
松本智津夫の娘・松本麗華に6年の取材を重ねたドキュメンタリー映画『それでも私は』6月公開、葛藤を記録
目次
お前はどう償うのか?
地下鉄サリン事件などで社会を震撼させたオウム真理教。
父が逮捕された1995年5月時点では12歳だった麗華には、以来、どこに行っても父の名、事件の記憶、そして「お前はどう償うのか?」という問いがつきまとってきた。
「虫も殺すな」と説いたはずの教団の信徒たちが起こした数々の凶行に衝撃を受け、父が裁判途中で言動に異常を来したために、父がそれら犯罪を命じたこともまだ受け入れ切れない。
父を死刑にする前に治療して事実を話させて欲しいと真相を求め続けたが、2018年7月、死刑執行は突然に行われた。
銀行口座も作れない
社会が父の死を望んだと感じ、極度の悲しみと絶望に陥った麗華は、それでも人並みの生活を営もうとするが、定職に就くことや銀行口座を作ることさえ拒まれる。
国は麗華に対して教団の「幹部認定」をいまだに取り消さず、裁判所に不当を訴えても棄却されてしまう。
映画では加害者の家族として現在も葛藤を抱えながら生きる麗華の姿が映し出される。
監督からメッセージも
劇場公開決定にあたり、監督からのメッセージも到着。
かつて松本麗華と対談をしたこともある現在91歳の田原総一朗から、オウム真理教による一連の事件当時は産まれてもいなかった24歳の春名風花まで、幅広い著名人によるコメントも公開された。
監督メッセージ
「加害者家族」は事件の一方の当事者だと知っていても、その苦しみや自分の人生を生きたいという切実な願いに、私たちはどれだけ目を向けてきただろうか? 世に最も憎まれた死刑囚の親族という究極の身の上にある主人公を追いながら、ずっと自らに問い続けていた。加害者への罰を求めることはたやすいが、ではその家族にどう向き合うべきなのか。映画を通じて当事者の存在を感じ、問いを共有し、考え続けていただけたらと願う。
―― 長塚洋