
3キャリア値下げ攻勢に「小容量」で生き残りをかけるMVNOと楽天モバイル
3キャリアが3000円以下という衝撃的なオンライン専用料金プランを投入する中、窮地に立たされたのが月額2980円を売りにしていた楽天モバイルや、さらに安価な料金プランを提供するMVNOです。
楽天モバイルは赤字覚悟
そのようななか、楽天モバイルと格安スマホ大手のmineoと、CATVとの連携に強みを発揮するJ:COM MOBILEが相次いでキャリア対抗の新料金プランを発表しました。
キャリアと格安スマホの料金の差が縮まる中、楽天モバイルやMVNOが活路を見いだしたのが、あまりスマホを使わないユーザー、いわゆる「小容量」のプランです。
mineoは1GB・1180円、5GB・1380円、J:COM MOBILEは1GB・980円、5GB・1480円といった具合。
楽天モバイルに関しては1GB未満は0円、1~3GBは980円という赤字覚悟の値付けとなっているのです。
実際、楽天モバイルは、ユーザーがKDDIローミングエリアで使えば、1GBあたり500円をKDDIに接続料として支払わないといけません。
つまり、ユーザーが3GB、KDDIパートナーエリアで使えば、500円近い赤字が発生します。
ニッチな部分で勝負
MVNOや楽天モバイルが小容量に注力する背景には、実際のところ、多くのスマホユーザーがあまりデータ容量を使っていないという点にあります。
総務省が出している調査データによれば、スマホユーザーの9割近くは20GBも使っていない。7割近いユーザーが5GB以下だったりするのです。
一方で、キャリアといえば、今回、3000円以下で20GB使えるオンライン専用プランを投入したり、使い放題プランを6500円程度に値下げするなど、中~大容量プランを改定しているのですが、小容量に関してはあまり手をつけていません。
スマホをあまり使わない層に訴求しつつ…
NTTドコモの「5Gギガライト」は1GB未満が3465円、3GBまでが4565円、5GBまでが5665円、7GBまでが6765円という設定のままです。
KDDIとソフトバンクも、段階制プランの改定は見送りました。
NTTドコモは無制限となる「5Gギガホプレミア」は7315円という設定になっています。
店頭では「あと550円支払えば上限7GBから無制限になりますよ」というアピールがされることでしょう。
多くのユーザーが5G対応スマホに乗り換え「自分はそんなにスマホは使わない」と最初は5Gギガライトを選ぶのですが、5Gエリアが広がると、いつの間にがバカスカとデータが流れ、上限7GBに達して、速度制限がかかり、結局、「5Gギガホプレミア」を選ぶようになるのでしょう。
キャリアとしては「いかに5Gスマホに乗り換えてもらい、無制限プランを契約してもらうか」が、今後の経営課題となるのは間違いありません。
ただでさえ、オンライン専用2980円プランが人気となれば、収益に与える影響は大きいからです。
本来であれば8000円近く稼げたはずの無制限プランも6500円程度に値下げしてしまいました。
とにかく無制限プランのユーザーを増やすことが重要なのです。
キャリアショップとしては「小容量プランよりも無制限プラン」という見せ方をしていくのでしょう。
接続料の引き下げが格安スマホの生命線
キャリアが小容量の値下げに消極的な中、格安スマホや楽天モバイルとしては「スマホをあまり使わないけど、支払いは安くしたい」という人向けに1GBや5GBなどのプランを強化してきた感があります。
キャリアから回線を借り、接続料を支払うMVNOとしては、大容量プランや使い放題プランでは太刀打ちは難しいこともあり、小容量プランしか活路がないと見ることもできるのです。
キャリアのメインブランドを使っている人で「できるだけ安い方がいい。格安スマホに乗り換えたい」というユーザーも結構、いるはず。
そういったユーザーのためにKDDIとソフトバンクはオンライン専用プランだけでなく、サブブランドの料金プランも改定してきました。
UQモバイルは3GBで1480円、ワイモバイルは昨年末に発表した3GB1980円に対して、2月1日、光回線のセット割引額を増額し、900円から利用できるようにしたのです。
キャリアとしては「MVNOに逃げられて収入がゼロになるぐらいなら、サブブランドで食い止めたい」という位置づけなのです。
いま、街中では「ソフトバンクとワイモバイルの両方の看板を掲げるショップ」が増えてきました。
榛葉淳副社長は「ワイモバイルからソフトバンクに乗り換える人も増えてきた」と語ります。
まずは「ガラケーからスマホに乗り換えたいが、安いほうがいいのでワイモバイル」という選ばれ方をしたのち「もっとスマホを使いたいので、最新のiPhone 12が使えるソフトバンク」に移行する流れというわけです。
今回、小容量プランで生き残りをかけるMVNOと楽天モバイルだが、キャリアの包囲網はかなり強固です。
MVNOや楽天モバイルを延命させるためにも、接続料の早期の引き下げなどが急務。
キャリアに圧力をかけ、メインブランドの値下げを実現させた、武田良太総務大臣の次の手腕が問われようとしているのです。