身の回りのことができなくなった時、面倒をみてくれる家族がいなければ、どうすればよいのでしょうか。

手続き代行

「親の介護サービスは私が手続きをしたんですけど、私の時は誰かやってくれるんでしょうか」

それが横浜市の会社員、名取朋美さん(51)の疑問点。

独身で一人暮らし。

80代の両親と兄がいるのですが、おいやめいはおらず「順番でいくと私が最後になるんです」。

介護保険サービスは、原則1割負担の利用料で、ヘルパーに来てもらったり、デイサービスでお風呂に入って食事をしたり、日常生活に必要な介助を受けられます。

しかし、高齢になって理解力が落ちたら、自分では難しい手続きができないのではと心配しているのです。

名取さんは、近くの「地域包括支援センター(包括)」を訪ねました。

包括は、全国にくまなくある、公的な高齢者のよろず無料相談窓口です。

応対してくれた島田徹所長は「介護保険の申請など、様々な手続きを私たちが代行できますよ」と笑顔で答えてくれました。

さらに、認知症や病気で判断能力が低下すれば、成年後見人に金銭管理や介護サービスの契約などを代行してもらうのですが、包括は自治体と連携し、成年後見人を選ぶ手続きも進めてくれます。

介護、医療の希望

「行政が動いてくれるんですね」とひと安心した名取さんに、島田さんが「エンディングノート」を手渡しました。

最近、様々な団体が制作してインターネットで公開しているのですが、書き込む項目は同様です。

介護や医療の希望は重要で、介護が必要になった時、できれば自宅にいたいのか、利用したい施設が決まっているのか、などを書きます。

島田さんは「施設を希望する場合、特にシングルの人は元気なうちに自分に合った施設を選んでおくとよいですね」と言う。

子どもがいれば、良い施設を探したり、ケアの質が悪い時に苦情を言ってくれたりすることもあります。

しかし、シングルがそんな頼れる支援者に出会えるとは限りません。

突然倒れて入院し、希望を伝えられないまま病院側が選んだ施設に入って最期を迎える可能性もあります。

ノートの通りになるとは限らないのですが、書いておけば参考にしてもらえるでしょうう。

人工呼吸器などの延命治療を希望するかどうかも書いておいたほうが良いでしょう。

本人の希望がわからなければ、病院が判断に困り、望まなかった延命治療が施されるかもしれないからです。

名取さんが「何歳くらいから準備すればよいと思いますか」と質問しました。

「老後に不安を感じているなら、何歳であっても早すぎることはないですよ」と島田さん。

「書きやすいところから書いて、気持ちが変わったら、ちょこちょこ書き直す。気軽な感じで考えてください」

では、いざという時にノートを見つけてもらえなかったとしたら?

「ノートをしまってある場所をカードに書いて財布の中に入れたり、玄関ドアの内側や冷蔵庫に貼っておくのはどうでしょう」

近所付き合い大切

次々聞きたいことが出てきます。

例えば自覚なく認知症が進んで、包括に相談にも行けないかも……。

「だから、近所の付き合いが大切なんです」と島田さんは言います。

頻繁に会う人が周囲にいれば、早く異変に気付いてもらえ、包括にも連絡がいきやすいのです。


つながりがなければ、発見が遅れたり、詐欺に遭っても気付かず貯金を使い果たしたりするケースもあるでしょう。

名取さんは、そのへんはどうでしょうか。

「マンションの近所付き合いはほとんどないんです。でも、このままでは不安で、町内会の活動に顔を出してお祭りや運動会の手伝いをして、地域デビューの準備をしています」

素晴らしい!

ボランティアを募集したり、地域デビューのきっかけになるイベントを開催したりする自治体もあります。

名取さんは「お年寄りの見守りとか、将来自分がしてもらいたいボランティアを今からやっておこうかな」と、地元の取り組みを、島田さんに熱心に質問していました。

とはいっても、地域のつながりは急にはできません。

急病などに備えてトイレにセンサーを付け、24時間反応がないと見に来てもらえる民間サービスもあります。

名取さんは納得した様子で「今から老後の心配をしても仕方ないかなとも思っていたけれど、準備をしていた方が漠然とした不安を減らせる。知っておかないとだめですね」と話していました。

若い人にも

悩みはほかにも。群馬県の女性(54)は母親が他界して築約50年の実家にひとり暮らし。

「建て直すのはお金がかかるし、安くても売って小さいマンションを買うべきか」

「老後」は若い人の念頭にもあるようです。

「高齢で身寄りもないと賃貸住宅を借りにくいと聞いて、買った方が良いのか迷っている」(20代女性会社員)という声もありました。

そしてお金です。

東京都世田谷区の契約社員の女性(50)は「非正規で、いつ仕事が見つからなくなるか不安」。

「入院時のサポートなどもお金を払って頼む必要がありそう。意識的に貯金している」(50代女性)という人もいます。

高齢女性4人に1人が独居に…2040年推計

一人暮らしの高齢者は今後も増加が見込まれます。

2019年版の内閣府高齢社会白書によると、1995年の220万人から、2015年には592万人と2.7倍になったのです。40年には896万人まで増え、特に高齢女性は4人に1人が独居になるという推計です。

「子どもがいても老後はあてにできない」という人は少なくありません。

既婚でも「ひとりの老後」は無縁ではないのです。

準備することで不安減る

在宅を希望していても、家族が「心配だから」などの理由で施設を選択したり、本人が「家族に迷惑をかけたくない」とあきらめたりする話をしばしば聞きます。

その点でシングルは、準備さえあれば、希望する暮らしを最期まで続けやすい面があるでしょう。

まだ元気なのに老後の心配?という人もいるかもしれないけれど、準備することで不安が減れば、より今を楽しめるかもしれないですね。

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