相次ぐ書店の閉店で、街から失われるものとは。
ここ最近、本屋さんの閉店が相次いでいます。
東京都書店商業組合によると、この組合に加盟する書店は町の小さい本屋さんが中心なのですが、1984年の1万4026店以上から今年2022年1月時点で287店、8割以上の減少です。
TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で中村友美ディレクターが取材報告しました。
目次
新型コロナの影響で、遠方からのお客さんが来られず…
TBSがある赤坂駅周辺にも主な書店が3つあったのですが6月17日の文教堂赤坂店閉店で3つ全てなくなります。
また、5月8日には神保町で一番大きい三省堂書店がビルの建て替えで一旦閉店。
さらに本日5月10日をもって閉店となってしまうのが、元々110年の歴史があったという上野の「明正堂書店アトレ上野店」。書店員の増山明子さんにお話を伺いました。
「(閉店の要因は)震災からコロナなどいろいろ。震災まではすごく売れてたんですけど、外国のお客様も来なくなって、動物園や美術館のお客様なども。あと、遠方のお客さんが結構多いんですよね。作家さん毎のコーナーが結構充実してたりするので。「聖地」とか「祭壇」とか言われて、それでわざわざ来てくださる方もいらっしゃいますね。他の県から来れないとなるとかなり打撃が大きいですね。
(「明正堂書店アトレ上野店」書店員の増山明子さん)
明正堂書店の特徴は、これから売れそうな作家さんの本を発掘して大量に仕入れ、手書きの帯などをつけて沢山並べる「祭壇」という手法。
結果この1店舗だけで1万冊以上売った本や、後にドラマ化した本もあったそうです。
なので「あの作家を猛プッシュしている聖地」として遠方からファンが明正堂を訪れる事も多かったのですが、新型コロナの影響でそういったお客さんが減ってしまったことが今回閉店の一因にあるのではないかということです。
私が卒業した国際基督教大学のキャンパス内にあった書店(三省堂)が閉店すると聞いて残念だな?次は違う書店が入るのかなと思っていたら、なんと!なんの書店も入らず、書店があった場所は、今は虚無の地になっておりまして大変なショックを受けました…キャンパス内に書店がないなんて…… pic.twitter.com/kuyPxJJ1v9
— セノネース (@Senones0) May 11, 2022
本屋さんの価値を消費者が軽視している?
新型コロナ以外にも、書店が閉店する主な理由としてやはりウェブで本が手軽に買えるようになったことや電子書籍の台頭などが挙げられますが、東京都書店商業組合・常務理事の小川頼之さんは現状についてある問題を指摘しています。
「残ってる本屋さんは割と元気っていうか、意外とみんな元気なんですよ。ただ、その元気な本屋さんを、あんまり読者の方とか一般の消費者の方はそんなに大事に思ってないんじゃないかなと。「お金の向こうに人がいる」っていう本を書いた方(田内学さん)の記事に書かれていたんですけど、本屋さんに行っていろんな本を見て立ち読みしても結局買わないで帰って、通販で買ってらっしゃる方っていらっしゃるんですよね。それって展示してるものを自由に見た上で立ち読みまでさせてもらって、でもお金を一銭も落とさないという結論。その無料でしてもらってるものの価値を消費者があまり認識していないんじゃないかと。特に日本の消費者は認識が弱いんじゃないかということを書いてらっしゃいまして。割と本屋さんの今の危機の一つの原因になってるんじゃないかと思うんですよね 」
(東京都書店商業組合・常務理事・小川頼之さん)
きょうで閉店になってしまう明正堂書店の売り場に伺ったところ、
本の並べ方ひとつとっても、この本が好きならこれもお勧めですよ!という感じで自然と目に入ってくるよう工夫されています。
簡潔に本の魅力を伝えるPOPなどいろんな手間ひまがかけられており、そこにしっかり対価を払うべきだと改めて感じました。
今日で神保町の三省堂書店は建て替えのため一時閉店です。昔はここでサイン会をさせてもらったり、2階のカフェや地下の放心亭も常連だったので寂しくなります。お世話になりました。感謝です。 pic.twitter.com/NBH7FO35Xh
— 須藤元気 (@genki_sudo) May 8, 2022
書店の「多様性」を守るために
東京都書店商業組合の小川さんはもしこのまま本屋さんが減り続けてしまうと”あるもの”が失われてしまうと、ご自身も「小川書店」という本屋を開いている立場からこう話しています。
「例えばうちは原発関連の棚を置いてます。あれね、普通だったら流れちゃうんですよ。どんどん次のが入って返品されてあそこは残らないんですけど、そういうのを残すっていうのは、お金じゃない部分の、ちょっと僕らの主張だったりするんですよね。街の本屋さんには実はそういう主張が必ずちょっとずつあって。これがチェーン店さんの場合では、オペレーションはもう大体決められちゃってて、本部からこれ入ってくるからこれ返品しろみたいな指示でほとんど決まっちゃってたりする。そうすると多様性がなくなるでしょう。街の本屋さんから皆さんがご覧になる本の多様性がなくなるので、それは、我々の書店商業組合の加盟店の方は、みんなちょっとずつ多様性があって、ちょっとずつ面白いことがあって、多分それが何か楽しさに繋がってんじゃないかなと思いますけどね。」
(東京都書店商業組合・常務理事・小川頼之さん)
本屋の多様性を失わないために。東京都書店商業組合は現在、YouTubeでの発信に力を入れています。
チャンネル名は「東京の本屋さん ~街に本屋があるということ~」書店を題材としたオリジナルドラマや、本好きな著名人のインタビュー。
また、組合に加盟している書店の紹介動画が70本以上公開されていて、各店舗の個性を知ることができ、「本屋に行きたい」と思わせてくれます。
マルサン書店仲見世店が今月いっぱいで閉店。残念ですが昨年のフロア縮小からその流れが始まっていたでは?とも思います。宝塚店?仲見世店へと続いた沼津駅南店舗の系譜が途絶えるのは昔を知るものとしては悲しい限りです。 pic.twitter.com/2HEG1CWV5L
— あさぎり (@Asagiri48) May 6, 2022