増やすことなく、F1を続けていくことができるから、V10を復活させてもいいのではないか?」と唱える者まで現れた。
そのため、4月11日にバーレーンで緊急会議が開かれた。参加したのは現在F1に参戦し、26年以降も参戦することになっているメルセデス、フェラーリのほか、26年からPUマニュファクチャラーとして参戦することになっているホンダ・レーシング(HRC)、レッドブル・パワートレインズ(RBPT)-フォード、アウディ、そして28年から自社製PUを投入予定のキャデラック(GM)を加えた全6社の代表だった。
2026年のF1レギュレーションがこんなにも変わるのね!!サステナブル燃料って??すごい時代だ! pic.twitter.com/yPxLim6No7
— shigemix (@shigemix24) March 11, 2025
見直し派の論拠
会議では26年から導入されるレギュレーションは基本的に尊重するものの、今後も継続して審議していくことが決まった。
電動モーターの出力比率を上げられなくて苦しんでいるPUマニュファクチャラーたちが、レギュレーションを見直すためにさらなる話し合いを希望しているからだ。
そのひとつが25年限りでホンダと袂を分かち、26年からフォードと組んで独自で開発・製造したPUを搭載することになっているRBPTだ。クリスチャン・ホーナー代表はこう弁明する。
「このままだとストレートの途中で電気エネルギーを使い切って、突然失速するようなケースが出てくるかもしれない。それは絶対に避けなければならない」
現在の方法で電気を作って使用するだけだと出力比率を50%まで上げられず、1周の途中で電力エネルギーが切れる。
それを回避するために出力比率を下げてほしいというのが新レギュレーション見直し派の狙いだと考えられる。
だが、現在とは異なる方法で電力を作り出す方法はすでに確立しており、それが今回のレギュレーション変更の肝となっている。
21年限りでF1参戦を終了したホンダが再参戦する最大の理由は、この電動パワーが50%に引き上げられたことに魅力を感じ、挑戦しがいがあると判断したからだ。
新規参入してくるアウディも同様の立場だろう。
21年以来、5年ぶりのコンストラクターズチャンピオンを目指すメルセデスは、すでに新しいレギュレーション導入に向けて多くの資金と技術を注入し、開発面で一歩リードしていると言われている。
このまま新しいPUが導入されれば、現在のPUが導入された14年から数年間、メルセデスが勝ち続けたときと同じような状況が起きるかもしれない。
ホーナー代表はそう警鐘を鳴らすことでレギュレーションを変更し、不利な現状を打開しようと目論んでいるのかもしれない。
とうとう
こんな話がでてきたかぁ
って感じで
26年 PU レギュレーションが
変更できなかったら
HONDAを頼る選択肢があったとは#フェルスタッペン 離脱を
回避するためにも
これ以上の
戦力低下は避けたいだろうし— 竹内宜長 (@2oJfZttqElnfnoc) April 23, 2025
本田宗一郎の胆力
このような状況を眺めていると、80年代後半のF1を思い出す。
当時はホンダのターボエンジンがレースを席巻していた。
そのため、国際自動車連盟(FIA)は1988年限りでターボエンジンを禁止し、89年から自然吸気エンジンを復活させる決定を下した。
だが、80年代前半にルノー、BMW、ポルシェが勝ち続けたときにターボが禁止されることはなかった。
事実上の「ホンダつぶし」に異議を唱えたホンダの代表に、当時FIA会長を務めていたジャン=マリー・バレストルは「F1にイエローはいらない」と屈辱的な言葉を浴びせた。
やりきれない思いを抱いたホンダのエンジニアは、撤退すべきという思いを伝えようと創業者の本田宗一郎のもとを訪れた。
部屋に入るなり、宗一郎のほうからこう切り出してきた。
「F1でターボが禁止されるらしいが、それはホンダだけなのか?」
エンジニアが「違います」と返答すると、宗一郎はこう言って笑った。
「バカなやつらだ。ホンダだけを規制するなら賢いが、同じルールでなら、どんなルールでもホンダが一番いいエンジンを作るんだからな」
それを聞いたエンジニアはそれ以上なにも言わずに部屋を出て行き、F1活動を続けるべく開発を続けた。
ホンダは自然吸気エンジンとなってからも勝ち続け、91年までF1界に君臨した。
権力を持つ者に弱者がすがりつき、結託してルールを歪曲化しようとするのは今に始まったことではない。
問題を引き起こすのはルールではなく、それを悪用する人々だ。
ただし、ルールがどのように適用されようとも、いつの時代も優れた技術が勝ち残ることに変わりはない。
おはようございます。
F1もMotoGPも地上波でやらなくなってから観なくなってしまった…
???さんの観戦ラジオあるから観たい意欲はわくけどレギュレーションが分からないのと選手が覚えられない?? pic.twitter.com/zOgJDJJzRi— きづく (@rera2024111) April 20, 2025
ネットの声
「宗一郎さんはやっぱり“格”が違うね、それで実際に結果で黙らすんだからカッコいいわ
もちろん不世出の傑物だから登場を待ってたって意味はないけど、魂は受け継げるはず、ホンダがホンダらしさを取り戻す日は来るのだろうか。」「もうレギュレーションは決まったのだから、今更あれこれ言い出すのは良くない。
それにホンダやアウディは電動化の比率が上がる事に参戦の意義を見い出しているのだから、100%内燃に戻るのなら撤退してしまうだろう。
レッドブルパワートレインはエンジンと電力共にかなり開発に苦労しているんだろうね。」「当時のホンダエンジン責任者?(確か後藤さんだったと思う)が、ホンダエンジンの独走を止めるために変更が加われば加わるほどそれにたいして速く対応できるホンダが有利だったと後日談していたのを思い出しました。」