
クルマの屋根をソーラーパネルにしたらタダでずっと走れるEVができるんじゃ……が現実的じゃない理由
再生可能エネルギーの普及へ向け、ソーラーパネル(太陽電池)への期待は大きい。
最近は、ペロブスカイト太陽電池の話題が出て、日本政府は、2040年までに原子力発電20基分相当の普及を目指すと表明した。
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簡単にはいかない
たとえば屋根に装備したソーラーパネルでクルマが走れるようになるかというと、簡単ではない。
それでも事例はあって、現行プリウスPHEVやトヨタの電気自動車(EV)bZ4Xは、ソーラーパネルを屋根に装備した仕様を設けている。
プリウスPHEVは1日の発電で6.1km走行でき、bZ4Xの場合は、年間で1800km走行できる電力を発電できるとする。
たとえば1年365日で割ると、1日4.9km平均走れることになる。
そのために投じる注文装備価格は、どちらも28万円だ。
電気自動車の推進よりソーラーカー実用化の話ってあまり聞かんよね。
車の屋根一面をソーラーパネルにして大容量バッテリーに充電・駆動。
システムとしては可能かもしれないけど、難しいんだろうなぁ。
利権とか利権とか環境とか。あと利権ね。 pic.twitter.com/S2p1oThZaQ— syu-1@集まれ社会の落ちこぼれ。 (@vox6891) September 3, 2023
当然天候に左右される
一般に、ソーラーパネルの発電効率は約20%とされてきた。
これに対し、ペロブスカイト太陽電池は最高で33%以上ともいわれる。
時代とともに、素材の新たな研究などで性能が高まるとともに原価低減への動きも実用化へ向けた重要課題である。
ペロブスカイトに期待が集まる理由のひとつが、素材が柔らかく曲げやすいため、これまでのソーラーパネルのように硬い板状でなくても使え、さまざまな形状の表面に適用すると、いろいろな場所で発電できるようになることだ。
当然ながら、曲面で構成されるクルマの屋根や、車体側面などにも適応できる可能性はあるだろう。
とはいえ、発電効率を最大にできるのは、太陽の光が直接あたる部分の話であり、太陽光が斜めに当たるとか、影になる面は発電効率が落ち、また発電しない状況もあり得る。
さらに、晴天の日中であれば発電できるだろうが、曇り空になったら発電量は落ち、夜はどうするのか?
クルマの利用は、天気のよい日の日中だけに限らない。
また、梅雨の季節や秋の長雨、冬の降雪時期はどうするのか?
平成中期に比べるとソーラーカーは明確に下火になっていますね。
やはり太陽電池で得たエネルギーを蓄電するシステムの実用化が長引いてるのが大きいのと、仰る通り天候に左右される点が致命的です。電池切れで止まった時の予備動力を考えると、それを主導力にした方が効率的に車体設計できるので… https://t.co/2rdJaJuf3O
— 何でもええねん私財法 (@NIKAIDO_KIJI) June 3, 2024
ソーラーカーレースは効率に全振りしている
ソーラーカーレースに出場する車両が、畳のような表面の屋根にソーラーパネルを張り巡らせ、乗れるのはひとりといった姿で、自転車のような細いタイヤであるのは、ソーラーパネルが発電できる電力に制約があるからだ。
それを4~5人乗りの乗用車や、屋根が平らとはいえパネルトラックなどにソーラーパネルを用い、その電力のみで移動するのは容易でない。
それより、建物の屋根はもちろん、あらゆる建造物に適応できるペロブスカイト太陽電池が普及する折に、それで発電した電気をEVに充電して走らせるほうがより現実的ではないだろうか。
たとえば、ドイツのアウディの急速充電設備であるチャージングハブでは、設備の屋根に太陽光発電を用い、系統電力に加えて充電の電力を補っている。
EVに象徴される電気の時代は、一個の製品だけで課題を解決するのではなく、適材適所、周辺のインフラストラクチャー(社会基盤)を含めた設備の総合的な活用で利便性を高め、適正価格で快適な暮らしや移動ができる道を探るべきではないだろうか。
#WGC2024
レーススタート!!
GO GO TOKAI CHALLENGERS!!!#ソーラーカー #WGC #あきた #東海大学 pic.twitter.com/NsV8v3ioPo— 東海大学ソーラーカーチーム (@tokaisolarcar) August 10, 2024
ネットの声
「子供の頃には屋根をソーラーパネルで覆って、床下に鰻の寝床のように筒を何本も並べ、その筒の中で小さな風車のように風力発電すれば走行中も発電できる!と思ったもんですが、大人になったら分かる。1トン2トンある物を動かす力ってとんでもない力が必要。
勿論、こんな夢物語からどんどん高出力や低燃費なアイデアが生まれるので、そこに従事する方々は諦めずに頑張ってください。」「どの太陽電池でも入射角度のみならず、エアマス(大気層)赤道直下に対して、南北緯が大きくなると係数を掛け、そしてソーラーパネル自体の温度が25℃という、ありえない条件での性能値で、自動車のモード燃費どころではない理論最大値だ。さらには、ゴミ、チリ、陰があるだけでその面積分が発電出来ないのではなく、直並列されているセルでその部分がすべて機能しないと言う3%の障害(影)が、20%~50%もの発電量低下、最大発電適正電圧も大きく変わってしまう。
太陽電池だけで、EV車を走らせるなど、真冬の砂漠地帯(舗装路あり)などの晴天条件のみで使用するしかありえない。特にB-EVなどの軽く2t越える車両では、発進時の大電流を出すことすら不可能。
つまり、現実的に不可能だ。」「昔から発想はあるけど、実用化されないのには理由があるんだよね。この手の話でまず頭に浮かぶのは、バブルの頃のマツダセンティア。サンルーフに仕込んだ太陽光発電パネルで室内のファンを回して駐車時の暑さをやわらげたり、バッテリーに補充電できるというもの。
でも根本的に単位面積あたりの発電量と、走行に必要な電力の間に大きな乖離があって、そればかりはどうにもならない。」